案内
後ろに立っていたのは、高身長な男性。
あごひげを生やして、細身。
結構、イケメンだ。
「も、もしかして、ペンキ・ストリートの社員さんですか?」
「ああ、飯食って戻って来たんだよ。 ちょっと案内してやろっか?」
「え、ちょっ…… まだ採用って決まってなくて」
あたふたしていると、その男の人は片方の口元を吊り上げて言った。
「ウチ、今年から新しいプロジェクトに関わることになって、人手不足なんだよ。 だから、犯罪歴でも無い限り、即採用だと思うぜ」
……何か、話がおかしい。
この人の発言が正しければ、私はあの事務っぽい女の人にからかわれていたのか?
それが分かると、ふつふつと怒りが沸いてきた。
(アイツめ……)
「おい、どーすんだよ?」
「えっ、あっ、はい?」
「だから、どうせ社長に案内しろって言われるから、この中、少し案内してやるよ」
その人は正面のシャッターを潜り、駐車場の奥へと向かった。
その後を追うと、白の四角いバンが1台と、更にその奥にコーンで区画されたスペースがある。
「この駐車場も丸ごとウチが借りてて、一部は物置になってる。 このバンもウチで使ってる。 まあ、今日は社長は電車で打ち合わせに行ってるから、使ってないんだけどな」
区画内には棚が組まれていて、かなりの量のペンキの缶が積まれている。
「白が一番多くて、後はその都度発注をかける感じかな。 ここら辺はローラーとかハケ」
男性がざっくりと物の配置を指差して教えてくれる。
「じゃ、上、戻るか」
3階の事務所に戻る途中、話を聞いた。
私のことは早速話題になっていたらしく、男の人は13時に私がここに来ることも把握していた。
しかも、立野絵里、という名前も名乗る前から既に知られていたようだ。
「求人出したはいいけど、ほんとに来るなんてみんな思ってなかったからな」
「……そうなんですか」
ちなみに、この男の人は中山輝之さん(30)で、さっきの女の人は山田花江さん(42)。
思った通り、事務員だった。
ものの15分で戻ってくると、パソコンに向かっていた花江さんに輝之さんが言った。
「花さん、せっかく新しい子入って来たんだから、変なことしないでもらえます?」
「あっ、輝君、メンゴメンゴ」
花江さんはパソコンをガン見していて、しらばっくれている。
机に向かうと、輝之さんがパソコンを立ち上げた。
「社長が戻って来る前に、プロジェクトの内容、教えてやるよ」




