面接
早速訪れたのは、横浜市内にある偽中華街駅から徒歩5分の所にある事務所。
「ここね……」
事務所ビル、と言っても都心の十数階あるような巨大なものじゃなくて、5階くらいまでしかなさそうな小さなビル。
これから面接に行くペンキ・ストリート有限会社は、その中の一室を借りているようだ。
(タウンワークには、3階、って書いてあったわね)
スマホを見やると、時刻は13時10分前で、そろそろ乗り込んでも良さそうだ。
私は、履歴書を小脇に抱えて、エレベーターのボタンを押した。
3階に到着すると、右手に事務所内へと続く扉。
両開きの扉は開け放たれていて、私は中をのぞき込んだ。
大きな机が部屋のセンターにあり、椅子とノートパソコンがいくつか並んでいる。
(誰もいない?)
「あっ、早かったわね」
「うひゃあ!?」
後ろから声をかけられ、私は驚いた。
女性はトイレから出てきたようで、ハンケチで手を拭っている。
「わっ、わたくしっ、ど、泥棒とかでは、無くてですねっ……」
「なーに言ってんのよ。 今日、面接に来たんでしょ?」
「は、はい!」
相手は40才くらい? のふくよかな女性だ。
事務方かしら?
職人気質のイカツイ男性じゃなくて、私は少し安心した。
女性が口を開く。
「社長、今日面接あるっていうのに、まだ現場から戻ってきてないのよ。 だからって訳じゃないけと……」
いきなり、女性の目つきが変わる。
「一次試験は私がアナタの品定めするわ」
「……えっ!」
……不意を突かれた。
まさか、この何気ない事務方っぽい女性が、最初に立ちはだかる試験管だとは。
「普通なら、そこの接待用の椅子に座って貰うのだけれど、まずは私を納得させてみなさい」
(……フッ)
良いわ、かかってきなさい。
私は、来い、とその場でファイティングポーズを取った。
「何なりと、聞いて下さい!」
「じゃあ、問うわ。 女性であるアナタが、何故故、この会社を選びここに来たの?」
志望動機、か。
建物が好きだからです! ……じゃ、小学生並みかしら?
あー、クソッ、ネットで文章探しとくんだった。
でも、そんな飾り立てたセリフじゃ、このふくよかな女性の心には響かないだろう。
「……まとまりました!」
「いいから、カモン」
「この命 捧げるのなら 建築業」
とりあえず、575でまとまったわね。
すると、女性は首を振った。
「ダメね。 それじゃ、何で塗装をやりたいのか説明になってない」
し、しくじったー!




