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プロローグ 表紙あり

 挿絵(By みてみん)

 田舎から上京してきた私こと、立野絵理(たてのえり)(18)は、愕然とした。

建築家になるべく上京してきたというのに、資格がなければダメ、と言われてしまったからだ。

その日、履歴書を持参してとある建築事務所を訪れると、こんなことを言われた。


「えーと、設計する方をやりたいと?」


「はいっ」


 面談の相手は40代半ばくらいの男性。

相手は困った顔をして、こう言った。


「現在募集をかけているのは事務員でありまして……」


「なぬっ!?」


「あ、あと、仮に設計をやるにしても、一級建築士の資格が必要になります」


「エエエーッ」


 私は、その場にひっくり返った。









 帰り道、本屋で建築士の資格の本を読むと、そっとじした。


「うん、無理っ」


 私は思い知った。

何が書いてあるのかチンプンカンプンで、この世の中、情熱だけでは何者にもなれないんだ、と。

必要なのは、1割の気持ちと、9割の頭の良さ。


(でも、諦めきれない……)


 小、中、高校と、卒業文集には同じことを書いた。

いつか、建物に携わる仕事がしたい。

 私の父親は現場監督をしていた。

子供の頃の遊び場と言えば工事現場で、勝手に忍び込んでは、現場の職人たちに良く遊んでもらっていた。

職人たちが、私を建物好きに育んだんだ。

私は思った。

職人になるのも、悪くないかも。

とはいえ、とび職だったり、鉄骨を運ぶ仕事は務まりそうもない。


(どうするのか決めないと……)


 今、知り合いの親戚の家に住まわせてもらっている状況だけど、いつまでも居続ける訳にはいかない。

建築士が無理なら、諦めて帰るか、他の仕事をやるか、決めなければいけない。


「……そうだ」








 あることを思い立って、私は駅前にやって来た。

仕事を斡旋する無料の冊子を手に取ると、片っ端から目を通す。

そして、一つの仕事に目を付けた。

外壁を塗装するペンキ職人の仕事だ。

ペンキ職人だって、建物に携わる仕事には違いない。

給料は月々20万、正社員で、休みは年間100日。

勤務地は横浜だ。

男女不問とのことで、早速連絡を取ることにした。

 

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