告白
始まりの話です。
風がさあっとなびく。春の風。
セイカはそっと青い空を見上げた。
どこまでもどこまでも優しい、空の色。
「良かったね、スラスト。こんな良い日に皆に送ってもらえるなんて……」
そうセイカが呟くと、まるでそれに答えるかのように
風がセイカの長い卵色の髪を揺らした。
今日はこの流星の国の騎士団長で
セイカの恋人スラストの葬式だった。
密命を受け諸国を旅していたスラストと、親を早くに無くし
孤児として孤独な生活を送っていたセイカ。
二人はその出会いに運命を感じ、年の差の壁を越えて
恋人となった。
しかし、スラストはセイカをかばい、あっけなく命を落とした。セイカは涙が枯れても泣き続けた。
そして、セイカはせめてスラストの家族にスラストの遺品を渡そうと一人で旅をして、この流星の国にたどりたいたのだった。
「スラスト……なんで、なんで死ぬんだよ」
嗚咽まじりの少年の言葉にセイカは振り向いた。
確かあの子は、ラスティン……。
スラストの剣を城に届けた時に、一番最初に迎えてくれた少年だ。
その時は、ラスティンはたしかポーカーフェイスで
特に悲しんでいる様子はなかった。
「スラスト……お前がいないと生きてけない……」
ラスティンとスラストの間に何かあったかは分からないが
ラスティンの後から後から流れる涙にセイカは、何か声をかけてあげたかった。
「ラスティン、もう泣き止みなさい。こんな所スラストに見られたら笑われるわよ!」
セイカが声をかける前に、珍しいピンクの髪の女の子がラスティンの背中を優しくなでた。
「うるせぇミラ!スラストはもういないから、良いんだよ!」
ラスティンがミラの手を軽くのけた。
「バカね。死んでも天国から見てるわよ。ラスティン〜
元気かなぁって」
セイカは苦笑した。それはこの数ヶ月、痛いほど思い知らされた事。
死んだら……もう会えない。
慰めてくれる人がいるならいいか。セイカはくるりと場所を移動する事にした。
その時ラスティンは叫んだ。
「バカっ。死んだら終わりなんだよ!
もう会えないし。どこにも
どこにも……スラストは存在しないんだ!」
そうだよ……。
セイカはうなづいた。ラスティンと自分は同じ
感覚を持っている。
セイカは立ち尽くした。
ラスティンはますます大きな声で泣き叫んだ。
この子を助けてあげたい。じゃないと、心に穴が空いてしまう。もう空いてるかもしれないけど、別の何かで埋めてあげたい。
そう思った瞬間、セイカは歩き出していた。
「私が……した」
ラスティンとミラは突然現れたセイカに驚いたのか
表情を固めていた。
「もう一回言えよ」
ラスティンが絞り出すように、聞き返した。
セイカはラスティンの目を真っ直ぐ見つめて言った。
「スラストは私が殺したの」
長い道のりの新たな始まりだった。