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それから数日間、俺はナルに結婚の話を切り出そうか


どうしようか迷っていた。


今井先生と矢野は結婚の話を出してナルの反応を伺ってみれば?


・・・なんて、軽〜く言っていたけど・・・


俺的には結婚話を持ち出してナルが無反応だったりなんかしたら


立ち直れるかどうか・・・。




まぁ・・・でも、結婚の“け”の字くらい出してみるのも


いいかもしれない。






「ただいまー。」




「おかえりなさーい。」


夜8時過ぎ、いつものように帰宅した俺をナルはいつものように


笑顔で出迎えてくれた。


そして、いつものように温かいごはんを用意してくれている。




けど・・・一つだけ違う事があった。


それは、大きなバッグが寝室の隅に置かれている事。


その大きなバッグは2週間前、日高からナルを遠ざける為に


俺の部屋に移って来る時にとりあえずの荷物を持って来た時のものだ。




なんでまたこのバッグがここに出してあるんだ?


ここに来てからずっとクローゼットに仕舞ってあったのに。






スーツから部屋着に着替え、キッチンに行くとナルは味噌汁を温めなおしていた。




「なぁ、ナル・・・なんで、またあのバッグ出してんだ?」




「え?」




「ナルがここに移ってくる時に持って来たヤツ。」




「あー、あれですかー。実は後で先輩に話そうと思ってたんです。」




「ん?何?」




「たいした事じゃないんですけど、


 そろそろ自分のアパートに帰ろうと思って・・・」




「えっ!?」




おいっ。


十分、たいした事だろっ。




「康成さんも北海道に行った事ですし、さすがにもう私のアパートには


 来ないと思うので。」




「ちょ・・・ナル・・・。」




「それにこれ以上、先輩に迷惑かけられませんからー。」


ナルはそう言いながら、笑顔で俺の目の前におかずを並べていった。




てか、迷惑って・・・。




「明日、お昼前にアパートに帰ります。」




「いや・・・ナル・・・あの・・・・」




「あ、先輩、晩御飯ならちゃんと冷凍庫に入れて解凍だけすれば


 食べられるようにしておきますから心配しないで下さいね?」




「あ・・・と、その・・・」




「そうだっ、スープも作っておきましょうか?」




「・・・いや、だから・・・その・・・」




「先輩、早く食べないと冷めちゃいますよ?」




「あ、うん・・・て、そんな事より・・・ナル。」




「はい?」




「あのさ・・・」




「あ・・・っ!?」




お・・・ようやく、俺の言いたい事に気付いてくれたか?




「お箸出してなかったですね。」




「・・・。」




「はい、先輩。」


ナルはにっこり笑って俺に箸を差し出した。




「あ、ありがとう・・・。」


俺は箸を受け取り、小さくため息をついた。




「・・・ナル、ホントに帰るつもりなのか?」




「はい。」


ナルは俺の目の前に座りながら即答した。




「・・・俺がずっとここにいて欲しいって言っても?」




「え・・・。」




「俺は、ナルにずっと居て欲しい。・・・ナルは・・・嫌?」




「そ、そんな事ないですっ。」




「じゃ、このままここに居て?」




「で、でも・・・迷惑じゃないですか?」




「なんで?」




「だって私まだ仕事見つけてないですし、ただの居候ですよ?」




「そんな事ないだろ?」


だって毎日朝と晩にちゃんとご飯を用意してくれるし、


洗濯だって掃除だって結局ナルに任せっきりになっている。


俺がしなくてもいいって言ってもきっちりやっちゃってるもんなぁ・・・。


これでナルが居候と言うなら世の中の主婦達全員居候だろ。




「迷惑だったら、ずっと居て欲しいなんて言わないよ。」




「は、はい・・・。」




「週末、ナルのアパートから本格的に荷物を移そう。


 一遍には出来なくても、今月いっぱいでアパートを引き払えるだろう?」




「はい。」




俺はナルが少し嬉しそうに返事をしたのを見て、正直ホッとした。




焦る事はないのかもしれない・・・。


ここで焦って結婚話を口にしなくてもナルも俺と一緒に居たいと思ってくれているなら・・・。

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