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「ただいま。」


週明け、月曜日。


俺はいつもより早めに仕事を切り上げた。


少しでも早く帰ってナルの顔が見たかったからだ。


だけどドアを開けた瞬間、笑顔で出迎えてくれると


思っていたナルの姿はなく、シン・・・と静まり返った


暗い室内が視界に入ってきた。




・・・あれ?




「ナル・・・?」


リビングのドアを開けてナルの名前を呼んでも返事はなく、


おまけに部屋の中は真っ暗だ。




もしかして、もう寝たとか?


いやいや、まだ8時前だぞ?




それでも一応、具合でも悪くてベッドの中にいるのかと寝室を覗いてみた。




「・・・あれ?」


寝室にもいない。




・・・という事は・・・風呂か?


だけど音も聞こえないし、相変わらずどこも真っ暗なままだ。


まだ帰っていないのかな?


それとも、もしかして・・・いつもの癖でアパートに帰ってるとか?




だとすると・・・またあの男が来たらマズいな・・・。




俺は聊か不安になり、携帯を開いた。


ナルの携帯を鳴らしてみるけれど、なかなか出ない。




まさか・・・


本当にあの男が来てて、出るに出れないとか・・・?




そう思っていると、留守番電話に切り替わる寸前、


電話越しにナルの声が聞こえた。


『もしもし、先輩?』




「うん、俺。」




『ごめんなさい、なかなか出られなくて。』




「いや、それはいいんだけど・・・もしかして、まだ仕事してた?」


受話器の向こうから何やら騒がしい声がして、


それはすぐにまだ会社にいるんだとわかった。




『あ、はい。』




「あー、ごめん。それなら、いいんだ。」




『何か急ぎの用でした?』




「ん・・・じゃなくて、まだ帰ってなかったから、


 まさかアパートに帰っててまた元彼に捕まってるのかと思って。」




『あ・・・ごめんさない、心配かけて・・・』




「いや、そんな気にしなくていいよ。」




ナル・・・忙しそうだなぁ。


なんかトラブルでもあったのかな?




いつもよりやや早口でしゃべっているナルの様子で


それは感じ取ることができた。




『あ、あの・・・それと先輩、私、今日はまだ帰れそうにないので


 晩御飯は先に済ませちゃってください。』




「そっか・・・わかった。」






電話を切った後、俺はふとナルは晩メシはどうするのかと


聞いていない事に気がついた。




もう一回電話するのもなんだしなぁ・・・


何時くらいになりそうだとも言ってなかったし、


同僚とついでに済ませて帰るかもしれないしなぁ・・・。




・・・とりあえず野菜スープでも作るか。


スープなら遅くなってあまり食べる気がしなくても食べられるだろう。






それから俺は先に晩メシを済ませ、風呂に入った。


風呂から上がって時計を見ると、時間はすでに10時を回っていた。




ナル遅いな・・・。


会社まで迎えに行こうかどうしようか・・・、


今から行ったとしてももう会社を出ていて行き違いになるかもしれない。


かといって、電話して聞くのもな・・・。


まだ仕事中って事も有り得るし・・・。




さて、どーしたもんかと俺が考えていると玄関のドアが開く音がした。


「ただいまでーす。」




あ・・・帰ってきた。




「おかえり・・・て、あれ?」


「よぅ。」


ナルの隣にはなぜか矢野もいた。




・・・?




「あ、先輩、遅くなったから矢野さんがわざわざ送ってくださったんですよ。


 ・・・それでー、せっかくなんで少し寄って行ってもらおうかと思って。」




あ、なるほど。




「そっか、まぁ上がれよ。」


「お邪魔しまっす。」


「ナルと矢野はもうメシ食ったの?」


「いや、まだ。」


「まだですー。」


「じゃあ、なんか作るから矢野も食って行けよ。


 その後、送っていくから。」




こんな時間まで何も食べないでやってたのか。




「ん?あぁ、そうだな。じゃあお言葉に甘えて。」




「ナルは先に着替えて来いよ。その間に作るから。」




「え?はい。」






「随分忙しかったみたいだけど、なんかあったのか?」


ナルが着替えを済ませ、リビングに戻ってきたところで俺は二人に聞いた。




「なんかあったどころの騒ぎじゃねぇよー。」


矢野が疲れた様子で言った。




「あ、あのー・・・それがですねぇ・・・」


ナルはなんだか何か言いづらそうに口を開いた。




「会社・・・クビになっちゃいました・・・。」




・・・え?

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