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「アイツ・・・どうしても俺と結婚したいからって、


 嘘ついてたんだ・・・。」




「・・・。」




「俺は、愛美と結婚するつもりだったのに・・・。」




「・・・でも・・・、佐伯さんとも付き合っていたのは、


 事実・・・でしょ?」




二股かけてた事には変わりはない。




「それは・・・っ!向こうから誘ってきたから・・・。」




「だからって・・・」




「愛美は知らないかもしれないけど・・・アイツ・・・、


 うちの社長の娘なんだ。」




「えっ!?・・・で、でも・・・苗字が・・・」




「社長は数年前に離婚して千鶴は奥さんの方に引き取られたから、


 奥さんの旧姓を名乗ってるらしい。」




「・・・。」




「俺は今の会社に骨を埋めるつもりだったし、


 一回だけのつもりだった・・・だけど・・・」




・・・何、それ・・・。




「・・・つまり・・・脅されてたって事?」




「あぁ・・・。」




だとしても・・・




「アイツとは、婚約を解消して別れたよ。」




「え・・・。」




「子供ができたからって言われて仕方なく結婚するつもりでいたけど、


 妊娠してないってわかった今・・・もう、アイツと一緒にいたいとは思わない。」




「そんな・・・」




「俺には愛美だけだ。」




今さらそんな事言われても・・・




「俺とやり直してくれ。」




「・・・無理よ。」




「・・・なぜ?」




なぜって・・・それは・・・




「俺がいるから。」


私は後ろから聞こえた声にハッとして振り返った。




「先輩っ!?」




・・・どうして・・・?




先輩は康成さんの前に来ると私を背中に隠し、


「今、ナルと付き合ってるのは俺だから。」


と、言い放った。




「・・・。」


康成さんは押し黙り、そしてしばらくの間、


先輩から視線を外さないでいた。


先輩の方も目を逸らそうとしない。




ピンと張り詰めた空気・・・どれくらいその緊迫した状態が


続いたかはわからないけれど康成さんは私に視線を移した後、


先輩と私の横を通り過ぎて行った。






「ナル、大丈夫だった?」


康成さんの姿が見えなくなった後、先輩が心配そうな顔をして


私の顔を覗き込んだ。




「は、はい。」




「何も・・・されてないよな?」




「だ、大丈夫です・・・て、先輩・・・なんでここにいるんですか?」




出張に行ってるんじゃ・・・。




「あー、仕事が予定より一日早く終わったから、


 驚かせようと思って連絡しないで迎えに来たんだ。」




「そうだったんですか。」




「けど、逆にこっちが驚かされたな。


 ・・・まさか、元彼がまだナルにちょっかい出してたなんて。」




「・・・。」




「・・・とにかく・・・無事でよかった・・・。」




「先輩、ありがとうございました。」




「彼氏なんだから当たり前だろ?」


先輩はプッと吹き出して私の頭を優しく撫でてくれた。






「しばらくは・・・俺のマンションにいた方がいいな。」


先輩の車でマンションに向かう途中、


少しの間、何かを考えているようだった先輩が


不意に口を開いた。




「どうしてですか?」




「あの様子じゃ、またナルの部屋に押しかけてくるぞ?」




「・・・。」




「・・・かと言って、俺がナルの部屋にしばらくいるとしても


 帰りが遅いときもあるし。」




「で、でも・・・先輩・・・迷惑じゃないですか?」




「もうっ!何言ってんだよっ。」




「だ、だって・・・」




「自分の彼女を他の男から守るのに何が迷惑なんだよ?


 それとも、ナルは元彼のトコに戻りたいのか?」




「そんなワケないじゃないですかっ。」




「んじゃ、おとなしく俺の言う事を聞きなさい。」




「は、はい・・・。」




結局、私は先輩の言うとおりしばらく先輩のマンションで


暮らすことになった。






そして、週が明けた月曜日。


朝一で私は部長に呼び出しを喰らった。

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