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翌日、先輩は熱も下がり、朝食も普通に食べた。


だけど本当なら今日一日、まだ寝ていた方がいい気がするけど、


二日も会社を休んだし、もう大丈夫だからと


私と一緒に部屋を出て、車で私を会社まで送ってくれた。




私の会社と先輩の会社は近いけれど、


こうして一緒に出勤するのは初めてだ。






会社の前で先輩の車から降り、手を振って見送っていると


運悪く、智子に見つかってしまった。


「おはよう、愛美!」


なんだかにやにやしている・・・。


きっと、私が車から降りたあたりからずっと見ていたのだろう・・・。




「お、おはよ。」


「朝から仲良くご出勤?」


「今日はたまたまよ。」


「ふーん・・・て事は昨日、彼の部屋に泊まったんだ?」


「ん・・・まぁ・・・風邪で寝込んでたから・・・。」


「あ・・・、愛美が月曜日休んでたのって・・・


 実は彼に風邪うつされたの?」


「え・・・っ!?違うよっ。」




別々で風邪ひきマシタ・・・。




「別に隠すコトないのにー。」


「いや・・・ホントに・・・違うから。」


「ふーん・・・まぁ、どっちでもいいけどー。」


智子はそう言うとさっさと更衣室へと入っていった。




まぁ・・・相手は智子だし、別に全力で否定することもないけれど。




智子の後に続いて更衣室に入ると佐伯さんと鉢合わせになった。


朝から嫌な相手に会っちゃったな・・・と思いつつ、


私が「おはようございます。」と言うと、


佐伯さんは無言で私を睨みつけ、更衣室を出て行った。




「何よ、あれ・・・。」


少し呆気に取られている私のかわりに口を開いたのは智子だった。




佐伯さんは康成さんと婚約を発表してから休憩室や更衣室で偶然会っても、


まるで勝ち誇ったような顔で私を見ていた。


だけど、私はもう康成さんの事は好きじゃなくなっていたし、


なにより、先輩と一緒にいられる事の方が幸せだから別に気にも留めていなかった。




でも・・・なんだか今日の彼女は違っていた。




康成さんとケンカでもしたのかな?


・・・けど、それなら私は関係ないのに。




私は訳がわからないままだったけれど、特に気にする必要もないと思い、


この一件は頭から離れていた。






―――そして週末、金曜日。


いつもなら仕事が終わってから先輩と一緒に買い物をして


マンションに帰る。


だけど先週は“休日出勤”になったと言われ、


結局、自分の部屋に帰った。




今週は・・・どうなるのかな・・・?




先輩はもう“資料集め”は手伝わない・・・とは言っていたけれど、


やっぱり今井先生のお嬢さんだし・・・手伝うことになる気がしていた。






定時を少し過ぎ、更衣室で私服に着替え終わると携帯が鳴った。


先輩からだ。




「もしもし。」




『もしもし、今どこ?』




「会社です。」




『まだ仕事してた?』




「いえ、ちょうど着替え終わって出るトコでした。」




『そっか、ちょうどよかった。俺も今、仕事終わったトコだから、


 ナルの会社に迎えに行くよ。』




「はい、わかりました。」


先輩が迎えに来てくれる・・・と言うことは


土日は一緒に過ごせるって事なのかな?






―――10分後、先輩が車で会社の前まで来てくれた。




「先輩、お仕事終わるの早かったんですね?」




「うん、先週ナルとゆっくりできなかった分、早く終わらせて


 早く会いたかったから。」




「あ、でも・・・あの・・・先輩、明日は・・・大丈夫なんですか?」




「明日?」




「・・・澄子さんの資料集め・・・とか。」




「あー、それなら大丈夫だよ。」


先輩は心配ないと言った感じで小さく笑った。




「確かに澄子ちゃんからまた土日に資料集め手伝って欲しいって言われたけどね。」




「あ・・・じゃ、それならー・・・」




「けど、先週デートしてたおかげでほとんど資料が集まってないのを見て、


 先生が怒っちゃってね。」




「先輩をですか?」




「いや、澄子ちゃんを。・・・ちゃんと真面目に資料集めしてないから、


 何の為に休みの日にまで俺を無理に付き合わせたのか・・・て。


 だからもう手伝わなくていいって先生からも言われたし。」




「そうですか。」




「そんな事より、今日は久しぶりにナルのコロッケ食べたいなー?」


子供がお母さんに夕食のメニューをおねだりするみたいに


先輩は私の顔を覗き込んだ。


“自称・三流シェフ”・・・だけど先輩は私が作るものをいつも


「おいしいよ。」って笑って食べてくれる。




「じゃあ、頑張って作ります。」


私がにっこり笑って返事をすると先輩は嬉しそうな顔をして


いつも一緒に行くスーパーに向かってハンドルを切った。






買い物を済ませて先輩のマンションに戻ると、


先輩の部屋の前に人影が見えた。




女の人・・・あれは・・・




澄子さん・・・?

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