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機甲戦騎キャバリアー  作者: クロイモリ
第六章:宇宙滅亡編
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16-砲火を駆ける

 正面のドラッケンを切って捨て、イスカは質量兵器を正面にとって航行を開始した。後ろからは銃撃、前からは砲撃。だがこのポジションが一番いい。ほどなくしてイスカは質量兵器に張り付き、正面からの攻撃をやり過ごすことに成功した。


(ほんの一瞬だがな、息を吐く時間くらいは欲しいもんだ。それにしても……)


 巨大。地球にこんなものが投下されれば、どれほどの被害が出るかは想像も出来ない。少なくとも着弾地点から数キロ圏内は衝撃波によって蹂躙され、熱と放射線が生き残ったものたちを苛む。地球上に存在してはいけない兵器だ。

 必ず止める。決意を新たにし、イスカは質量兵器の表面を駆けた。直径1Kmほどの『地面』を。直後、彼がいた場所をいくつものミサイルが襲った。親衛隊のドラッケンが装備していたミサイルランチャーだ。


(戦艦は左右に二隻ずつ。死角を作りつつ一隻ずつ潰す。そう出来なきゃ死ぬだけだ)


 追い立てるドラッケン、直衛機、対空砲火。このすべてをかわし一撃で戦艦を落とすためにはどうすればいいか。イスカはしばし考え、腰にマウントされたビームライフルを抜いた。奪われたものを再建したのだ。

 後方に意識を集中。ドラッケンがミサイルを発射する。着弾まで五、四、三。イスカは力強く地面を蹴り跳躍。ミサイルは質量兵器の表面に着弾、爆発。人工筋肉の瞬発力が機体を跳ね上げる。死角から飛び出したイスカを、無数の砲門と銃口が狙った。


 足元から瓦礫が飛んでくる。ミサイルが破壊した質量兵器の残骸だ。イスカはそれを蹴り軌道を変更、砲火を避ける。ビームライフルの銃口を火星軍戦艦の艦橋に向ける。出力レベルはハーフ。トリガーを引く。

 光線が戦艦の艦橋を貫き、どこまでも伸びて行く。爆発はしなかったが、中枢を失った戦艦は制御不能に陥り、質量兵器に衝突。ひしゃげた金属塊になりようやく止まった。


「海東イスカ、一隻落としました。残り三隻を一人で押さえるのは無理でしょ」

『一隻仕留めりゃ勲章ものだ。もう少しばかり待てば、味方もいくらかそちらに向けられるはずだ。それまでの間、出来れば持ちこたえてくれ』


 気遣っているのがまるわかりだった。

 声色が切迫したものだったから。


(なら、気合入れて落としてやった方がいいってことだな!)


 我ながら単純だな、とイスカは思う。

 期待されること応えたくなるのだ。


 左側にいる戦艦が動く様子はない。残っているのは一隻、そして随伴のバトルウェアが大勢。接近すると対空砲火が回避出来なくなるが、距離を取れば大威力の砲撃に晒される。ベストな戦法を瞬時に弾き出し、イスカは前に出た。


『バカな、弾幕が怖くないのか!?』


 怖いに決まっているが、下がれば前線に展開している連中と挟まれてしまう。そちらの方が面倒だ、と判断したまで。イスカはスラスターを全開にして進んで行く、前へと。

 横方向にスライドしながら砲弾をばら撒く。高速徹甲弾の雨が迫り来るゲゼルシャフトの群れを押し留め、戦艦の回避運動を誘発する。弾幕を縫ってドラッケンたちも近付いてくるが、そちらはアサルトとガトリングが対処した。それをも掻い潜って近付いてきた輩には、脚部ロケットランチャーを見舞った。


(ビームに警戒が向いている。少しでも右腕を動かせばそちらに視線が集まる……分かりやすい警戒をしてくれて、本当にありがとう)


 まるで振ると人を自由に操れる御旗を手にした気分だ。とはいえ、それは自分に攻撃が集中するということでもある。攻撃を避けながらイスカは反撃の手を考えた。相手の警戒心を利用し、そこを突く。それ以外に生きる道はない。


(味方が到着するまでの間、結構な時間がかかる。ってことは……)


 その間はどれだけ撃っても、誤爆の心配はないということだ。


 リボルビング機構を作動、弾倉を散弾に合わせ発射。着弾直前で弾頭は炸裂し、多数の散弾を撒き散らした。とはいえ、それらはフィールドに絡め取られ、電磁装甲に弾き飛ばされ、十分な効力を発揮しない。予想通りだったが、敵はイスカに強力な武器がなくなったと判断したようだ。一気に突っ込んで来る。

 後方からの支援射撃がイスカに殺到し、二機のドラッケンが剣を振りかざし突進してくる。イスカは再度リボルビング機構を作動し、発射。散弾の先例を見ていた敵は最低限の回避動作でそれを避けようとした。イスカの狙い通り。


「かかったな、阿呆が!」


 弾頭が炸裂、だがそこからが違っていた。発射されたのは巨大なネットだった。炭素繊維製のネットが機体に絡み付き、動きを阻害する。イスカは動きを止めた機体に蹴りを入れ、押し返す。友軍の射線上へと。

 数多の銃火と砲火に晒され、ドラッケンはあっという間に蜂の巣へ変わった。自爆装置が作動、周囲に破片と煙を撒き散らす。イスカと火星軍とを隔てる煙幕が瞬間的に形成された。敵は煙幕越しのビームを警戒し、足踏みする。

 イスカはその隙を突き、一直線に戦艦へと向かった。対空砲火がイスカを襲うが、流星の如き速度で迫る彼を止めることは出来なかった。イスカは二刀を抜き、艦橋を輪切りにした。すれ違いざまにダメ押しのロケット弾を撃ち込み、完全に破壊。たった一機のバトルウェアにより二隻の戦艦が瞬く間に破壊された。


「っし、ミッション・コンプリート! さすがにこれ以上は勘弁してくれよ!」

『ああ、残りの二隻は前線を突破した機動兵器部隊が対処する。質量兵器から離れろよ、イスカ。後はこちらの砲撃で質量兵器を削り倒す!』


 了解、と短く返信し通信を切る。追ってきた機体を一基、また一機と切り裂き、イスカは帰還する。弾も尽きていたし、いい加減体力も限界だった。


 それでも……守れたのだ。

 少しだけ、充足感があった。

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