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機甲戦騎キャバリアー  作者: クロイモリ
第五章:欧州塵滅編
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15-無敵要塞テュルフィング

「さて……見てもらえばわかると思うが、我々の攻略目標『テュルフィング』は難攻不落の要塞だ。冗談みたいな見た目をしているが、本当のことだ」


 ランドキャリアー、ブリーフィングルーム。投影された火星軍の要塞『テュルフィング』を見せられたが、確かに冗談のようにしか思えない。


「いったいどんな合理的理由があってあんな形をしているんだ……」

「さてな。あそこまで強大な防御力を持っていれば、形などさしたる問題ではないのかもしれん。例え折れそうな突起が付いていたとしても、な」


 それにしてももっとマシな形があったのではないか、とイスカは思う。古いファンタジーアニメに出てくるような鍔広の剣、そうとしか見えない。あんなが意見をしておきながら防空能力は非常に高く、近付くものは砲弾であろうがミサイルであろうが、戦闘機であろうが残らず叩き落されるという。油断ならない相手だ。


「問題点はまだある。『テュルフィング』には高出力な電子信号を発信することが出来る。バカデカいボディから作り出されるエネルギーによって、力技でジャミングを突破してくるわけだ。奴の勢力圏では、火星軍の誘導兵器が力を取り戻す。つまりは……」

「我々には不可能なレベルで、長距離射撃を行ってくる可能性がある」

「そういうことだ。信号半径は10Km以内、そこから先には届かない。だから侵略兵器として『テュルフィング』が用いられることはなかった。だが、攻略を行うにあたりあれがどれだけ厄介なものかは分かってもらえたと思う」


 誘導兵器の恐ろしさというものをイスカは分かっていなかったが、超長距離から狙撃されるのは面倒だな、と思った。


「では、どうすればよろしいのでしょうか? ジャミングが効かない以上、高空兵器の類は使い物になりません。すぐに撃墜されてしまうでしょうからね。しかし、航空支援なしにあの要塞を攻めることは……」


 ソルカが弱音とも聞こえる言葉を吐いた。


「そう、悲観的になるな。『テュルフィング』の防空能力は確かに優れているし、誘導兵器も恐ろしい。だが無力化する手がないわけではない」


 石動は別の画像を投影した。パリ郊外の地図だ。


「『テュルフィング』は生み出した信号を四基のブースターで増幅し、周囲に送っている。そして、ブースターの位置は既に掴んでいる。そうすれば、どうするか? 分かるだろう、お前たち」

「なるほど。ブースターを破壊すれば信号を送信することは出来なくなる。『テュルフィング』は巨大なミサイル庫になり果て、その威力は半減すると!」


 御堂が答えると、石動は満足そうに頷いた。


「まず、前衛部隊で敵の注意を引きつける。その間に工兵を中心とした潜入工作部隊がブースター基地へと侵入、そのうち一基を破壊する。計算ではブースターを一基破壊すれば防衛網に大きな穴が開く。そこに航空隊が入り込み……」

「地上部隊の支援、及び『テュルフィング』への攻撃を行うと」


 御堂は自分で言ったことを確かめるように頷き、石動は御堂が自分の意を完全に汲んでくれていることに満足したように頷いた。ようするに、やることはいつもと同じなのだ。


「派手に暴れて敵の目を引きつけて、その間に仲間がどうにかするのを待つと」

「油断はするなよ。今回の任務の危険度はこれまでの比ではないのだからな」

「分かってますよ。相手を引きつける、やるのはそれだけだ……でも別に、あいつらを全部倒してしまっても構わないわけでしょう?」


 恐ろしくないはずはない。だがそれでも勇気が湧いてくる。アスタルは特に肯定も否定もしなかったが、ふっとさも面白そうに笑った。


「作戦開始は明0400。作戦コードは『ナポレオン』。彼は勝利を手に凱旋を果たすことは出来なかったが、我々は違う。火星軍からパリの都を取り戻し、勝利を掴む!」


 いまいち迫力の足りない演説だったが、仲間たちはそれに応えた。細かな隊列などがその後決められ、ブリーフィングは終了した。


「やれやれ、毎度のことながら大変な役目を押し付けられるな……」


 会議室から出ると、御堂がボヤいた。


「大丈夫、命の危機に晒されるなんて初めてじゃないだろう?」

「俺はお前ほど肝が据わってないの。誘導兵器……どんなもんなんだろうな? どこまでも追い掛けて来るってのはどんな気分なんだろうか……」

「それも問題ない。どこまでも追い掛けられるなんて慣れっこだろ?」

「俺にはお前のポジティブさが羨ましいぜ……」


 御堂は呆れたような視線を向けて来た。違う、と言いたかった。慣れているのではない、諦めているだけだ。どんな弱音を吐いても、敵はこちらに向かってくる。ならば向かって来る敵をすべて殺す。それだけが生き残る道だ。


「よう、ガキども」


 通路の真ん中で喋っていると、後ろからドスの利いた声を掛けられた。慌てて振り返るとそこにはグランツ軍曹がいた。邪魔になったのだろうか、と二人は萎縮した。


「あっ……すいません、道の真ん中でこんな。邪魔でしたよね」

「んなことはねえよ。今回俺は策戦から外れることになったからな、挨拶だ」


 ああ、そういえば。イスカはブリーフィングの内容を思い出した。キャバリアー隊と他のバトルウェア、戦車隊から前衛を務めるものたちが選抜されたのだが、その中にグランツの名前はなかった。工兵班に同行することになったからだ。

 こういう破壊工作任務においては、AAの持つ隠密性が役に立つ。特にマルテは軽量、高速。かつ探知に引っかかりにくいという特徴を持つ。


「島田の分までしっかり頼んだぜ。それが生き残ったものの務めってもんだ」


 グランツはイスカの胸を叩き、格納庫へと向かって行った。

 イスカは叩かれた胸をさすり、グランツが放った言葉を反芻した。


 ほんの数時間前だというのに――彼女の死を何とも思っていない自分がいた。

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