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機甲戦騎キャバリアー  作者: クロイモリ
第三章:熱砂の地獄編
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11-爆発

 戦闘が終わり、オリバセウスへと戻ったイスカは避難民たちを探そうとした。だが、アスタルに制止された。


「まだ警戒が解かれていない。第二波があるかもしれん、待機しておけ」

「でも、ここにまだあの人たちがいるかもしれないんですよ! 火星の奴にそそのかされて、逃げ出してしまった人たちが……! このままじゃあ……」

「彼らは彼らの意志でここから逃げ出した。我々は警告していたぞ、軍の敷地に無断で立ち入った場合は射殺もあり得る、と」

「ですけど!」

「私としても、お前の独断行動を許可することは出来んぞ」


 言い合うイスカとアスタルの間に、いつの間にか格納庫に来ていた石動が割って入った。目の下に深いクマが刻まれた顔は幽鬼のようだ。


「自覚を持て、海東。いまのお前は軍属であり、キャバリアーのパイロットだ。お前のすべきことは、敵を倒すことだろう」

「軍人なら民間人を守るために行動すべきでしょう!」

「それをする人間はお前ではない、ということだ。現在憲兵が基地内の捜索を行っている。脱走した火星兵士や潜伏した解放同盟の兵士たちを探し出すためにな。彼らも丸腰の民間人を撃つほど非道ではないだろう」


 だが、その可能性がないわけではない。銃殺するとまで言われているイスカにとってみれば、とても信じられたものではなかった。


「なあ、海東。信じてはくれないだろうか? 私たちだって望んでこんなことをしているわけじゃあない。どうにか丸く、この事態を収められないかと思っているんだ。逃げ出した彼らのことは、責任を持って探し出すから……」

「火星人に組した裏切り者だ。どうなろうと、その責任は奴らのものだ」


 必死に執り成す石動の努力を踏みにじるかのように、アスタルは吐き捨てた。石動は彼を苦々し気な表情で睨んだが、アスタルは意に介さず機体へ向かった。


「……とにかくまだ終わったわけじゃない。次いつ、お前を殺しに敵がやって来るとも限らんのだ。それまでの間、辛抱してくれ。お願いだ」


 石動は哀願した。そこまで言われてしまっては、イスカには立つ瀬がない。いい加減、やり合っていると周りの視線が痛くもあった。


「……分かりました、皆さんにお任せします。それでいいんでしょう?」

「基地内の出来事はこの基地に駐留するものたちの管轄だ。元より、我々に口を出す権利はないさ。我々に出来ることと言えば、ただ祈ることくらいだ……」


 石動はため息をついて会話を打ち切り、休憩室の方へ向かった。中で休んでいるロナと、今後の件で何か話があるのだろう。ため息を吐きたいのはこっちの方だ、とイスカは思った。ワケが分からないうちに事態が進展し、誰かが消える。うんざりだった。


「お疲れさん、イスカ。毎度のことながら、襲撃があるとホントに急だな」

「水でも飲んで落ち着いてください、兄さん。いまのあなたは冷静さを欠いています」


 汗を拭きながら御堂が近付いてきた。その隣にはボトルを持った夕菜。心がささくれていたイスカはボトルを乱暴に受け取り、喉を鳴らしながら飲んだ。

 そんな様子を見て、夕菜と御堂は心配そうな顔を見合わせた。


「別に問題ないよ、夕菜、御堂さん。僕は大丈夫、戦える」

「いや、お前殴り倒されたんだろ? ちょっとは休んでも……」

「大丈夫だって言っているでしょうッ」


 イスカは感情を抑えきれず叫んだ。

 御堂は伸ばしかけていた手を引っ込める。


「そうだよ、誰がいなくたって僕は戦ってやる! そうしなきゃいけない、父さんからこの力を託されたのは僕なんだから! 僕は戦わなきゃいけないんだ、例え守ろうとしたみんなから石を投げられたって!」

「イスカ、落ち着けよ。お前は……」

「僕は落ち着いている! 冷静じゃないのはあいつらだ! みんな、みんな、みんな!」


 イスカは地団太を踏んだ。作業員たちはギョッとしてそちらを見るが、音源がイスカだと分かるとみな作業へと戻って行った。


「どんな思いで僕が戦っているのかも知らずに!

 僕がどれだけの事をしているのか理解もせずに!

 あんな、あんな勝手な真似して!

 あれじゃあ戦っている意味がないじゃないか!

 守ってやっている意味がないじゃないか!

 僕がいなければ木更津でみんな死んでいたっていうのに!

 そんなことも分からないなんて、みんなどうかしているんだ!」


「イスカ、お前がすごい覚悟で戦っているのはみんな知ってるよ。でも、心がささくれちまう時ってのはあるだろう? だから……」

「だからって許すことなんて出来ない! あんなの裏切りだ、僕への裏切りだ! どいつもこいつも好き勝手やりやがって! ふざけるなよ!」


 狂ったように叫ぶイスカ。

 これまでの不満が爆発したのだ。


 自分の意志を無視した使命を押し付けて来た父。

 守ることを強要した国連軍。

 守られて当然だとのたまう避難民。

 どこまでも追ってくる火星軍。


 十六歳の少年にとって、現実はあまりにも過酷過ぎたのだ。


「……行きましょう、御堂さん。そっとしておく時間が必要なんです」


 話にならない、そう夕菜は判断したのだろう。彼女は御堂の手を引いてその場から離れた。イスカは尚も口汚く叫ぶが、しかしそれは誰に向けられたものでもないだろう。相手は他ならぬ、自分自身だったのだから。


(みんなっ、みんなッ……! 必死でやっているのに、どうして離れて行くんだよ……! 僕は、何のために戦えばいいんだよ! こんなのッ……!)


 イスカは胸の内で泣いた。

 その嘆きを聞くものは、いない。


 カインド強奪の件を受けて、エスピル駐留軍は一帯をくまなく捜索した。だがカインドはおろか、逃げ出した避難民さえ見つけることは出来なかった。

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