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機甲戦騎キャバリアー  作者: クロイモリ
第三章:熱砂の地獄編
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11-稲妻

「レン・グラウツ……あの機体に乗っているのは、彼なのか?」


 そう考えるのが妥当だろう、とイスカは思っていた。バトルウェアの操縦経験があるのは、グラディウス解放同盟を含めても彼一人だからだ。

 カインドが起動したのと同時に、空が眩く輝いた。狙撃砲ではない、短距離ミサイルだ。白煙の尾を引き飛来したミサイルが基地を強襲、対空砲火によって迎撃され空を赤く染め上げた。着弾したものはなかったが、代わりに地上からの攻撃への対応が遅れた。いずこかに隠れていたバトルウェア隊が基地に直接攻撃を仕掛けて来たのだ。


(空と地上の二正面攻撃……ハナから同盟の力には期待していなかったのか? だからどいつもこいつも巻き込むような、こんな手段を取れる……!)


 どこもかしこも、自分の都合で相手を切り捨てるような人間ばかりだ。


(……切り捨てて堪るか! 切り捨てられて堪るか! 僕は切り捨てられた、だけど僕は切り捨てない! みんなを、みんなをたすけなきゃいけないんだ!)


 イスカはビームライフルをカインドに向けて発砲した。狙いは右足、カインドは予想より俊敏な動作でそれを避けた。背後の倉庫が熱を受けて爆発する。

 カインドの手には試作型の大型ガトリング砲があった。キャバリアーのシールドに装着されているものよりも口径が大きく、対バトルウェア戦においても火力を期待出来る代物だ。無論、キャバリアーが受ければ致命傷となりえる。


「レン、聞こえているか! いますぐそいつから降りろッ!」


 イスカはシールドを構え銃撃を受け止めつつ駆けた。カインドはキャバリアーがスラスターを失い、高速機動が行えないことを既に見切っていた。一秒ごとに立ち位置を変えキャバリアーを翻弄する。トップスピードの出ないキャバリアーでは、攻撃を受け止めながらでは追いつくことが出来ないのだ。


『こいつから降りることは出来んな! せっかく虜囚の身から解放されたんだ、このままこいつを持ち帰らせてもらう!』

「させるか! そんなことをするんなら……僕はアンタを殺さなきゃいけなくなるぞ、レン・グラウツ!」

『元々そういう間柄だろうが、俺たちとお前たちとじゃあな!』

「それはっ、そうだけど! でもそれだけじゃないだろ!」

『ワケの分からねえことを言ってんじゃねえ!』


 イスカは撃ち返そうとした。が、その隣からゲゼルシャフトが剣を片手に突っ込んで来た。防衛網が突破されてしまったのだ。イスカは一歩後退して剣をかわし、頭部にアサルトを撃ち込んだ。カメラとセンサーを破壊されたゲゼルシャフトはふらふらと立ち尽くす、イスカはその陰に隠れてガトリングをやり過ごした。

 しばらく待っていると射撃が止んだ。ガトリングガンは弾速と連射能力に優れるが、その分弾の消費が激しい。兵士ならば自分がどれだけの弾を撃っているのか記憶しているものだが、今日初めて使う武器ではそうも言っていられない。レンは舌打ちする。イスカはゲゼルシャフトを押し倒しレンの方に駆け出した。


「お前は生かして捕える! そしてみんなを取り戻すんだ!」


 イスカはライフルを収めるのとほぼ同時に刀を引き抜いた。居合めいて放たれた一撃を、レンはガトリングガンの砲身で受け止める。銃はあっさりと圧潰し、レンを守るものは何もなくなった。イスカは肩口からカインドの胸に突っ込んだ。

 筋肉量の差から来る重量差は圧倒的なものだ。カインドはキャバリアーの突進を止めることが出来ず、あっさりと地面に押し倒された。


『グウッ!』

「僕の勝ちだ、レン! みんなを、避難民のみんなをどこにやったァッ!」


 イスカは刀の切っ先をコックピットに向けながら言った。ほんの少し、イスカが力を込めればレンを串刺しにすることが出来る体勢だ。


『あの人たちから聞いたぞ、自分たちはこの船に軟禁されているって』

「っ……そうだとしても、仕方がないことだったんだよ!」

『何度も降ろすチャンスはあっただろう! オーストラリアに着いた時も、アラビアに着いた時も、降ろすことは出来たはずだ! それなのに降ろさなかった! どうしてだ!』


 分かっていたので、回答に窮した。彼らはイスカを戦場に縛り付けるための枷であり、ただそれだけのために拘束されていたのだと。


『彼らの安全を求めるなら、ここで降ろした方がいいに決まっているだろう! なぜしなかった、なぜ取り戻そうとする! 答えろ、海東イスカ!』

「護りたいからだ、守らなきゃいけないからだ!」


 長く続く問答に、イスカはついにキレた。


「僕は彼らを守るために、こんな下らない戦争に加担したんだ! だったら大人しく守られていろよ! そうじゃなきゃ、僕は何のために――」


 レンは絶句した。これを聞くものがいれば、誰だろうとそうなっていただろう。イスカ自身でさえ、己が放った言葉が信じられないのだから。


 その時。

 キャバリアーのセンサーは飛来する何かを探知した。


(――!? こいつは何だ、超音速で飛行している。ミサイル……いや、そうじゃない。ミサイルだったらあれほど大きいはずはない……)


 イスカは前転し、カインドを飛び越えた。直後、謎めいた飛来物からミサイルが発射された。ミサイルはカインドの僅か上を通り過ぎて行き、建造物を破壊した。イスカは素早く立ち上がり、通り過ぎて行った影を見る。

 青い、戦闘機のようなフォルムをした物体。そこからいきなり足が生え、腕が生えた。機種の部分が引っ込み、二つに割れウィングとなった。元からあったウィングは背面スラスターへと変わる。人型へと変わったそれは急旋回し、キャバリアーを見下ろした。


『その機体を持ち帰れ! そいつの足止めは私がする!』

「ドラッケンのパイロット……!?」


 現れた青い機体に乗っていたのは、アッシュだった。


『お前は私と、ブリッツフントが相手をする!』

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