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機甲戦騎キャバリアー  作者: クロイモリ
第三章:熱砂の地獄編
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09-伏兵

 剣と刀がぶつかり合い、激しく火花を散らす。軽い打ち込みとフットワークを多用する柔の技に対し、アッシュは的確な分析と力強い一撃とを組み合わせた剛の技を持って対する。イスカは口角が自然と上がって来るのを感じた。


(こいつは強い。こいつとのやり合いは、いつも面白い!)


 アッシュは強い。だから自分が止めなければならない。仕留めなければならない。だがイスカには矛盾した、いつまでもこの打ち合いを続けていたいという思いもあった。


 イスカが撃ち込んだ刀を、アッシュは盾で受け止め馬力で弾き返す。その勢いに乗りイスカは後方に跳躍、シールドに搭載されたガトリングガンでアッシュを牽制した。アッシュはシールドと装甲でそれを受け止め、盾を構えたままスラスターを吹かして突進。いわゆるシールドチャージだ。質量とパワーでは勝ち目がない。

 と、アッシュの横合いから砲弾が飛んで来た。それは彼に着弾する直前で炸裂し、大量の散弾を叩きつけた。指向性硬化チタンベアリング弾、ゲゼルシャフトの武装だ。通常砲や銃サイズでは使い物にならないが、リボルビングキャノンほどの大口径ならまだ使いようがあるとして使われ続けているのだ。


『イスカ、そいつは後回しだ! それより要塞内部に突入した隊を支援しろ!』


 今回の作戦ではイスカたちオリバセウス隊とビスキス基地の面々が正面から敵を引きつけ、その間に少数の突入部隊が秘密裏に司令部を破壊する手筈となっていた。まともにあたるよりは余程勝率の高い戦法だ。

 それを聞き、アッシュはイスカを止めようとした。だが続けざまに放たれた砲撃が彼の動きを止める。いまの発言はアッシュの焦りを引き出すためか。


「了解! これより味方機の支援に移ります! それじゃあな、アホ!」


 精一杯の挑発を忘れずにイスカは跳んだ。少し名残惜しいと思ったが、とにかく生き残ることが優先だ。突入部隊は基地の東側から侵入する手筈。

 イスカは砂漠を駆けた。途中、ゲゼルシャフトが立ちはだかって来るがこの間相手にした赤肩より動きは緩慢。キャバリアーの力を持ってすれば倒すことなど造作はなかった。鉄屑を量産しながらイスカは合流ポイントに急ぐ。


(さて、どこだ? どこにいる、突入部隊は……)


 きょろきょろと辺りを見回すと、激しい砂埃が上がっているのが見えた。基地から遠方10Km程度の場所だ。拡大してみてみると、砂漠用の脚部ユニットを装備したAA隊が移動しているのが見えた。あれが突入部隊か。

 彼らを待ち構えていたのは数機のゲゼルシャフト。あれならば問題はない。イスカは跳躍、スラスターを駆使し飛行。上空から銃弾を撃ち下ろした。


『うおっ! クソ、キャバリアー……こんなところにまで!』

「これで終わりだ、火星のパイロットたちめ!」


 上空からの銃撃で動きを止めたゲゼルシャフトたちは、AA隊が放ったミサイルによってとどめを刺された。自惚れるほど鮮やかな奇襲だ。


『こちらB01隊、キャバリアー! 貴官の助力に感謝する!』

「行ってください! 直に敵が来る、そうなる前に――」


 イスカは後方から追いすがって来る敵機がいることに気付いていた。

 だが、事態はそれよりも早く進展していく。

 イスカにとって悪い方向性に。


 AA隊が要塞に突入しようとした時、彼らが通り過ぎて来た砂地が不自然に盛り上がったのをイスカは見た。一度、それと同じものを彼は見ていた。救援に向かったその先で、仲間が無慈悲に殺されて行く光景を。

 イスカは反射的に、彼らとの間に割って入った。シールドを展開し被弾面積を最小限に。砂地の中から起き上がって来たゲゼルシャフトたちを待ち構える。機体は砂地用の迷彩を施しており、右肩を赤く塗っていた。


『やはり勘がいいな、キャバリアー。身を挺して仲間を守るとは……』


 十字砲火がイスカに収束する。弾幕に晒されたシールドはすぐに耐久限界を迎え、ボロボロの鉄屑になって砕けた。イスカは壊れた盾を投げ捨て横に跳んだ。イスカは時間を稼いだが、攻撃に巻き込まれ二機のAAが撃墜された。

 イスカは歯を噛み締めた。また仲間が殺された。


「よくも……よくもやってくれたな! 貴様ぁっ!」


 イスカは両足のロケットランチャーを全弾発射した。それを避けるもの、受け止めるもの、様々だがいずれにも共通することはダメージを受けていないということだ。ランチャーラックを取り外し、刀を携え跳んだ。

 最初の一機が放った横薙ぎの一撃を屈んでかわし、脇腹の下から切りつける。装甲強度が高く、浅くしか切り裂けなかった。二機目は大上段に構えた剣を振り下ろす、イスカは身を低くして地を蹴り弾丸めいた素早さでそれを避けた。最後の一機はライフルでイスカを狙った。弾丸を装甲で受け止め、コックピット目掛けて刀を突き込んだ。ゲゼルシャフトは半歩横に避けてコックピットを外した。


「チィッ!」


 刀が突き刺さり、抜けなくなる。懐に飛び込んだイスカを、敵はハンマーパンチで迎撃しようとした。仕方なく刀を諦め、サイドジャンプで一撃をかわす。やり過ごした二機は素早く反転し銃を抜き、背後のイスカを襲った。

 ショートジャンプを繰り返し、距離を取りつつ攻撃を避ける。敵の練度は高く、機体もいい。武器を一つ失った状態で勝てるだろうか?


 いや、そもそも。突入に失敗した以上作戦はどうなるのだろうか?


「ッ! あれは……」


 そう考えた瞬間、赤い信号弾が上がった。撤退を促す指示だ。イスカは要塞近くにいたAA隊に目をやった。中から出てきた敵が彼らを蹂躙した。


「ッ……クソ! ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!」


 負けた。完璧な負けだ。

 いままで何度も、負けると思った時はあった。だが今回は、白浜でのそれに匹敵するほど、イスカの中ではかつてないほど、完全な負けであった。

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