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機甲戦騎キャバリアー  作者: クロイモリ
第三章:熱砂の地獄編
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08-御堂弘太

 敵機の追跡を振り切ったところで、オリバセウスは降下。イスカは格納庫へと戻り、御堂の姿を探した。幸い、すぐに見つけることが出来た。石動が珍しくそこに来ていて、しかも大声で御堂を叱りつけていたから。


「まったく……何を考えている!? ゲゼルシャフトを勝手に動かすだけでも大事だが、勝手に戦闘に介入するなど! 何を考えているんだね、キミは!」


 御堂はしゅんとした様子で石動の言葉を聞いていた。しかしそれが終わると。


「すみませんでした。でも、イスカが大変な目に遭っているって知って……」


 そう反論した。もちろん、それが石動の怒りに油を注いだのは言うまでもない。


「バカもの! たまたま上手くいったからいいようなものを、もしまかり間違っていればお前の手で海東を殺していたかもしれないんだ! 分かっているのか!」

「そっ、そんな……俺は、ただ」

「それだけ危険なことをしたんだ、貴様は! こんな勝手なことをして、処分を下さないわけにはいかなくなったぞ! だいたいなんで民間人がここに……」

「落ち着きたまえ、石動大尉。彼も悪意があってしたことではない」


 怒り狂う石動。しかしそれに冷や水を掛けるものがいた。


「なっ……クルーガー少佐! どうしてあなたがここに来たんですか!」

「部下にはビスキス陸軍基地へと向かうように指示を出してある。彼らなら私があの場にいなくても十分に任務を遂行してくれるだろう。ところで……」


 石動の怒りを無理矢理に収めると、ヘイゼルは更に無茶なことを言った。


「どうだろう、御堂くん。キミさえ良ければあの機体に乗ってもらえないか?」


 イスカと石動は同時に驚きと怒りに満ちた叫びをあげた。


「何をおっしゃっているんですか、少佐! させられるわけがありません!」

「そうですよ! だいたい、御堂さんは民間人なんですよ!? アンタたちが守らなきゃいけない人じゃないですか! それじゃあ本末転倒ですよ!」

「前々から思っていたのだが、バトルウェアの操縦をさせるのは素人の方がいい。既存の兵器体系に対する知識、悪い言い方をすれば『偏見』が存在しない。基礎体力や技術など、持っていればいいがなくても別に問題はない」


 ヘイゼルはイスカを見て言った。まるで、イスカの存在が素人の存在価値を証明したかのような口ぶりだ。


「無論、キミ次第だ。強制ではない。今回の件は、感謝してもしきれない」

「御堂さん、断ってください。こんなこと聞く必要は……」

「分かりました。俺の力が必要だっていうんなら、俺やりますよ」


 イスカの考えとは裏腹に、御堂はヘイゼルからの要請を快諾した。その顔には強張った笑み。ヘイゼルは邪悪に微笑み、石動を連れて去って行った。


「……どうしてあんな! あんな軽はずみなことを言ったんですか!?」

「軽はずみなんかじゃない。ちゃんと考えて言ったことだよ、イスカ」

「そんなわけがない! 考えてたら言えるわけがないでしょう!」


 イスカの強い口調に、御堂はやや不快感を覚えたようだった。だが、その必死な姿に反論を思いとどまった。


「戦うってことは、殺し合うってことは、考えているより簡単なことでも、いいことでもないんだ。戦場に立っていれば誰でも死にえるし、誰でも殺してしまう。僕だって今まで何人もの人を殺めたし、人の死に立ち会って来ました」


 イスカは自分が殺して来た人のことを思い出した。ヘリのキャノピーを割られ、蹴り飛ばされ、殺されて来た仲間の姿を思い出した。

 それを想像するだけで、胸の底に嫌なものがこみあげて来る。やっている時は生存本能に飲まれ何の躊躇いもなく人を殺すことが出来た。それでも事が終わって、自分がしたことを認識すると、いつも嫌悪が湧き上がって来る。


「みんなには、そんな気持を味わってほしくないんだよ……殺し合いなんて、普通の人がすることじゃないんだ。だから……」

「そんな気持ちをお前一人に押し付けるなんてのもまともじゃない」


 御堂はイスカの肩を掴み、視線を合わせて目を真っ直ぐ見つめた。


「ずっとお前は俺たちのために苦しんで来てくれた。ありがたくもあったけど、悔しくもあったんだ。大人……つっても、他の人から見りゃ若造に過ぎねえんだろうけどな。それでもお前よりも年上の俺が、苦しいことを押し付けてのうのうと生きていたんだからな」

「御堂さん……」

「ほんの少しだってお前が抱えているものを、代わりに背負ってやれたらいいと思うんだ。そうすりゃお前だって楽だし、俺だって気が楽になるよ」

「あなたは、本当に……」


 自然と、涙が溢れて来た。とめどなく、押さえきれないほどの涙が。


「あなたは、本当に人がいいっていうか……おせっかいな人ですね」

「それが俺のいいところさ。俺からそれを取ったら何も残らないだろ?」

「ははっ、そうですね。それがなくなったらただのデカいオッサンですよ」

「ンのやろう、思ってても言わねえのがそういうところだろうが……!」


 御堂はイスカの頭を小脇に抱え、締め付けて来た。痛いが嬉しかった、もちろん痛いのがではない。こうしてじゃれあえることにだ。思えばイスカは長男で、ずっと抱え込んで来たものがあるのだ――例え妹が兄を越えるほどに優秀で手が掛からない子であっても。それを素直に吐き出せる相手がいるのは嬉しかった。


「やってやろうぜ、イスカ。俺とお前とで生き残るんだ」

「ええ。そして、帰りましょう。白浜に。僕たちの故郷に」

「……ああ、そうだな。俺たちの帰るべき場所に、俺たちの力で帰ろう」


 イスカと御堂はそれからしばらくの間、基本的な動作確認や訓練を行った。そんな二人の姿を、乗るはずだった機体を奪われたアーサーが寂しそうな顔で見ていたのだが……それに関しては、特に語るべき事柄はないだろう。

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