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機甲戦騎キャバリアー  作者: クロイモリ
第二章:オーストラリア縦断編
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06-無意味に意味を

 オリバセウス格納庫。AA隊とヘリ部隊は既に発進の準備を終えていた。イスカもキャバリアーに乗り込み、オペレーターから状況を確認しようとした。


「海東イスカ、到着しました。状況はどうなっているんですか?」

『現在西方10Km地点に火星軍のバトルウェア隊が展開している。待ち伏せをしていたのだろうな。機体の形状から見て指揮官機がいる』

「……石動さん? そんなところでいったい何をしているんですか?」


 イスカは思わず聞き返してしまった。

 なぜオペレーター席に石動が?


『後退の時間だから私以外オペレーションを行える人員がおらんのだ! もともと少人数運用を行っている艦であるからに……対空防御展開!』


 どうやら彼はオペレーターだけでなく様々な業務を並行して行っているようだ。石動の指示の下攻撃を凌いでいる、いまはそっとしておかなければ。


『現在バトルウェア十二機、ランドキャリアー一隻が展開している』


 ランドキャリアーとはバトルウェアを運搬するために作られた地上戦艦の通称だ。大型、重装甲、大火力。戦場に近付くための能力を最低限以上に持っている、バトルウェアを始めとした戦闘兵器にとっても油断ならぬ相手だ。

 キャバリアー、リフトアップ。ハッチが開かれると同時にイスカは飛び出した。稜線から大量の砲弾が降り注ぐが、事前に石動から警告を受けていたため問題なく避けることが出来る。暗視視界には特徴的な機影が映った。


「あの指揮官、また戦場にノコノコと! 思い知らせてやる!」

『諸君らをこの地から出すわけにはいかん! 構えィッ、撃てえ!』


 ゲゼルシャフトの軍団が大型キャノン砲を担ぎ、イスカを狙う。イスカは急降下で砲撃をかわし着地、そのまま前進しイアンの下へ走ろうとした。

 だが赤い大地で待ち構えている者たちがいた。ゲルダの軍団だ。彼らは接近戦用に増加装甲とシールド、大型の片刃剣を装備していた。着地したイスカ目掛けて前三方向から彼らは飛びかかる。イスカは盾を構え正面の一撃を受け止め反動を乗せてバックジャンプ、左右から放たれた剣撃をかわした。


『包囲し殲滅せよ! 数の優位はこちらにあり、すり潰せ!』

「数に頼んで邪魔な奴らを潰すって、それがアンタのやり口かよ!」

『戦場においては誰の命も平等! そして私は部下の命を預かる身だ! 彼らがより多く生き残れるように戦術を構築するのは当然のことだろう!』

「クソッ! 一部の反論の隙も無いじゃないか、お前はァーッ!」


 脚部ロケットランチャーを作動、地面に向けて放つ。爆風が赤い土を舞い上げ煙幕を形成した。回り込むように移動し三機のゲゼルシャフトを撒こうとするが執拗な攻撃がそれを許さない。闇にいくつもの光が瞬いた。


「数が多過ぎる……! アスタルさん、こいつらどうにかならないのか!」

『散弾で牽制する、その間にお前は奥の指揮官機をやれ!』


 アスタルは膝立ちの姿勢になると肩のキャノン砲を上空に向け、発射。爆裂した砲弾は硬化チタン弾頭の雨を降らせ、火星軍を襲った。

 更に、後方で低空飛行を続けていたヘリが上昇。両羽下に取り付けられたミサイルランチャーを一斉に発射した。散弾を凌いだゲゼルシャフトたちはサイドステップでそれを避ける、イアンへと至る道が開いたのだ。

 イスカはスラスターを作動させ一直線に道を突き進んだ。何機かは攻撃を避けイスカを狙うが、岩陰に隠れていたグランツと島田のAAがゲゼルシャフトの腕を狙撃し防ぐ。無力化された敵を避けつつイスカは稲妻めいた軌道を取ってイアンへと近付いた。


「お前を取れば、この戦いは終わる!」


 イスカは強く地を蹴りイアンへ向けて跳躍――しようとしたところで足下に何かがあることに気付いた。それは小さな、とは言っても二メートル四方ほどの箱であり、闇に紛れるよう黒く塗装されていた。本能的な危機感を覚え、イスカは無理矢理横に跳んだ。

 イアンはふっと笑った。直後、箱が爆発。イスカは爆風に煽られ体勢を崩した。そのすぐ脇で別の箱が爆発し、戦場を朱に染めた。


『地雷!? 対戦車クラス以上の……うわぁっ!』


 爆発に気を取られた戦闘ヘリに50mm弾が殺到する。ヘリは避け切れずテールローターに被弾、クルクルと回転しながら地に落ち、爆発した。


『これと同じような地雷が、戦場のそこかしこに配置されているぞ』


 イアンは剣を天高く掲げ、仲間を制しながら国連軍に呼びかけた。


『お前たちは包囲されており、これ以上の戦闘は無意味だ。投降せよ』

「圧倒的な力で押し潰しておいて、こっちに選ばせようとでも言うのか!?」

『それが戦場の本質だ。どうやって取り繕おうとも、な。無意味な犠牲を積み重ねるか、それともここで戦いを終わらせるか、どちらかを選ぶんだ』


 火星軍はその気になればいつでも自分たちを滅ぼすことが出来る。だが相手は投降を呼びかけている。これまで戦った相手とは違う、そう思った。


『ふざけるな、お前たちの軍門に下るワケにはいかん!』

『キミたちの戦いに何の意味がないとしてもかね?』


 イスカは思わず間抜けな声を上げた。


『キミたちはキャバリアーとやらを無事送り届けなければならないと思っているようだが、そうではないはずだ。たった一つのファクターに全軍の命を預けるなど、正気の沙汰ではない。バトルウェアのデータは秘密裏に本部へと送られているだろうし、そこにいるゲゼルシャフトのように我が軍の機体を鹵獲する方法もすでに確立していることだろう』

「それが、いったいどうしたんだ……!?」

『単なる囮だ、キミたちは。相手の目を引きつけるための派手な案山子だ』


 誰もそれを否定しなかった。

 誰もが頭の中で考えていたことだったから。


『投降しろ。悪いようにはしない。キミたちの身の安全は保障しよう』

「……無意味なんかじゃない。僕は、僕の意志でお前たちと戦っている」


 イスカは刀を下げなかった。

 敵を真っ直ぐ見据えて宣言した。


「白浜でお前たちに襲われた時から、僕の心は決まっている。お前たちと戦う、そう決めたんだ! それがどんなに楽な道だろうと、僕の心は変わらない」

『よく言った、イスカ。正直お前はダメだと思ったのだがな』


 アスタルも笑いながらそれに応じる。

 イアンは残念そうにため息を吐いた。


『憎しみを捨てることは出来ない、か。致し方あるまい……』


 イアンは白熱剣を振り下ろそうとした。

 瞬間、いくつもの光が空に瞬いた。


「なっ……あれは、いったい」

『どうやら間に合ってくれたようだな』


 通信機から聞こえてくるのはヘイゼルの声。光は地上へと落ちて行き、派手な爆音とともに土柱を巻き上げた。炎と破片によって仕掛けられていた地雷が誘爆、更に混沌の度合いは高まって行く。イスカは本能的にチャンスを感じ取った。


『奇襲を受けるのは想定済みだ。だからジョナサン司令は海岸線に応援部隊を配置しておいてくれていた……彼らは私の指揮下に入ってくれるそうだよ』

『イスカ、行けぇっ! この戦いを終わらせろ、そのマシンで!』

「言われるまでもない!」


 イスカは盾を投げ捨て双刃を引き抜き、イアンへと向けて駆け出した。

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