転生、そして再臨【召喚】part5
絶対不可侵不可変だと思っていた部屋の中が、いや部屋が凄まじいことになっていたショックで呆然とするヴェイグ。
「あのー……」
ナルがやっと反応した。
「亮太……だよね?」
「うん、そうだけど?」
疑う理由がわからない。どこからどう見ても……と言うか、どう考えても俺だろ。
「じゃあどうしてーー
玉座の間から出てるんですか?」
えっと思い現在の立ち位置を確認する。
何度出たいと思ったかわからない玉座の間の入口から数歩、外に出ていた。
「あ、ほんとだ……ほんとだ!?」
うおおおおお!!やったああああああああ!!!
歓喜の声を上げる。
長期間軟禁されていたのだから当たり前だ。
「早速なんだけど!俺この建物見て回りたい!!」
「ちょ、ヴェイグさんどうするんですか!!」
「そう言えばそうだったな。俺としたことが嬉しすぎて一瞬忘れてた……いかんいかん」
「ヴェイグー、起きないとコチョコチョするぞー」
「はい、なんでしょう!!」
ビックリするほどの早さで正気に戻った。こいつもしかしてコチョコチョに弱いのか?
「てかこれ何なんですか!?何があったんです!?何があった!!!?」
あ、怒ってるこれすごい怒ってる。
「いやー、それが俺にも心当たりがなくt…」
「ずっとこの部屋に居ただろ!いい加減にしてください!!!いや、いい加減にしろ!!」
ほんとに知らないからこう答えるしかないのだ。
「気を失って気がついたらこうなってたんだ」
「空気中に漂う魔力の痕跡をみて分かったのですがこれ、相当高等な技術ですよ?それこそ、''神レベル''の」
「し、知らないよ……」
「本当ですか〜?」
訝しげな目を向けてくるが、知らないと自信を持って言えるから堂々と見る。
「あちゃー、これホントだ……いやー、すみません亮太様」
「ところでさ、この建物を見て廻りたいんだけどだめ??」
「そうですね、せっかく移動できるようになったようですし」
部屋から出る。
たったそれだけの事なのにとてもワクワクする。
「こんな広い建物、1日じゃとても回りきれませんよね〜」
ナルがそう言うとヴェイグは不思議そうに首を傾げた。
「亮太様なら、回るだけなら2分もかからないと思いますよ?」
2分?広いんじゃないのか?
ナルは驚愕のあまり目を見開いている。
何をそんなに驚いているんだろう。
「それでは案内を開始します。移動に10分、各所の説明に50分、計1時間ほどと見積もっておりますがいいですか??」
「全部任せるから聞かなくてもいいよ」
「移動にかかる時間が10分っていうのがすごく不安ですが僕も亮太と同じ意見です」
「では早速ーー」
2時間後。
「予想以上に時間がかかってしまいましたね」
城内の説明をあらかた済ませてゆっくりと帰っているところだ。
よく考えたら自分の敷地の説明に2時間も要するって割とかなりヤバイと思う。
「それは亮太がはしゃぎすぎてあちこちめちゃくちゃにしたからじゃないか~」
と、ナルが敷地内の庭になっていたオプの実を食べながら言った。
コイツだってこのオプの実欲しさに、はぐれてそして飛び出して行ったんだが……
「まあ、そう言わずに」
ヴェイグが俺たちを諭すようにいう。
「オプの実ってそこらになってるもんなのか?」
「そんな訳なーー」
「亮太バカか!?街に行った時これだけ値段の桁が10倍くらいあったんだぞ!!?」
「ふーん、こんなのがねぇ……」
大きなブドウ位のサイズの青い桃みたいな見た目だ。
見慣れてないせいか美味そうには見えない。
「他に三大フルーツと言えば、ユプの実とコパの実ですね。どれもかなり高級です。」
「ふーん、なんれかわなっらんでふか?」
おい咀嚼しながら喋るな
「ああ、そんなの簡単ですよ。ウチが売ってるからです」
「あーなるほ……」
途端にナルの顔が青くなった。
お前が今食べてるオプのみとそっくりだぞ。
「つまり僕が今食べているのは」
「ええ、商品ですよ?」
ニッコリとヴェイグが笑っている。ただ1箇所、目を除いて。
「このオプの実だと自然治癒力が高くなったりするんですよ。他の三大フルーツもそれぞれ付加効果がありまして、まあ要するにーー」
ナルが泡を食っている。
「働いて返しましょうね♡」
「きゃああああ!!!」
あっ逃げた。
すかさずヴェイグも後を追う……っていうか一瞬で捕まってるけど。
「嫌だあああ助けて亮太ぁぁあああ!!」
ジタバタ暴れているけど俺に言われてもな。
「がんばー」
「うわっ超棒読み!!」
そのままナルはズルズルと厨房へ連れていかれた。
今日の晩飯はなんだろうか。
やっと出られましたね。
あと数回でプロローグは終わりです!