第08話 お化けVS狼
第08話
さて、馬車の進行方向か反対側かどっちに行こうか。
どちらに行っても町か村はあるだろう。杖の倒れた方向にと思ったけどこの杖浮くんだった。念力でその辺に落ちてた枝を浮かせて倒す。ふむ、反対側か。
意味もなく瞬間移動の連続で移動を開始。これってどんぐらい連続で使えるのかしら?
というかMP的なものとか消費してるのかな。人魂とか念力もいつも際限無く使ってるんだけど何かが消費した感じが全く無い。いつの間にか存在が薄まってるなんて事も無いし。
いったいこれらの力のリソースは何なんだ?
ゲーム的に考えれば魔法とかの何かを消費して使うものじゃなく消費無しの固有スキル的なものなのかな。
まぁ分かんないからこれも保留。
さすが瞬間移動。一回100メートルぐらいとはいえ移動速度が速い速い。日が昇り始めた頃に村っぽいもの発見。瞬間移動の回数的にさっきまでいた森から大体2キロぐらいだろうか。
人に見つかると騒がれそうなので遥か上空から観察する。
村人達の朝は早いようでもう家の外で何やら動いている人達がいる。井戸の周りに人が集まっているな。他は畑の方へ向かっている人達もいる。
そんな中に1人村から出て森の方へ向かっている人がいる。ここからじゃ人は点ぐらいの大きさにしか見えないからよく分からないが多分あれは子供じゃなかろうか?
この世界の人の強さがどれぐらいなのか分からないが危ないんじゃないの?
これは待ちに待ったという程でもないが人助けのチャンスではないか?
という事でちょっとついて行ってみよう。見守りに行くのであって決してストーカーでは無いはず。
やはり10歳にもならないぐらいの女の子であった。気付かれないように慎重に尾行する。
女の子は辺りをキョロキョロと見回しながら森の奥へと入って行く。
何かを探しているようだな。小さな籠も持っているしここはお約束的に薬草とかそういった物じゃなかろうか。
薬草を見つけて大量に渡してあげれればいいんだが生憎とどれが薬草か分からないし本当に薬草を探してるかも定かでは無い。人助けって難しいなぁ…せめて会話が出来ればいいんだが…
暫くすると少し開けた場所にたどり着いた。そこには20センチ程の草が生い茂っている。
女の子はしゃがんでその草を取り始めた。
ふむ、これが薬草(仮)なんだろうか。俺が手伝うまでも無く女の子の持っている籠はすぐにいっぱいになるだろう。今回は俺が善行を積む機会は無さそうだな、と思っていたら森の奥から狼が現れた。なんというお約束的展開。俺にとっては都合が良いからいいんだけどね。
女の子は狼に気付き逃げようと振り返るとそこにも狼が。さらに側面からも現れて4匹に囲まれてしまった。
ちょっと可哀想なぐらい震えているし泣いているのでそろそろ助けて上げよう。
盗賊(仮)のように浮かせて凍らせるというのが出来ないので、普通に人魂をぶつけて凍らせるとしますか。
俺にとっては1番手前の女の子が来た道を塞いでいる狼の真下の地面から杖の先だけだして人魂発射。ほぼゼロ距離なので外す事は無い。
そして地面から飛び出し向かって右側の狼の背後に瞬間移動しこれも凍らせる。相手が驚いているのとこちらを見失って混乱しているから簡単に処理出来る。普通に人魂を飛ばすだけでも倒せただろうけど間違って女の子に当たっても駄目だし凍らせる範囲に女の子が入ってても駄目だから確実にゼロ距離で凍らせていった。
狼を氷の彫像に変えて女の子の方を確認する。うむ、無傷だな。
しかし女の子は俺の方を怯えた様に見つめ必死に後退りしている。どうやら腰が抜けて立てないようだ。
あぁ、俺って魔物だったわ。そりゃぁ怯えられるよね。
しかしここで女の子を残して去って行ってもまた魔物に襲われるかもしれないしなぁ。
可哀想だが少し我慢して貰おう。
俺は女の子を地面と水平になるよにして服を念力で浮かせる。ワンピースっぽい服なのでそのまま浮かせるとすっぽ抜けそうだからね。次に女の子が取っていたのと同じ薬草(仮)を籠が一杯になるまで詰め込む。念力で千切るのって意外に難しいな。
後は女の子と籠を浮かせたまま森の外へ。最初はジタバタ暴れていたが諦めたのか大人しくなった女の子を森から少し離れた所に下ろして籠も足元に置いておく。
最後に手を振って森へ入って行って隠れて様子を見る。
女の子はポカンとしていたがやがて我に返って籠を拾い村へと駆けて行った。
うむ、これは中々の善行を積んじゃったんじゃないかい?
俺の来世は薔薇色だね!