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お化け物語  作者: ああああ
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第01話 田中VS公務員(仮)

第01話



「666番の番号札をお持ちのお客様。44番の窓口までお越し下さい」


やっと呼ばれたよ。

長いよ待ち時間。軽く2日は待ったよ。あと数字が縁起悪すぎだろう。

文句を言いたいがぐっとこらえていそいそと窓口へ向かい番号札を窓口へ出す。


「はい、番号札確認しました。それではこちらの用紙に必要事項を記入し四階の転生課13号室へ行って下さい」


「あ、はい。分かりました」


またかよ。これだからお役所仕事は嫌なんだ。どんだけ盥回すんだよ。

しかし小心者の俺にそれを口に出して言うことなど出来ない。

それで、この紙に何を記入したらいいんだ?

えっと、住所氏名電話番号学歴?

これ必要なの?もう死んでるんだから必要なくね?


そう、俺はもう死んでいるのだ。


トラックに撥ねられたわけでもなく誰かを助けたわけでもなく、ただ風邪をこじらせて肺炎で死んだという何とも言えない死因だった。

33歳の普通の会社員であり、ある意味魔法使いだったね。

別に彼女とかいらないし…ちくしょう…


そして気がつくとどデカイ市役所みたいなとこの前に立っていて整理券を渡されて後ろに並ぶように言われたので素直に並んでいたんだが、一時間に一歩進むか進まないかというぐらい遅い。

役所の中に入るまでに一週間はかかったね。

まぁ死んでるから腹も空かないし疲れもしないから立ち続けられたけども。

で、待ってる間に配られた紙を見てここが死後の世界でこれから輪廻転生の儀式を受けて転生していく、という事が分かった。


最初は転生という単語に興奮していたがあまりにも待ち時間が長過ぎるせいでその興奮もとっくに冷めてしまった。

役所の中に入っても窓口に行くたびに新しい番号札をもらって他の窓口行くだけだし、何の意味が有るのこれ?


これまでのあれこれを思い出しながら歩き続けてようやく四階の転生課13号室に辿り着いた。

取り敢えずノックしてみるとすぐに


「どうぞ、お入り下さい」


と、返事がきた。


「失礼します」


扉を開けて中に入ると事務机が向かいあわせに二つ並んでいて向こう側にはいかにも公務員という感じの七三分けの男が座っていた。


「田中太郎さんですね。どうぞお掛け下さい」


「あ、はい。失礼します」


日本人の習性のお辞儀をしながら座る。


「それではそちらの用紙をいただけますか」


「あ、はい。どうぞ」


コミュ障は何故あ、はい。と言ってしまうのか謎だな。自分で言ってるのに謎だ。


「えーそれでは、これからいくつかお話しをして転生していただくんですが…まず最初に言っておくと、転生したら記憶は引き継げません」


「え?」


「当然の事なんですが最近の地球から来られる方は何故か記憶を引き継げると思ってる方が多いんですよねぇ」


「え?それじゃぁ転生する意味無いじゃないですか!」


「いえ、転生する意味ならありますよ?もし貴方が転生せずに消えるとなると全ての世界の生物の総数が永遠に1つ少なくなるんですから。転生というのは要するに魂のリサイクルなんですよ。個人の楽しみの為とかそんな事の為にするんじゃないんです。世界の生物の総数を維持する為にするんですよ」


えー…まじかよ…俺のチーレム…


「そもそも貴方には前世の記憶が有りますか?無いでしょう?なら何故次の人生に記憶を持って行けると思うのか不思議でしょうがないですね」


グゥの音もでない正論だ。確かに魂のリサイクルとやらが行われているなら俺自身も誰かが転生した人間のはずなのに前世の記憶は無い。くそぅ、現代知識で内政(笑)とかしてみたかった…


「まぁ、方法は無くは無いですがかなり厳しいですね」


おぉっと、まだ希望が残っているのか!


「どうすればいいんですか?」


「まぁ地球出身の方は何故か知ってる人が多いんですが…特典というやつですね」


チートキター!!


「これは生前の善行をポイントに換算してそのポイントで次の人生で役に立つ加護を得るというものですね」


善行だと?なんかやったっけ?


「私は何ポイント有るんですか?」


「えーっと、田中さんは…18ポイントですね」


少な!もっと頑張れよ俺!何でボランティアとか参加しなかったんだよ!

いや、まだだ!18ポイントでも何か凄い能力があるかもしれない!


「加護は全て5の倍数のポイントで交換可能です」


つまり最低5ポイントからか。最大3つとれるわけか。


「こちらが20ポイントのカタログになります」


「ん?なんで20ポイントのカタログなんですか?能力の最大価格が20ポイントということですか?」


「いいえ、最近の方の9割が善行ポイント20未満なので分厚いカタログは邪魔という事になりまして20ポイント以下のカタログを作ってあるんですよ」


「ちなみに1番高い能力はおいくらですか?」


「1000ポイントですね」


「無理だろう1000とか…」


「地球の方ですとマザー◯レサさんなどは取得可能ですね」


聖人じゃねぇか!


「まぁ取り敢えずこちらをどうぞ」


「あ、はい。ありがとうございます」


えーっと何があるかなぁ


5ポイント

力の加護:なんとなく筋肉が付きやすいかもしれない

知の加護:なんとなく賢い気がする

幸運の加護:10回に1回ぐらい勘が当たるかもしれない

精神の加護:メンタルが強いかもしれない

財の加護:道端に落ちているお金を見つけやすくなるかもしれない

etc


なんだよこれ…かもしれないとか気がするとか…

俺は顔を上げて公務員(仮)を見つめた。


「いや、言いたいことは分かりますがまずは考えてみて下さい。しょせん20ポイント以下ですよ?地域の清掃活動とかちょっとしたボランティアで稼げるようなポイントですよ?その程度の事で得られる能力に何を期待してるんですか」


ぐぅ…一々正論を言ってきやがる…

ん?というか最初の目的からはずれてるじゃないか。


「あの、記憶を引き継ぐにはどうすればという事だったんですがこれにはそれらしいのが無いんですけど」


「あぁ、記憶の引き継ぎは200ポイントですからそれには載って無いですね」


うぉい!全然足りないじゃないか!


「あの、さっきは厳しいけど出来る的な感じで言ってませんでした?」


「えぇ、一応方法は無くも無いですね」


「詳しくお願いします」


「簡単に言うと魂の格を下げればいけますね。要するに人間よりも魂の格の低い生物への転生ならいけます。人間の10分の1の魂の格の生物ならポイントも10倍になるんです」


「動物とか虫とかですか?」


「そんな感じですね。田中さんの場合は12倍しないといけないので12分の1の格の生物になりますから…羽虫なんてどうでしょうか?」


「いやいやいやいやいや。もうちょっとなんかないんですか?」


「単細胞生物等もありますが?」


「もうちょっとなんかこう…人型っぽいあれはないんですか?」


「田中さんが記憶を引き継いで転生出来るのは10センチ以下の生物しかないですね。一応人型なら無機物かアンデッドならなんとか」


「アンデッドは分かりますが無機物って何ですか?」


「ゴーレム等の魔法生物ですね」


ゴーレムか、いつか人間ぽい姿に進化出来そうなきがしなくもないしちょっと惹かれるな。


「具体的に言いますと魔法使いが一時的に何かの作業用に作る使い捨てゴーレムですね」


「え?使い捨て?」


「はい、使い終わるとただの土等に戻りますからそこで人生終了となります」


駄目じゃねぇか!

てことはアンデッドに望みを託すしか…


「アンデッドの方は生まれた時から死んでいますし、弱点が多いので魂の格としては低いので人型を保てると思いますよ」


「ちなみにどのようなのがありますか?吸血鬼とかあると嬉しいんですが」


「吸血鬼は無理ですね。格が高すぎます。浮遊霊が精々ですね」


「浮遊霊ですか…弱点が多いという事ですがどんなのがあるんですか?」


「田中さんがなれる浮遊霊ですと、魔力を含んだ風が吹いただけで存在が拡散し意識が消えるぐらい虚弱ですね。あとは日光や魔法はほぼ全て弱点になります。物理攻撃はすり抜けるので効きませんがあまり喰らうと存在が拡散されて消えますね」


もういいよ…なんだよそれ…

そうだ!


「あの、いっそもっと格の低い生物に転生して余ったポイントで色々加護を貰うというのはいけるんですか?」


「あぁ、それは無理です。格を下げた場合得られる加護は1つだけです」


「え?どうしてですか?」


「考えてみて下さい。凄まじい強さを持ったウィルスとかが誕生すればその世界の生物全ての命の危機です。そんなものは認められません」


あぁ、なるほど。


「でも、格下げで加護を1つでも貰えるなら凄い加護を持ったウィルスいけますよね?」


「まずウィルスや単細胞生物等は思考能力が有りませんから記憶引き継ぎが無い限り加護を発揮することなく一生を終えますので大丈夫です。動物や魔物でも記憶引き継ぎがない限り加護を持ってる事を認識する事がまず有りませんので。常時発動系の加護以外はまず発動不可です。人間に転生してもそれは同じですね」


「じゃぁ常時発動系以外取る意味が無いと?」


「記憶さえ引き継げば加護を認識出来るので意味が無いわけでは無いですね。まぁ100ポイント以下の加護はたいした物は無いので最低でも400以上のポイントを持ってる人以外関係無い悩みです。そして400以上ものポイントを持ってる人は転生しても悪事に手を染めるような人はいませんし強い加護を渡しても安心です」


ふむ、どうするか…

羽虫や単細胞生物よりは浮遊霊の方がまだましか?


「すいません、浮遊霊っていつか強くなって進化とかしていけるんですか?」


「そうですね、魔物扱いなので進化は可能です。しかしあくまで霊ですので生身の肉体を得る事はありません。他者に取り憑いたり憑依したりも出来るようになりますが一時的なもので長くて数分程度ですね」


「というか今更なんですけどファンタジー的な世界に転生する前提で話してますけどどんな世界に転生出来るんですか?」


「まぁ地球にも霊は普通に存在しますが」


まじかよ!

じゃぁ心霊現象とかってマジもんだったのか。どうせやらせだろ?(笑)とか思ってたけど中には本物も混ざってたのかな。


「最初に説明しとくべきでしたね。地球の方は剣と魔法の世界を希望される方ばかりでしたのでそれ前提で話していました、すいません」


「いえ、その通りなのでかまいません」


「まぁ剣と魔法の世界としか説明しようもないのですが、1つ注意点があります」


「えっと、それは何でしょう?」


「ステータスウィンドウなんて物はどこの世界にも存在しません」


な、なんだってぇぇ!

まじでか!転生=ステータスじゃん普通!


「えっ?本当に無いんですか?実はどっかにあるとか加護で表示されるようになるとか?」


「無いですね。加護にも有りません」


「じゃぁどうやって進化とかするんです?」


「条件を満たせば自動で進化します」


「自分で選べないんですか?」


「生物の進化は神のお力で叶います。神の意志を拒絶したり神に意見するなど許される事ではありません」


進化は運まかせかぁ…


「それでは時間もおしてきましたのでそろそろまとめたいと思います」


「あ、はい。お願いします」


「転生先は剣と魔法の世界。記憶引き継ぎで浮遊霊という事でよろしいですか?」


「えっと、それでお願いします」


あ、ついOKしちゃった。


「それでは良い来世を」


ちょっと待っ

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