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異世界召喚されたら勇者と聖女に見切られた  作者: ケセランパサパサ
7/10

中二病を再発した

両腕を切られ、痛みとも熱とも不快感とも取れない感情がごちゃ混ぜになって俺の思考を犯していく。

閉じられて暗いはずの視界は赤と白黄色に点滅し神経が焼き切れるようだった。

最初は聞こえていた俺自身の悲鳴もいつしか激しい耳鳴りに打ち消されて雑音程度にしか会話が聞こえない。

神経が上げる悲鳴に押さえきれない吐き気が凄まじく、鉄のにおいに混じって饐えた匂いが僅かにしたので気付かないうちに吐いてしまったのかもしれないが一々気にしていられるほど今の俺に理性は無かった。



支えを無くして崩れ落ちた体に自分から流れ落ちた血がついて生ぬるく湿っていく。

すると、のたうち回ったせいか目隠しが外れ、ぼやけてはいるが復活した視界に一番最初に映ったのは…勇者くんのゆがみ切った笑顔だった。

アドレナリンでも出たのか、それとも俺の気が触れたのか知らないが、痛みや怒りで塗りつぶされそうな思考とは別に冷静な部分が働きだす。

それで気付いたのは、勇者くん……勃って、やがった。


この瞬間、意識して吐いた。

でも朝から何も食べてないし何度か無意識に吐いていたので胃液しか出ない。

喉がひりひりして少し口から血の味がした。


そして視界と同時に段々と復活してきた聴覚が、聖女ちゃんの甲高い笑い声と勇者くんの荒い息遣いを拾う。

にしても聖女ちゃん、現代日本で生きていて良くこの状況見て笑えるな。お前ら人の痛みが分からないのか。

それに聖女ちゃん…いや、聖女がこの追加の処置を考えたのだとしたら、こいつが聖なる者だなんて俺は絶対に認めない。

勇者もそうだ。

殺したくないと宣いながら、ためらいなく俺の両腕を落としそれを見て愉悦に浸っている。理解できないし理解したくもない。

特に勃つとかホントに無い。


未だにケタケタと笑い続ける聖女と俺を見下ろして嗤っている勇者に段々と状況把握とかよりも憎しみが沸いてくる。

なんでだ。

なんで俺がこんな目に合わないといけない。

ガキの訳の分からない妄想と思い込みで何故俺がこんなに苦しまないといけないのか。


憎い。

辛い。

憎い。

痛い。

憎い。

帰りたい。

憎い。

憎い。

憎い。

憎い。


鮮明になっていたはずの視界がじわじわと黒くなっていく。

両腕を切り落とされているのだから、出血多量で貧血の症状が出始めているんだろう。

むしろ良くショック死しなかったと自分自身をほめてやりたい。

視野が狭くなればなるほど、それはまるで俺自身の憎しみが反映されているようだ。

急激に暗くなっていく視界の中で、淡い緑の光をともした聖女の姿が見えた。

多分このままだと俺が出血多量で死んでしまうので、治癒魔法でもかけるつもりだろう。

聖女のスキルに『回復授与』があった位だからその程度朝飯前のはずだ。ろくに時間が経っていないのに魔法が使えるチートなんだから出来ないわけがない。


あぁもうすぐ意識が切れそうだ。

でも、気を失ってしまう前に、これだけは言わなくては。


「たいよー、治療終わったよー」

「よし。ならそろそろ上に居る奴ら呼んでこようか。上まで運ぶのだるいし」


動け俺の口。


「あーあ、魔法使うと疲れちゃうなー。このまま殺しちゃえば楽なのにー。太陽がどーしてもって言うからやってあげたんだけどさー」

「そりゃぁ、勇者が安易に人殺しなんてしたら今後の動きを警戒されるだろ。強すぎると逆に怖がられちゃうからさ。慈悲を示して、この世界の法に従う姿勢は大事なんだ」

「うーん。みかには難しくてわかんないー」


寝るな、動け。


「ま、みかだから仕方ないな」

「ひっどーい!」

「…く…っ…」

「ん?」


動け、出ろ、動け!


「まさかおにーさん、まだ意識あるの?」

「ぐ、んっ…」

「んー?なになにー?」

「……、…ッ…お、まえら…同じ目に、あわ、すッッ!!!」


捨て台詞と思われてもいい。

でも俺は、簡単にくたばってなんかやるつもりはねぇから、俺が生き続けている限り苦しめばいい!!





と、言うのが当時の俺の怒りに身を任された思考だ。

軽くどころではない中二病が入っていて思い出した途端身悶えた。

頭を掻きむしりたい衝動に襲われたが、俺に掻き毟ることのできる腕が肩からすっぱり存在を奪われているのでできやしない。

聖女の魔法は万能だったらしく、今は痛みなどかけらも存在せず、貧血によるふらつき無く腕がない以外には万事快調。

いや腕がない時点で大問題だけども。

そして一部を除いて快調な俺は気を失っている間に勇者たちが言っていたダンジョンに運ばれた…らしい。

らしいと言うのも場所が場所なだけに暗いので周囲の状況がさっぱりわからないのだ。

最初に目覚めた時はまだ牢屋に居るのかと思ったくらい。

でも、違うな、と思ったのにももちろん理由がありまして。


「ぎゅうるるるぅぅぅう」

「…俺の人生何時からこんなハードモードになったのかなぁ…」


目覚めて悶えている最中に、不穏な獣?の鳴き声が聞こえ始めていてですね。

多分いま、目の前に居やがります、はい。

勇者と聖女に啖呵きったは良いが…俺氏本気で生きて奴らに復讐できるんでしょうか。


さて両腕を失った割に軽い主人公。

とは言え今後いろいろ起こります。ハードモードです。

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