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5月・・・私がこの学校に入学して、もう1ヶ月経った。ごきげんようの挨拶にも少し慣れてきた。
「夢河さん。ちょっと良いかな?」
放課後、有革奈に呼び止められた。
「え・・・。べ、別に良いけど。」
な、何なのよ・・・。女のいじめだったら最悪だよお・・・。怖いーーー。
「あのさあ。。。何なの一体。」
「えっとね、今日から夢河さんのこと、杏南って呼んでも良いかしら?」
は?な、何だそんな事だったのお。ああ、良かった。
「構わないけど?」
ぱあ。有革奈の顔が明るくなる。
「本当に?嬉しい。じゃ、これからは、私のことも絢乃って呼んで!お願い!!」
ええええ。あんたのこと?ま、いっか・・・。
「いいよ。絢乃さん」
「嬉しい・・・。ありがとう!杏南さん!」
あ、行っちゃった・・・。何だったの。
それから1週間は、時々絢乃と話した。意外と親しみがもてたから、ちょっとほっとしたかな。
でも問題は、文宮佳音のほうで・・・。
「良かったですわね。苦手が克服できて・・・。」
とか何とか言って、いつの間にか後ろに居るの。怖いよ・・・。
「ただいまー。」
たったったったった!
「お帰りなさいおねーちゃん」
「ただいまあ。杏歌、良い子してた?」
髪をリボンで束ねた私の妹、杏歌がお迎えしてくれた。小学校1年生。私の宝物。頭良くって、スポーツできて、可愛いんだもん。
「お母さん。お父さん。ただいま。」
うちのお母さんとお父さんは1年前に交通事故で亡くなった。私がこの家の大黒柱なの。っていっても、いまは優しいおじいちゃんが私たちを引き取って、育ててくれてるの。あ、後もう1人はどこだ!
「杏泰!降りてきなさーい。」
「あ、はーい。お帰りねーちゃん。」
この子は私の弟杏泰、小学校3年生。この子も私の宝物。姉妹思いで、かっこ良くて、気が利くからね。
「今日は何があった?」
「テストで100点とって、ほめられたよ!」
「杏はねえ、お友達とかくれんぼしたよ!」
「杏泰、よく頑張ったね。えらいよ!杏歌は、面白そうね。」
お母さんもお父さんも居ないけど、寂しくないのは、この子達のおかげかな。ありがと。
翌日、午後の授業のちょっと前。絢乃がしゃべりにきた。
「杏南!今日の小テスト、簡単そうだよね。」
「うん、そうだよね。100点は楽楽かな。」
がら、先生だ。あわてて、席に戻ってく。
テストキタア。うんうん・・・。よし簡単だこれ!
10分後。ガタッ、あ、絢乃も出来たんだ。提出っと。
カタン。あ、文宮だ。す、何か提出の仕方も綺麗。って見とれてる場合か?席もどろうっと。
テストが返ってきた。よしっ100点だ!ちらっ、文宮のテスト用紙が見える。97点。あ、計算ミスだ。私も良くやるんだよねーって、あれ?何か、手が震えてるような・・・?




