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書神 ローレライ  作者: 月媛章 練斗
6/6

書神 ローレライ5

夕刻。

ダンバードを叩き出し、子供たちを家まで送るとその足でブランシュを迎えに行く。

いつも家から出ない生活をしているローレライとデスクワーク仕事が多いブランシュの二人が運動不足を互いに憂い、帰りは仕事場から歩いて帰ろうと決めたのだ。


ブランシュが残業だったり、出張で遅い時は歴史省のロビーで待たせてもらったり、古代語の解読を手伝ったりしている。

その中で恐らく、きっと、この人が省長なんだろうな~という人物に会ったことがある。

あの時は、誰でも知ってる歴史の話や他愛のない世間話をして終わったが。

(いい人だったなぁ)

歴史を追い求め、証明したい。

そんな情熱を宿した瞳をしていた。

今のご時世、あんな瞳をした人はそうそういない。


そんなことを思っていると…。

「ラドっお待たせ!」

「いいよ、あんまり待ってないから…」

ブランシュの後ろにいた人物が驚いたように目を見開いた。

「えっ!?あなたがローレライ…さん…?」

「ええと…何度かお会いしたことありました……よね?」

「知ってるの!?」

ブランシュが驚きの声を上げる。

「ブラン…紹介して。なんとなく予想はつくけど」

「ブラン、悪いけど紹介して。早く予想を確信に変えたいわ」

ローレライとアリーティスの予想は、お互いに当たっていた。


『食事はまだでしょう。なら一緒にどう?』

アリーティスの言葉に乗り、ローレライとブランシュは近くの高級レストランで夕食を食べることになった。

あ~あとブランシュは思った。

アリナが本気出してる。

この調子では、資料50冊借りるどころかラドを歴史省に入れかねない。

実際、アリナにとってラドは『鴨がご丁寧に鍋と葱を背負って歩いている』状況と一緒だ。

古代語がスラスラ読める。資料持ってる。魔法使える。お金持ち。

しかも、上手くいけば裏社会の人物に接触し、新しい資料を買い取れるかも♪という心の叫びが醸し出す雰囲気に出てる。

「早速だけど、ローレライさん。少し商談の話をしません?」

「はい!?」

ラドの声が完全に裏返ってしまっている。

そりゃ裏返るだろう。

この食事という名の商談。商談という名の勝負。

アリナが先手を打った。


なんとなく歴史省長と歴史心理学者の意図が読めつつあるローレライは、己の運命と資料の将来を悟った。

己の事はどうでもよい。どうとでもなれ。

資料たちも、目の前のこの人たちならば大切に扱ってくれるだろう。

只、心配なことが二つある。

一つは裏社会が国家省に資料を提供することをどう思うかだ。

下手をすれば裏切りと捉えられ二度と資料を売ってくれないだけでなく、消される。

もう一つは、資料たち自身の事。

あの資料たちは心を、意思を持ち、それを主張する力を持っている。

特にヴォルティエ王朝関係の資料はその主張も力も強く、裏社会の魔導師たちも持てあまし、手を焼いて最終的にローレライの所に押し付けてきた、という表現が正しい。

歴史省に務める者たちの中には、そういった『魔書』や『つくも憑き』にあたる者や知識のない魔法省の人間が危険と判断して破棄する、といった可能性も完全に否定出来ないのだ。

(提供したいのは、山々なんだけど…)

今ある判断材料では、資料の方のリスクが高い。

(いい話だけど…お断りしよう)

断る方向に話を持っていこうと思った瞬間。


「資料をお借りしたいのです」


いろいろ予想していない単語が、アリーティスの口からでた。


最初から資料が訳ありであることは把握済みだ。

私自身、50冊もの『魔書』の持ち主になるのは御免被る。そんな魔力も、時間も、精神的な器もない。

省の長としての経験から、得意な人間に押し付ける方が都合がいい上、資料たちも安全だろう。

裏社会の方の対策も、これなら出来る。

早く研究を進めたい。

その鍵が、目の前にある。


なるほど。

貸し出す、という手があった。

それなら、今まで考えていたリスクの全てが解決する。

貸し出すのだから、所有権は自分だ。

だから、魔法省に壊される事はない。最悪、ロードの名を出してでも守ることが出来る。

裏社会の方も提供する訳ではないため、政府側に付いたと思われにくい。

答えが決まった。

「分かりました。資料を貸し出しましょう」


ローレライ自身も、資料をずっとこのままの状態に出来ないと思っていた。

本来の“資料としての役割”に還してやりたい。

「但し、条件があります」


ラドが出した条件は、とても基本的なものだった。

・扱う際は細心の注意を払うこと。

・気分が悪い者が出たら、すぐに本から引き剥がし安静にさせること。

・本に何かしらの変化があった場合、すぐに自分を呼び出すこと。

この3つの条件をアリナは全て飲んだ。

帰り際にアリナはラドを歴史省にスカウトしたが、ラドは全力で逃げた。


後日、資料たちが歴史省に届けられるが、転送魔法のミスでロビーに届けられる筈が、アリーティスとブランシュの机にてんこ盛りに積まれ、雪崩を起こし、全歴史省職員の悲鳴が上がった。

アリーティス:ひどい目にあった!誰よ、転送魔法の陣を机の上に置いた奴!!

ブランシュ:さっき新人くんが自首してきたわよ。転んで陣をぶちまけて回収漏れがあったって

アリーティス:本当に大変だった!ラドールさんが無事に届いたか確認しに来なかったら、全職員の残業が決まってた。魔法が使えるって便利ね

ブランシュ:そうだけど…。ラドはあまりそう思ってないのよ。

アリーティス:そうなんだ。まぁ確かにラドールさん、家族との仲は険悪そうね

ブランシュ:次回はロード家とラドの因縁等々が分かるって作者が言ってたわ

アリーティス:そう。では次回もお楽しみ!!

ブランシュ:ここまでお付き合いいただきありがとうございます

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