書神 ローレライ4
厄介事を聞いたローレライは何の脈絡もなくダンバードに殴りかかる。
「うおっ!きゅ、急に何しやがる!!」
「それはこっちの台詞だ!お前もよく一般人の友人にそんな危険極まりない頼みが出来るなっ!!女装して後宮に潜入しろだとっ!!!」
ローレライの攻撃は不意討ちだったがそこは歴戦の騎士、問題なくローレライの拳を片手で受け止める。
「だからって、お前こそ殺す気で殴りに来んじゃねぇ!!俺じゃなかったら死んでいるぞ!」
「魔法使いの弱々へっぽこ拳を見切れない騎士なんかが世の中にいる時点で税金の無駄だ!!」
ローレライの拳には、風と炎の魔力が渦巻いていた。
その拳は下手をすれば、都市一つ破壊する威力がある。
それを片手で受け止めているダンバードの手にも樹と水の魔力が渦巻いている。
「ぐぎぎぎぎ」
「うぐぐぐぐ」
両者の魔力が攻めぎあい、拮抗する。
そんななかローレライが口を開く。
「第一、叔母上の暗殺なんかは日常茶飯事で叔母上一人で撃退出来る!!むしろ、騎士が邪魔だ、と叔母上も言ってたぞっ!!」
「なっ!なんだと!!」
その言葉にダンバードは動揺を隠せない。
その隙にローレライは更に魔力を増大させダンバードを畳み掛ける。
ローレライの叔母(ローレライの父親の姉)の職業
は皇后。
その辺の令嬢のようにおしとやかで世間知らずな……人ではない。
そんな人では、皇后が勤まらないどころか『女人地獄』と称される後宮の中で生きることは出来ない。
ローレライの父が若く一族を治めるほどの力量も経験もなかった時などは、常に叔母が間に入り弟の代わりにロード家を治めていた。
その統治力に加え、容姿、気立ての良さを帝王の耳
に入り、帝王に乞われる形で後宮に入った。
後宮の女の戦いを治め、帝王の男児を二人産み皇后に上った。
今のロード家があるのは、この叔母のお陰であると言っても過言ではない。
因みに叔母は、ローレライの母が死んだ後、何かと肩身が狭かったローレライを護り、育て、慈しんだ。
────ロード家の全てを敵にまわす覚悟で。
その叔母が世間知らずの小娘や世の人々のことを知らないお坊っちゃま大臣が放った暗殺者に屈する筈はない。
「ったく、相も変わらず桁外れの魔力だな。俺の直属の魔導師になったらどうだ?」
「断る。お前の部下になりたくない。そして、お前の厄介事に毎日付き合いたくない」
一週間で過労死する自信がローレライにはあった。
「厄介事が済んだら帰れ。お前の場合、存在を知られるだけで面倒だ」
騎士と懇意だ、と知られるだけで人質として狙われる確率が上がる。
「いや、厄介事その2がある」
「……おい」
ふざけんな!!と叫んで叩き出さなかった事を誰か誉めてくれないだろうか。
ただでさえ、こいつの厄介事は一国どころではなく世界規模だったりする。
「隣国がきな臭い。情報くれ」
「情報料300万ユーグ。繋ぎ料200万ユーグ。計500万」
「お、おい…ちょ、ちょっと………待て」
「あっ、俺への迷惑料1000万ユーグ」
色々桁外れの額がスラスラとローレライの口から出て
くる。
「俺を殺す気か!!」
「払えない額じゃないだろ」
とんでもない額だか、正確さや速さを考えるとかなり
安い。
ダンバードは頭を抱えた。
そのダンバードを冷ややかな視線を送りつけ、暫く
待つと…………。
「分かった。払う。──── 最近風が冷たいなぁ」
「そうだなぁ、特に西風が」
訳の分からない世間話をして、終わりにしようとした。
穏便に済ませる予定だった。
ダンバードの最後の言葉を口にするまでは。
「そいやぁ、ロードのおやじと優秀なあんちゃん二人が
『帝王の茶会があるから、強制連行する』だってさ」
「───煉獄の炎、全てを浄め清道へ誘う神の伊吹よ。我、ローレライ・ラシオル・アクラルド・ソヴェ・ロードの名において召喚に応じたま」
「待てぇぇぇぇぇ!!!!!!」
ダンバード:はあ~、危なかった。危うくラドールに殺されるところだったぜ。
ローレライ:…… それ、本人の前で言う台詞かい?
ダンバード:なっなっ何でお前が居るんだよ!!後書きの担当は一人の筈じゃ…。
ローレライ:さっき筆者が『一人は寂しいから二人にしちゃおう!!』とか言ってた。『そんな訳でお二人さん、頑張れ♪』とも。
ダンバード:おい!!作者ー!!俺の出番盗るなー!!!
ローレライ:ダン、怒ってないで自己紹介。さもなきゃ、作者に消される。
ダンバード:確かに…。改めて自己紹介します。俺の名は、ダンバード。あだ名はダン。歳は、ラドールと同じ。騎士やってると本編で出てるが本当はもうちょい格上で騎士団長に出世してる。ラドールとは10年以上の付き合いだ。ブランシュとも友人関係だ。─── 一応、念のため言っとくがただの友人だ。ラドールのように恋愛感情は皆無…ゴスッドサッ
ローレライ:ここまで読んで頂きありがとうございます。ダンバードは諸事情があり寝込んだので俺が代わりに挨拶させて頂きました。