序章
私は歴史が大好きです。
様々な歴史小説を読んでいたら、この出来事を伝えた人はどうして名前が伝わってないのだろうか、とふと思ったのです。
そこで、私は「伝えられる側」ではなく「伝える側」の目線で物語を書こうと思いこの物語が誕生しました。
面白い、と思っていただけると幸いです。
歴史小説の天才と呼ばれたローレライ・R・A・ロード。
彼は主に幻の王朝と呼ばれたヴォルティエ国の人物伝記や戦記を書き上げた。
軍略斎女記アリーレイス・ソヴェーロ。
後にローレライ最高傑作と称される伝記を書くまでの物語が始まる。
朝日が顔にあたる。
もう朝か。
寝台からもぞもぞと起き上がる。
「ふあぁ~」
第三者が見たらどう思うだろうか。
ふと、そんなことを彼は考えた。
彼の名はローレライ・ラシオル・アクラルド・ヴォン・ロード。
長過ぎる名前で言うのも書くのも一苦労のためローレライ・R・A・ロードと略している。
ロード家といえば、大貴族だ。
国王の妃を輩出し、今や大臣のほとんどがロード姓である。ローレライの父はロード家の頭領を勤めている。
そんな大貴族の一人であるはずのローレライの邸を見た者は腰を抜かすだろう。
三階建てで見た目は問題ない。
問題は中身なのだ。
まず、貴族の邸には必ずいる使用人が一人もいない。
家具があまりない。せいぜいあるのは机、椅子、ソファー、寝台のみ。
それだけ見て、『ここがロード家の方の邸です。』と聞いたら大概『嘘だろ!!』と反応する。
それだけの反応で済む。
しかし、邸の全部屋を見せればそれどころじゃなくなる。
家具がない分異常なほどある物があり、それが来客を驚かせる。
それは…本だ。
大量の本がローレライの自室と台所、そして、秘密の部屋以外にズラ~と本棚と共にある姿は異様を見事に通り越して素晴らしさを思わせる。
何も知らずに、あっちこっちの部屋を見回れば誰かの邸ではなく図書館だと思うだろう。
しかし、一つだけ図書館と違うところがある。
二階、三階はローレライが集めたれっきとした本だが一階の本は本ではない。
大量のノートなのだ。
真っ白なものもあれば文字が書いてあるのもある。
ローレライの自室には、そんなノートのページや切れ端が散乱している。
彼の邸の全部屋を見た者は己の頬をつねる。
そして、決まって言うのだ。
『本当にロード家の人間なのか?』と。
ローレライ自身、それは聞き飽きた言葉であって儀式の一つのように答える。
『ロード家にも変わり者はいる』と。
どうだったでしょうか?
この物語はまだまだ続きます。ぜひ次回もお付き合いください。