地球滅亡と僕の決意
3か月間ろくに何も食べていないのに体力の憔悴が少ない僕は、1日点滴を打ったが、問題ない判断となり、翌日には退院できた。僕が入院しているとき、仲谷をはじめとしたクラスの人々や先生がお見舞いに来てくれた。テレビで僕はだいぶ有名人になったようで、マスコミの人も「神の子」とかいって僕をもてはやしたようだが、親が面会謝絶を貫いてくれたおかげで僕は余計なストレスがかからなかった。
病院は常に患者が廊下まで列をなしており、地球滅亡のカウントダウンが刻々と進む中で、皆が怯えきっているように見えた。
退院した僕は学校へ向かった。そして先生に聞いた。
「吉田美鈴さんのお墓を教えてください」
先生は突然登校してきた僕の唐突の質問に一瞬目が点になっていたが、すぐ我に返り正確な場所を教えてくれた。
相変わらずマスコミの群れは僕の通路を遮ったが、僕には話すこともないし、ただその雑踏を抜けて美鈴ちゃんのお墓へ向かった。
最近は地殻変動が多く、火山噴火や台風が頻発しているらしい。空も何となく薄暗く、いかにも終焉が迫っていることは分かった。結局、国際宇宙機構は人類史上の巨大ミサイルを建造して打ち上げたが、
その巨大惑星にはなすすべなく、宇宙の塵となったらしい。結局国際宇宙機構は解散。政府もお手上げ状態となった。各国では宗教団体が力を持ち、最終的には「神を信じる者だけが救われる」とかいってよくわからない祈りを続けている。
日本国においても、宗教団体が勢力を伸ばし、国家は解散。政府はその機能を全く失い、経済は止まり、自給自足の生活が続いた。ほとんど外国からの輸入に頼っている日本国では物資の供給がいかず、各会社は倒産。餓死者も多くなったようだ。
ただ、そんなことは僕にとってはどうでもよかった。
今僕がすべきことは一つ。
美鈴ちゃんのお墓に着いた僕は、ぐちゃぐちゃになっていた手紙をそっと取り出して、墓前に置いた。
風が強かったので、僕は近くにある石を手紙の上に置いて、飛ばないようにした。
それからライターを着火させ、その手紙を燃やした。
最初、風が強くて中々燃えなかったが、左端から燃え出した手紙は一気に勢力を拡大し、真っ白の紙は、
黒い灰となって風となって空中を舞った。
「ちゃんと読んでね。そっちの世界で」
美鈴ちゃんは返事しなかった。
家に着いた僕は、地球滅亡まであと数日の間はずっと家にいることにした。
お父さん、お母さんと3人で一緒にいることにした。
あと数日で地球が終わる。
僕の生きてきた証。
僕はこの生き様を小説にしようと思った。国語はそれほど得意ではないが、僕は書かずにはいられなかった。この激動の1年を、書き綴らずにはいられなかった。だれが見るでもない、僕自身のために残そう。
僕はボールペンと授業中に使っていたノートの余ったページを破り取って、お父さんとお母さんの目の前で小説を書き始めた。
テレビは相変わらず地球滅亡で騒いでいたけど、有名人や歌手が歌を歌ったりして生放送で何日も入れ替わりで続けているらしい。それがこの人たちが選んだ道なんだな。僕は小説を書きながら時々テレビ画面を見た。(時々特集で僕の話が出ていたが、あまり興味を持たなかった)
「皆さん、おはようございます。ついに今日が予定している地球滅亡最後の日になりました。最後の最後まで当番組をご視聴いただきありがとうございました。また来世で会いましょう」
アナウンサーが手を振っている。テレビ画面では有名人たちがカメラに向かって手を振っている。紙ふぶきが舞っている。
僕は時間を気にせず、まるで何かに取りつかれたように小説を書き続けた。お父さんとお母さんはそんな僕をやさしく見守っている。時々、あったかいココアを出してくれた。まだ家にあったらしい。僕はそのココアを時々口に含みながら、今までの出来事を書き続けた。
トイレ以外はほとんど小説を書き続けた。
地震が起きているのが分かった。
強風で何か大きなものが家に衝突したことも分かった。
そのたびに、僕ら一家は手を取って抱き合った。
もはや人間が行動を起こす状態ではない。
それでも、命が消えるその一瞬まで僕は小説を書き続けた。
書き続けた。
書き続けた。
書き続けた。
そして僕は消えた。僕は僕なりに15年を全うしたと思う。後悔はしていない。楽しい人生だった。
「ようこそ」美鈴ちゃんがささやいた。
「僕、君としたいことがあったんだ」
「何?」
「テレビゲーム」
「ばか」
美鈴ちゃんは笑った。僕も笑った。
稚拙な文章構成や内容だったと思いますが、最後までご覧いただきありがとうございました。時々短編でスピンオフとかも書きたいと思っています。そのときもよかったらご覧ください。