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魔術師の杖

「後は鞄の補助領域を何に使うかでだいたい決まるな。司書の野郎は魔術師の杖とか名前を大層な名前を付けとったが」

「名前からは入るのはあいつらしいよ」

 ここに居ない共通の友人の話をしながら、俺達は思い出話に興じた。

 現時点での責任者『司書』と呼ばれるデミネーターは、とにかく適当な名前を付けて、何かに分類したがる。

 普段はそう言う処が面倒くさい奴だが、こう言う目新しい物を判断するのに困らないのは便利と言えなくもない。

 名前でも番号でも何でもいいが、イメージし易いに越した事は無いからだ。

「ここに居ない奴の話はいいか、持って行ける専用装置とモジュールに割り振った効果のリストをくれ。後は使いながら覚える」

「そいつは構わんが、一覧に載っていても存在しない物もあるぞ?まあ運よく持って帰れたら、ワシが再調整してやるがな」

 専用装置の方はリストの中から、自分の性に合った物をもって行こう…。

 そう思った矢先、俺はようやく重要な事を思い出した。

 確か作業ユニットの大元は、この異常事態で失われちまってるんだっけ…。

 コンピューターに提示されていた情報を、おやっさんから再び指摘されたことで思い出す。

 まあこの新技術に頼る気は無かったから聞き流して居たんだが…。


「仕方ねえ。その辺の回収も目標に入れとくよ、話しぶりから簡単に壊れる物でもないんだろ?俺に出来ないなら担当者に任せるとするさ」

「あの馬鹿に任せるのか?確かにちょっとやそっとで壊れるもんじゃあ無いが…」

 友人と言うよりは悪友である馬鹿女こと、ドミネーター『サルマンデル』はとにかく効率一辺倒で、対策ごと打ち抜けばいいなんて言う脳筋思考の持ち主だった。

 あの性格だと洒落にならない火力を持ちだしたんだろうが、元々の装置は惑星改造用のユニットである。

 流石に今の状況で用意できる火力で、壊せたりはしないだろう。

 お互いに顔を見合わせて苦笑しつつ、餅は餅屋に任せるかと笑いあった。

「調整に関しては時間が掛かるが、特定の使い道に決めた物は鞄に入れたままでも簡単に実行できる。間違う可能性の無い手順にでも登録しておけ」

「おーらい。間違う可能性の無い手順ねえ…。ますます魔法臭くなって来やがった」

 魔法には呪文と身振りが必要って言うしな…。俺は笑いながら、暴走事故を考えると仕方の無い事かと笑った。

 緊急発動を考えれば簡単な手順で有るに越した事は無いが…。

 ポケットを叩いてクッキーが二枚になるとして、ポケットに触れる度に実行してたんじゃあ荷物が増えすぎる。

 適度に扱い易い報道で、偶発的にやらない事を考えて置く事にしよう。


「やっぱ関節的なモンはコストや干渉率が半端ねえなあ。これなら普遍的なのを2つくらいが妥当ってとこかね」

「当たり前の事を抜かすな。物から取り出すよりも、既に有る物をかき集める方が遥かに早いわ!」

 というわけで、持って行っても良いリストと、割り振ったコマンド・投射制御のリストを眺め出した。

 この作業途中で、俺はアッサリ重力制御という垂涎の的を諦めた。

 自分で口にしたように、制御に掛かる負担や製造コストが重いし…もっと優先すべき物が下位の存在にあったからだ。

 おやっさんの例えを借りるのであれば、…水を集めれる能力があるなら、植物から造ったり井戸を掘る能力よりも遥かに日常生活に役立つだろう。

「とりあえず貰ってる地図が正しいのか軽く歩いてみるよ。やっぱ自分の目で確かめねえと気が済まねえし、コイツの慣らし運転しときたいしな」

「確かにそうだな。ついでに下刈りや踏み分けもやっといてくれたら助かる」

 人使いが荒いねぇ…。

 なんて言いながら、工作担当の要請だけに、必要な場所だけは済ませておくことにした。

 降下ポイントへの往復だけでも、獣どもが人間という脅威が居るのだと認識させ、崖崩れが置き難いように『固定』しておくだけもずっと仕事し易くなるだろう。

 動植物の生産活動は活性化させており、綺麗さっぱり焦土に変えてもまた繰り返す。

 なら、あの馬鹿女よりは見切りという意味で俺の方が適役なのは確かだった。


「そういえば他の連中が目を覚ますのはまだ先になりそうかい?」

「小僧…。ワシら七人の装備を整えるだけでも精一杯なんじゃ。道具を作る手間を考えると、移民どころか増援を起こすのも先だろうよ」

 人手が増えれば良いという物でも無いが、人間が生きて行く為の労力は原始的な作業が必要だ。

 肉や野菜を調達するだけでも、俺達だけでは一苦労になる。

 その辺の塩梅を尋ねると、収支バランス的には、起こした人間の食料の方が遥かに多くなると愚痴をこぼした。

 真っ先に農耕や品種改良の専門家として、その自衛手段が必要になり、護衛もだとしたら手間は数倍。

 とてもそんな暇は無いと、本気で言っているのか、それとも技術開発に専念したいだけなのか区別がつかない面持ちだった。

「仕方ねえ。当面はあの胡散臭い獣や恐竜を狩って来るとしますかね」

「慣れれば結構うまいぞ。洗練されておらん分、肉の味がするからな」

 俺たちはそんなつまらない事を話しながら、居住区画に戻って久しぶりの酒盛りをする事にした。

 明日からは新しい目標に向かって、一汗流す事にしよう。


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