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マジックのタネ

「理屈は判った。だが、その前に確かめる事がある」

 俺が興味を抑えて尋ねた時、おやっさんは神妙な顔で頷いた。

 造り手と使い手、互いに認め合った者同士の、ある種の対決であり真剣な相談でもあるのだから。それを聞き逃そうとするはずがない。

 掌の上にある力を失ったモジュールに目を動かしつつ、俺は尋ねた。

「こいつの入手頻度と補充速度はどのくらいだ?それを聞かない内は、どんな性能だろうと迂闊にゃあ使えねえ」

 基本威力が低いと言っても、指輪2つで対物弾頭になるなら性能面の問題無い。

 投射制御だってパターン化されてるなら、自分の性に合う2つ3つに絞れば使いこなすのは難しくない。

 となると問題は、これがどの程度のペースで使って良いかどうかだ。

 身近な例で言うと、さっきの火球でも今の発火現象でも、モジュールは力を使い果たしている。

 名前からして消費物じゃないんだろうが、バッテリーよろしく何時間も充填に手間が掛かるんじゃあ、おいそれとは使えない。

「さっきの基本威力だと、新規入手のために獣一匹倒すのに数発ぶちこむ必要がありそうじゃないか。使い果たすたびに此処まで戻る訳にもいかんだろ?」

「当然の質問だな。話の前に、まずは鞄をよこせ」

 これだけ便利な道具なら、どんなに不便でも使いこなして見せる。

 だが大型拳銃や火炎放射器の方が便利なら、そちらをメインに使って、この道具はいざという時の手段にするべきだろう。

 この居住区画で充填できるのだとしても、新技術を使いたいが為にペースを遅くするのでは本末転倒でしか無い。

 俺の質問に対して、おやっさんは不敵に笑うと、俺から『鞄』を取り上げて道具を露店風に広げ始めた。


「恐竜や獣を倒さにゃあならんから入手頻度は最悪だが、摩耗と相互干渉に気を使ってる分、一度手に入れたら安心して使って良いぞ。補充速度が目下の難題だ」

「あえて使いきるのが対策の一つってわけか。となると鞄の役目は補充用?」

 火球と発火。明らかに違うエネルギー将棋で、同じ様にエネルギーを消耗きったのはその為か…。

 おやっさんは俺の確認に頷きながら鞄の中から、さっき放りこんだ中間装置を取り出す。

 装置を軽く開くと、装置とは別にケース状の入れ物がある。

 これにさっきのモジュールを取りつけると、見た目では判らないペースでゆっくりと充填らしき行動を開始した。

「もっとも充填自体は早く無い。改良し始めた当初は24時間、今でも8時間から6時間を目指してるくらいだな。おっと話は最後まで聞いとけ…、笑える話だが使いきらない技術の方にメドがついた」

「それじゃあ結構数が必要…って、使い果たさなくなったのか?こいつは綺麗さっぱりみたいだが」

 能書きを垂れそうになったおやっさんが、危うい所で苦労話を中断する。

 8時間は少し長い、それで使うなら複数組揃えておかないと…。と思い始めた処で、訂正するように言い直された。

 使いきるから長時間の充填が必要だと言ったばかりで、相反するように使うわない方法が見つかったという。

 最初からそっちを説明してくれれば…と思いつつ続きを促す事にした。


「それで、その使いきらない方法ってのには、どんなデメリットがあるんだ?」

「言ってしまえば専用化なんだが…。方法は2つある。1つはモジュールの方を、さらに特定の組み合わせに限定化する事だ。欠点をさっきので例えると、火球から発火の組み替えに何時間も掛かる」

 火球を何度も使えるようになる代わりに、発火がどうしても必要になった時に即座の組み換えが出来ないという事か。

 ほぼ無制限の対物弾頭を手に入れれるなら、発火なんて別にいいか…と思ったが、慌てて端末を見返す事にした。

 火炎放射器のバリエーションだけで考えていたから、つい攻撃手段を優先したが…。

 よくよく考えれば空気や水の浄化、気流で毒素や血の臭いを吹き流す方がはるかに重要だ。充填が難しそうだが、重力アンカーや反動軽減の類が用意できるなら旅の行程は大幅に変わるだろう。

「ようやく飲み込めたようだな。そう、この方法は余裕があり、頻繁に使う組み合わせにしか使えない。そこでもう一つの方法との併用が重要になる」

「もう一つの組み合わせ…。相手を限定なんて無理だから、補充用の充填装置の方か?」

 そういう事だ…とおやっさんはニヤリと笑った。

 充填装置の話を先に聞いたのには、やはり意味があったのだ。

 なんらかの方法で高速充電し、かつ摩耗したり暴走しない方法があるのだとしたら…?


「火なら火専門の充填装置にしちまう事で、使った端から補充できる。言うまでも無いと思うが、こんな物を何個も持てる訳が無いし、そもそも干渉だのコストの問題で一人に何個も渡す事はできん」

「だが…選択によっちゃあ、俺らの仕事も相当に捗りそうだな。流石だぜ、おやっさん」

 ゴクリと喉が鳴ったのが、自分でも良く判った。

 火で例えるとさっきの二の舞なので、もう少し汎用性の高いもんで考えをまとめてみよう…。

 空気を操るモジュールだとすると、無制限に空気を正常化し、気流で色んなものを吹き流せる。圧搾空気で攻撃できるのか怪しいが、あちこち動き回りたい俺にとっては二の次だ。

 一人につき一つか二つとしても、残りを通常型のモジュールと充填装置で補えば良い…。


 …こいつあ面白くなって来やがった。

 選択の仕方、使い方次第で旅の行程を縮める事も、面白おかしくする事も可能だろう。


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