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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第ニ章
42/85

ペテンの始まり

「やっぱりコースが読まれてるなあ…つーか丘を土砂でせき止めてんのかね」

「こちらを通るとは限らん。4番目が土砂に困らない事を考えると、せき止めている方だろうな」

 あれから結構な時間を掛けて、素様じい速力を活かして、森沿いに毒の谷を抜ける。

 思ったよりも多かった罠に、俺と伯爵は肩を竦めた。

 だが、罠で時間を喰ったと言っても、全員が慣れない獣馬に乗る事を考えれば大幅に肯定を縮めたと言えるだろう。


「降りる前に言っておくけど、太陽戦車を解除したら、風を流用できないから気をつけてね」

「おーらい。罠を考えると風の防壁はもう暫く欲しいし、時間制で延長しときますか」

 ワザとらしい顔つきで、アマデウスが忠告を掛けて来た。

 それに応じながら、俺は加算系のモジュールで時間延長して、中継ぎをかけてから荷車から降りる。

 ここから先は、言う程に罠の危険性は高くない。

 毒が無い事を考えると延長する労力に見合わないが…、俺達の周囲を呪文が覆っているという事実に大きな意味があった。

「そんじゃあ、こっからは手はず通りに行くぞ?まずはドラゴン対策班と、それ以外だ」

「任せておけ。呪文の維持よりは攻撃に専念する方が楽だ。逃げ回らされたリベンジと行こうじゃないか」

「ふ~ン。リベンジねえ、その割には嬉しい余録があったんじゃないの?って、そんなに怒らないでってば!!」

 意気込んで心意気を語るあいつへ、止せば良いのにアマデウスがちょっかいを掛けた。

 真っ赤になって怒りだし、いつ攻撃呪文を使いだすか、俺も周囲もヒヤヒヤする。

 アマデウスの野郎が怪我しても別に困らないが、…それだと4番目をペテンに掛ける事が出来ないからだ。


「ちょっと二人とも、遊ぶのは良いけれど、あたしの苦労を判ってからやって欲しいものね」

「べっ別に遊んでる訳じゃあ……。気をつけます」

「(いつもあんな感じなら、君も苦労しないのにねえアドベンチャー)」

「(うっせえ。モルガナを怒らせると俺にまでトバッチリが来るだろ。余計な事を言うんじゃねえ)」

 このペテンで一番苦労を掛けているモルガナが、火でも吹きそうな顔で騒ぎの主たちを睨む。

 頭が上がらない先輩にうなだれるあいつと違い、騒ぎの張本人は至って涼しい顔だ。

 俺もからかおうとしたのか、こっちに話しかけて来た。

 あんまり喋らないでくれる方が助かるんだが、ワザとやってるのかねコイツ。


「さて、そろそろお出迎えが来るころなんだが…。雑魚の場合は、おやさんと俺で足止め掛けるから、後は頼むわ」

「当然だ!その辺りの…獣など、私が…私達が倒しておく」

「そうそう。できるだけ静かに、攻撃はスマートにお願いね。くれぐれも言っておくけど…、広域の攻撃なんかしないように」

 俺の合図に頷いて、あいつが元気よく返事しようとした所で急に押し黙る。

 なんというか、モルガナには俺たち全員が世話になってるからな。

 さっさと学習しとけと言いたいが、頭が上がらないのは同じなので、気持ちが判らないでも無かった。



「やれやれ、年寄りに白兵戦をやらすなぞ、最近の若い者はなっとらん」

「あに言ってるんだよ、ハンマー持ち出して自分がやるって言ったのは、おやっさんだろ?頼りにしてるぜ」

 時折やって来る獣たちに、おやっさんは小ぶりなハンマーを血に染めて嬉しげに笑った。

 厳つい表情にガッシリとして頑強な肉体、老いてもなお血の気が多いと…。

 先任者がいなければ、ドヴェルグと呼ばれる所だったってのも良く判る話だ。

「ともあれ、獣とやりあえるのは、おやっさんの装甲呪文が前提だ。よろしく頼むわ」

「ヲイヲイ、それではわしを頼っておるのか、この呪文に頼っとるのか判らんぞ?まあ、これを制御できるのはわしくらいじゃがの」

 獣たちの巣窟になっているのかもしれないのに、おやっさんは随分と軽装だ。

 俺も当初は気がつかなかったのだが、装甲呪文に強化呪文を重ね掛けしているらしい。

 最初はそこまでは要らねえだろうと思ってたが、本来は開発者であるおやっさんが、安全に獣に対処するにはピッタリなんだろう。

 まあ、こうして俺達も助けて貰う羽目になったので、文句を言う立場じゃないがね。


「やけにでかいモジュールの反応だな。こいつはこの装甲でも厳しいが、どうする?」

「ボケてくれんなよ、そいつが例のドラゴンに決まってるだろ?打ち合わせ通りに別れるぞ」

「…まあ大丈夫だとは思うけど、失敗したら結婚式には化けて出るのでヨロシクね」

「けっ、結婚式だなんて!?……、いや、大声は、はい。…ええと、失敗しない様にしましょう」

 周囲のモジュール反応を検知していたおやっさんに、俺は軽く答えて女性陣を促した。

 モルガナの笑えない冗談に俺は言葉には出さずに頷き、あいつは黙ってろというのに、馬鹿正直に口にする。

 勘弁してくれよ…。このペテンは結構シビアな話なんだからな。

 俺は自分が紅くなっているのを自覚しながら、そう言う感じで押しつけて冷静になる事にした。

 やっぱ気恥かしいし、命のやり取りを前にそこまで余裕がないからだ。


 こうして俺達は、モルガナ達を置いて脇道を進む事にした。

 目指すはこの先の洞窟、4番目が言う…竜の住処である。


ゲーム風解説第32回


@レギオンの装備

 クラスの一つであるレギオンは、高度な技術を開発した技術者を示して居ます。

(あるいは、昔からある凄い技術を伝える一族。)

この事から、レギオンのクラスは1つだけレアなアイテムを持ち出す事が可能です。

 話に出て来るクロガネは、装甲呪文の上に効果の強化呪文で二重防御しているのですが

(クロガネが暗殺されたり、事故に合わないのはこの辺も理由)

やろうと思えば

初期キャラなのに空間転移をしたり、空間を広げて自分だけのプライベート・スペースを作る事が出来ます。

また、裏技ですがレアなアイテムでは無く

他のクラスのクラス特典・クラス特技・2つ目の門派などを覚えて置く事も可能です。

他の人に可能な事なので、ワザワザ取得する意味は薄いですが、2人が共同でしないと出来ないコンボを一人で出来るという利点もあります。

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