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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第ニ章
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罠の中を駆け抜けろ!

 ビュオオ……!!

 火を背中に背負い、風を纏った荷車は猛然とした勢いで道を駆ける。

 獣たちを馬に替えて、道なき道を走破するのだというのに、意外なほどの安定性を見せていた。

 これがドミネーターが協力し合い、呪文とフィギア・スタッフをフルに使いこなした一端なのだろう。

 太陽戦車とは良く名付けた物で、格好はともかく、勢いだけは古代戦車の様だった。

「伯爵!進路は『谷』の丘添いを進むんじゃなくて、森の傍を突っ切る様に行ってくれ」

「構わんが、それではせっかくの余裕を、かなり使い潰してしまうぞ?」

 毒の谷を進む時、二つのコースが存在する。

 丘添いにショートカットする方法と、森の傍を抜けて迂回して行く方法だ。

 当然ながら障害物が少ない丘添いの方が早く、色々な障害のある森を迂回する方が遅くなる。

 伯爵が懸念するように、こんなシロモノを組み上げてまで稼いだ時間を、無駄にする行為だろう。

 だが俺は、ハッキリと首を振ってから答えた。


「俺達と敵対する以上、奴は絶対に邪魔をして来る。となると岩落としやバリケードの方がマズイ。森の方は幾つか想定できるしな…」

「なるほど、それでわしをモジュール探知に専念させとったのか。了解した、呪文の罠や攻撃の類は見落すまい」

「そう言うことなら森の傍を通ろう。獣と弓は君に任せるとしてなっ」

 俺の説明を聞いて、おやっさんはようやく暇を持て余していた理由が判ったようだ。

 この中でモジュールの種別に詳しいのは、おやっさんとモルガナの二人だ。

 そのうちモルガナが戦車の管理で動けないなら、おやっさんが解析役に回ると言う訳である。

 伯爵もこの流れに納得したのか、残る可能性を俺に託した。

「おーらい。獣の隠れ方は把握してる、流れ矢が飛んでこない事を祈っててくれ」

「そいつはおっかないな。怪しい場所があったら言ってくれ、わしの方で風の防壁を補強するとしよう」

 おやっさんの言葉に、俺は頷いて周囲の観察を続けた。

 アマデウスが変換した風をそのまま使って、毒避けと矢避けを兼ねた風壁を作ってる。

 毒の方がメインだから矢の方は避け易いレベル…、可能性は低いとしても矢の嵐があれば、危険だからだ。


「…そんなに道中が危険なのか?」

「無理すんなって。てめえは制御に専念してろよ。…奴に時間と手段が無限にあれば別だが、足止め用に幾つかだろうよ」

 あいつが難しい制御に苦労しながら尋ねて来たので、不要だとは思いつつも細かく返答する事にした。

 なんと言うか迂遠な気もするが、返答することで、皆の不安を少しずつ減らせている気がしたからだ。

 深呼吸して頭を落ちつかせながら、どう説明するか咀嚼してから告げる。

「奴にしてみれば、少しでも時間を稼ぎたいだけなんだ。だから、所々に罠を張って、こっちが一歩進むのに三歩分の時間を使わせてえのさ」

「…かといって、沢山作れば仕掛けた時間が無駄になると言う事だな。了解した」

 あいつなりに気を使ったのかもしれないが、お互いに歩み寄ったて事だろう。

 前は俺の説明も適当で、納得させるのにもっと時間を使った気もするが、結構簡単に収まってくれた。

 …ここで俺はようやく気がついた。

 前にあいつって呼ぶのは死んだ友人の事だったが、いつの間にか入れ替わってる。

 少しばかりくすぐったい思いをしながら、せっかく良くなった関係を無駄にすまいと、気を引き締め直す事にした。


「仲良い処を済まんが、ちょいと先にモジュールが仕掛けてあるぞ」

「ぶっ。そんなんじゃねえよ…。っと手前に何か隠してるッポイ茂みがあるな。奴も少しくらいは罠に気を使ってるって訳だ。…伯爵、スピードをあげられるか?」

「クロガネに防壁を頼むのではなく、私に要請かね?と言う事は…」

 おやっさんの報告と同時に、俺は何か仕掛けてある位置を捕捉した。

 敵が俺の能力を知っているなら、罠に逡巡するか避けさせた後で、見えない位置に置いた呪文で攻撃するのが本命だろう。

 その事に気がついた伯爵も、要請に従って鞭を取り出して呪文の準備に入った。


「行けっ、我が王国の住民よ!駆けよ駆けよ駆けよ、ここが故郷の存亡の時である!」

「「ガガガ!!!」」

 …スピードをあげるのに鞭って、思ったよりも直球タイプなんだな。

 加算系呪文によって速度を追加された獣たちは、鞭打たれる馬の如くに速度を上げ始めた。

 そういえば伯爵の研究している干渉方向を聞いて居なかったような気もするが…、付与か強化って所のなのかねえ?

「そろそろ射程圏内だ!防御は不要だから、おやっさんは次のトラップ呪文が無いかだけに注意してくれ!」

「わっ判った。当面は無いから安心しろ!」

 言いながら、俺は呪文攻撃は無いと見ていた。

 余り手間を掛けても仕方がないので、同じ様な罠は無いはずだ。

 やるなら投石器の要領で小さい石を無数に飛ばすなり、獣に毒避けの呪文を使って待機させるくらいだろう。

 そうして、最初の罠によって剛弓が強烈な矢を放ち…。


 VON!

 …暫くして周囲に大爆発が起こった。

「やっぱ範囲呪文か。こっちが足を止めるか避けるか、向こうにゃあ判んねえしな」

「判っているならさっさと詳細を教えんか!寿命が少縮んだわ!」

 偏見を与えても問題なので、詳細を黙っていた事を、おやっさんに悪いと誤って置く。

 ここから先は罠本体じゃ無く、罠と見せ掛けて心理戦、心理戦と見せ掛けて物理で…つー領域だ。

 どちらかと言えば伯爵の得意分野なんだが、獣の制御もあるし、俺がやっとくしかないしな。

 相談してる余裕があれば別なんだろうが、これも時間を稼ぐ為だ仕方あるめぇ。


ゲーム風解説第31回


@共同呪文・儀式呪文に関わる、共通ルール

 複数人で呪文を使う、あるいは後に残る形で呪文を使う場合。

一定のルールが必要になります。

モジュールの組み合わせによってどんな効果が起きるかを再確認する…。

単純な話をすると、免許の確認の様な事です。


 右を向いたら1つめが発動し、左を向いたら2つめが発動…と言う事も出来ますが

そんな事をやったら、全員の行動で大変な事に成ります。

この為、全員がとる行動を把握し、かつ間違えて発動しない様に

それぞれの齟齬を再確認しつつ、全体に間違わない方法でルールを定めて置くのです。


一般的な方法としては

誰かの許可の元に、呪文を行使する。

管理者は、その許可を認め…というような、言葉での管理。

あるいは、全員がかならず同じ動作をして、かつ、言葉に同じような意味合いを持たせる…。

といった手法が取られます。


ルール的には、1段回強化するごとに共通ルール1つ追加。

やり易い形は、歌の様な感じで、一定ルールを定め易くする事でしょう。

この事から、一部の人間の中には儀式呪文をスペルソングと呼ぶ事もあります。


@オマケ:今後のスケジュール

1:基本的に、あと数回で第一部完。

2:基本世界観・キャラクター作成・各種ルール・細かい世界観など、ルール関係の整理

3:1・2の手直しと、必要ならば再修正


4:要望があれば第二部。場合によってはキャラ投稿・質疑応答などもアリ?

と言う感じになります。


とりあえず、予定は未定なので、大幅に変わる可能性もあると思いますが。

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