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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第ニ章
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総力をあげてペテンに掛けろ!

「…あはは。それは面白いねぇ、良いんじゃない?」

「てめえにゃあ聞いてねえよ。だがまあ、協力してくれんならありがたいがね」

 先ほど思いついた案を披露しながら、俺達は食事を開始する。

 ありがたい事に、素人でも美味しく作れる種類を選んでくれたようだった。

 良く煮込まれたシチューをベースに、チーズやら何やらを加えた鍋が一つ。

 そこにパンやら肉を突っ込んで、いわゆるフォンデュ状にして舌鼓を打った。


「しかしこれだけ地球の味を再現できるんなら、もっと早くから食べさせて欲しかった物だね。手順を間違えれば最後の晩餐かと思うと、箸が進み難くなるというものだ」

「お褒めに預かり恐悦至極だけど。この味を再現してるのはアマデウスが持って来た良く判らない物だよ?」

「良く判らない物は酷いなぁ。この星の魚やキノコだし、チーズだって動物の乳なんだけどなぁ…」

 その話を聞いた瞬間に、優雅な動きを見せていた伯爵のフォークが止まった。

 少しだけ逡巡した後で、既に半分ほどを平らげている事実に気がついて、決心したのか残りを腹に放りこむ。

 その間にモルガナとアマデウスは色々と小声で話しながら、どの味が何で再現しているのか教え合っているようだった。


「…そのパンどうかな?」

「あん?フォンデュにして食うなら一緒じゃねえか?…まあ悪くねえけど、俺からみたら保存が効いて持ち歩き易い方がありがたいかな」

 そんな光景を見ながら、パンを千切って液体に浸しては口の中に入れる作業…。

 あいつがしきりにパンの事を聞いて来たので、適当に切り返しながら、俺の好みを伝えておいた。

 どうやら気を良くしたようで、次はそれを作って見るなんて言いやがった…。次からはパンや保存食もサーチしておかないとな。


「所で、例の物は準備できてるのか?」

「え…、ああ。先ほど余った時間で設定しておいた。食事が終わり次第、何時でも出発できるぞ」

 余った時間で設定ってヲイ、これからの勝負を分ける大事なブツだと言ったんだが…。

 まあ今更ながら口を出しても仕方が無いので、ここは食事に関わったメンツの機嫌が良い事をありがたく思っておこう。

 特にこいつには、戦闘のみならず道中の移動でも厄介になるしな。


 …そんな事をしながら、俺達は久しぶりに充実した朝食を喰った。

 これが最後になるなら沈痛なのだろうが、誰ひとりとして欠ける気は無いので美味かったで締めくくろう。

 後は確実に4番目を倒して、永遠に続きそうな苦労は終わりにしたいもんだ。



「…それじゃあ行くぞ。始めてくれ」

「我、サルマンデルがモルガナの名のもと、炎の理を締めさん!」

「…アマデウスたる我は、サルマンデルの承認の元、風の理を敷く。炎は全て風となるべし」

 そして出発となった時、俺の合図であいつとアマデウスが同時に詠唱を開始した。

 あいつの持つ炎のモジュール装置が唸りを上げてフルドライブを開始する。

 それを干渉の研修者でもあるアマデウスが、そのまま風に織り変えてコマンドやら強化内容をひっくり返す。


 炎のモジュールは、攻撃のコマンドに威力の強化。

 風のモジュールは、浮遊に移動力の強化。

 これらがもたらす効果は何か?当然ながら高速移動の実現だ。

 俺達が乗るデッカイ荷馬車が、まるで布団や絨毯でも乾したかのように浮かび上がる!


「出発する!各自捕まって置いてくれ」

「おーらい。途中にあるトラップの類は、俺が残らず感知してやるよ!」

「此処に…我、モルガナはドミネーターの総意を持って告げる!軌道せよ、火炎の車輪、風の三角帆。我らの未来を照らす太陽戦車が今ここに!」

 術式の起動によって、浮かびあがった荷馬車

 それを伯爵が獣どもに引かせて、いわゆる古代戦車を臨時で作ったって訳だ。

 モルガナがそれら全てを統括し、共同呪文として統括することで、本来掛かるはずの膨大なコストを削減していた。

 御者が伯爵、目が俺、そしてカボチャの馬車を用意する魔女がモルガナと言う訳である。


「しかしまあ、よくも此処まで信頼し合った物だね。この一瞬じゃなくて、もっと前からなら楽だったと思うんだけど?」

「てめえはキチンと制御してろよ。…まあ一瞬だけの協力だからだろ。気持ち的にも、目標的にもな」

「そう言う事だ。一瞬だからこそ、貴重だと思えるし…真面目な話をすると、チェックする事にも気合いが入るというものだ」

 違いねえ…。

 高難度の制御しつつ、平然と無駄話をするアマデウスの化け物ぶりに苦笑しながら、俺と伯爵は頷き合った。

 信頼し合ったつもりはないが、もっと厄介な奴が居る状態では裏切らない。

 そう言う種類の信用は合ったと言うだけだった。

 それがこの太陽戦車であり、この後に掛けることになるペテンを思いつかせたつーわけだ。


「此処から先は一気に危険地帯に入るぞ!てめえら、いつでも動けるようにしとけよ」

「了解!」

 暫くして、毒の谷に差し掛かると全員に注意を促した。

 予め気流の防御幕を張ってあるが、4番目が何か仕掛けている可能性は高い。

 あいつは制御で手一杯なのか、アマデウスと違って一声返すので必死らしい。

 いずれにせよ返事が元気なのは良い事だ、このままつきってドラゴンの待つ巣窟に乗り込むとしようぜ!


ゲーム風解説第30回


@共同呪文と、スキル・コンボ

 以前にも共同呪文はペナルティなしで、数人がかりで行使する事が出来ると書きました。

この時ですが、各クラス・門派のスキル、そしてレア・アイテムを導入する事が出来ます。

 今回の話では

1:伯爵が制御に置いた獣を馬として使い

2:サルマンデルの火の三重属性

3:アマデウスの火→風の下位属性変化

(火は、火炎属性・ダメージ呪文・威力強化+2p.風は風属性・浮遊効果・移動力強化2m。)

4:モルガナのスペルのコストダウン

などを共同で行い、空飛ぶ馬車とは言いませんが、高速の荷馬車を作り上げています。

これにアドベンチャーが遠視とか風の幕を作って援護しているので、ペナルティを減らして移動できるわけです。

もし仮に、MP消費を抑えるアイテムをクロガネが持っていた場合は

当然ながら、殆ど消費無しに目的地まで移動出来た事でしょう。

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