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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第ニ章
36/85

円卓会議

「お早い御帰りじゃないか。しかも朝帰りとは隅におけん」

「冗談に付き合っている暇はねーよ。…おやっさん、『谷』にあいつの死体があったぜ」

「それと、連絡がつかなかった4番目と会う事が出来た。あれを会うと言ってよいのかしれないけれど」

 仮眠を取った後、急行軍で歩き通した事もあり、翌朝には居住区へ辿り着く事が出来た。

 おやっさんの冗談を交わしつつ、俺達は単刀直入に一件を口にする。

 時間を掛けても仕方が無いし、もし行き違いで数日を要する実験や降下船への出張をやってたら、数日を無駄に過ごす事になるからだ。


「そうか…。なら早速に円卓会議を開く事になりそうだな。…奴へ義理が無いわけでは無い、一日掛けて伯爵を説得しておいてやろう」

「いや。時間が惜しいし、その用件は俺が直接言った方が伝わる事もある。可能な限り早く、円卓でもなんでも開いてくれ」

 技術開発に置いて、伯爵に貸しがあるのだろう。

 共通のダチの為に、おやっさんが骨を折ってくれると言うのを俺は止める事にした。

「…良いのか?伯爵の動向が問題になるんじゃないかったのか?それにアマデウスだって…」

「わしが出した方が角が立たん事もあるぞ?何をする気か知らんが…」

「判ってるよ。けど、それじゃあ4番目の思惑の中でしか動けねえ。…奴の予想を越えたペースを稼ぐにゃあ、これしかねえんだ。それに伯爵は政治家であって政治屋じゃねえって言ってたろ」

 主導権争いで時間を掛ける気はカケラも無い。

 伯爵が政治家であって政治屋で無いと言うのは、この場合は前提にして最大の拠り所だった。

 権力が欲しいだけの俗物じゃないなら、ここが正念場と知れば無意味に引き延ばしたりはしないだろう。

 4番目の敷いたレールがあるとしても…、その倍を行ってやるまでだ!


「それで良いんだな?お前さんがその気なら議長はわしに任せておけ。掛札にレイズする為の条件が無いわけでも無い」

「おやさんかモルガナしか議長役は出来ねえし、頼んだよ。そんじゃあ、俺も考える事があるから、また後でな」

「…あ。うん、また後で」

 立ち場や主張的に中立な事を考えれば、おやっさんが議長と言うのはありえる事だった。

 その上で、何か話の筋に協力した者には、色々な援助をするという形で陰ながら援護してくれるつもりなのだろう。

 仲が接近した事もあって、後ろから掛かる名残惜しそうな声に未練が無い訳じゃないが。

 俺は一休みして、頭を綺麗にしてから主張をまとめる為に割り当てられた部屋に向かう事にした。



「司書が死んでいる事が判った。本名を知っている者も居るだろうが、ここは心の中で冥福を祈ってやってくれ」

「そうねえ。あたし達の流儀じゃあ、そっちの方がいいか。…細かい案件があればさっさと済ませて、ゆっくりと本題に入りましょう…」

 全員が集まった円卓会議で、おやっさんが軽く目をつむった。

 それに合わせてモルガナの声に応じて俺たちも目を閉じて黙とうする。


「続けての話になるが、ようやくフィギア・スタッフを増やすメドが立った。生産はこれからだが、案件が終わるころには第二期メンバー分くらいは揃うだろう」

「生徒の受け持ちとか考えると面倒なのよね。まあいいわ…。後継者問題と4番目対策は案件の終わった時として、ドラゴン退治と翼竜をどうするかだっけ?」

「後継者問題が小さい問題だとは思えないけどねぇ。まあ簡単に済む話でも無いか」

 どうやら、おやっさんはモルガナに話を通しておいてくれたらしい。

 彼女がキャッチボールの相手役をつとめて、話題が反れない様にしてくれたようだ。

 アマデウスが茶々を入れるが、流れを止める程でも無いので、それ以上は口を出さずに静観している。


「いや、後継者問題で悩む事は無いと思う。つーかどう考えても伯爵が適任だよ。うるさくない程度に仕切ってくれるのは構わねえ」

「「っ!?」」

「…へえ。そこでこう来るんだ♪」

「君は黙っていたまえアマデウス…。どういうつもりなのかな?」

 この件は後回しに…、という空気が流れた後で、俺は最大の切り札を最初にぶつける事にした。

 伯爵を推薦したことで、周囲の表情が一瞬だけ凍りつき、そんな空気を読まないアマデウスが笑顔で微笑んで居る。

 ダシにされた方の伯爵としては、意図が読めない訳でも無いだろうが、むすっとしてこちらを睨んで居た。


「どうもこうもねえよ。議論する時間も逡巡する時間も惜しい。てめえ…いやあんたが探索に関する事で口を挟まないでくれるなら、俺としてもあんたがボスって事に異論はねえんだ」

「…今回のような事だけ主導権を寄越せ、それに黙って協力しろと言う事か?それで私が約束を反故にしたらどうする気だ」

 口出ししないと言って置いて、協力をしない、あるいはここぞと言う処で更に値段を釣りあげて対価を迫る…。

 俺も考えない訳じゃあなかったが、そこは伯爵を信頼する事にした。

 より正しく言えば、プライドと理想を利用すると言っても良い。

 伯爵なりの理想があって頭を張ろうとしてるんだ、難航しそうな話がスムーズにまとまるなら、つまらねえ欲は出さないだろう。


「みんなにも確認だけするが、最終的な形は同じだったろ?もともと次席で行政担当だったんだ。あいつが死んだ事の確認が取れてたら、とっくに後継者になっていておかしくないしな」

「ううむ…。話の筋としては判るが、それで良いのか?」

「それは私の方からも確認しよう。最終形は同じでも、実権と発言力のバランスは違った物になるはずだ。そこまでする君のメリットは何かね、アドベンチャー!」

 正直な話、俺達の中で権力に興味があるのは一人だけだ。

 それなのに、伯爵が実権を握るのに難色を示して来たのは単純な話…。揃いもそろって、口出しされるのが嫌いなメンツが揃っているからというだけ。

 おやっさんの職人気質にしても、風来坊の俺にしても…。基本的には他人様の意見で動くなんざ願い下げだからな。


「おーけー。あんたの方からその話を振ってくれるならありがてえ。今なら…今なら確実に4番目を始末できるからだ」

「…報告書は見せてもらったが、本当に捕捉して処分できるというのか?」

 ここに来て、俺はようやく本音を口にした。

 伯爵は話に引き込まれたのか、報告書と俺の顔を交互に凝視し始める…。


 駆け引きなんざもう必要ねぇ、この話が出た以上は…あとは押し通すのみだ!


ゲーム風解説第26回


@フィギア・スタッフの構築

 今回の話は政治とか教育問題とかの小さい伏線を一気に回収する回なので

同時に出た、キャラ作成の手引きと、概念解説になります。


1:概念的

 据え置きのライブラリー本体と、持ち歩くウインドウ端末という構成になります。

必要な能力は、武器や鎧装備に封入し、ウインドウ端末越しに指示を出す事になります。

我々が普段使っているマウスとボタンのような感じで、キャラクター立ちは座標指定と行動決定する感じになります。


2:クラスの決定

 ライブラリーに入力しながら、ウインドウ端末であるクラス:カードに基本形を設定します。

クラス特典を自動で入手し、各種クラススキルをコストを支払って入手する事も出来ます。

この時点で、ウインドウ端末にイメージ上の偶像形状を加えられるので、フィギア・スタッフと呼びます。

感覚的にはタロットカードなどをモチーフにした漫画や小説に、出て来るような

このカードには象徴からくるこういう能力とイメージがあり、図案はこうなる・・というような物です。


3:インゴット系素材

4:ジュエル系素材

5:門派または流派を決定する

 一部の例外はありますが、これら3つを1つずつ決定します。

インゴット素材では肉体面の得意方向が決まり、ジュエル素材では無条件に使える呪文が決まってきます。

(肉体面ではHPをあげるだけ、呪文面ではMPをあげるだけなども可能です)

 門派は特定の免許のようなもので

基本的にはスキルを使う時に、必要なコストが下げられるように覚えるものです。

同時に呪文を5つ使うには、能力が50必要だけど、ある門派に所属していると30で済むとか、支払費用が半分で済むなど。

 対して流派の方は、剣で戦いながら呪文を使うとか、二刀流で攻撃したりなど、特殊な行動を覚える為の物に成ります。

(門派は数値的に強く、流派は特殊行動系になります)


@判定

判定値(各種能力の合計)+サイコロ2つ

数値が大きいほど成功度が高い、上方ロールと呼ばれる設定で

1が2つで自動失敗、6が2つで自動成功となります。


@能力値

 前にも書きましたが、基本能力はパワー・テクニック・スピードの3つです。

これを肉体・呪文干渉・精神の3方向から見る事が出来るので、厳密には9種類の能力になりますが

判定値を算出する段階では、最終的な合計数値のみを使用します。

(概念的には、上記のライブラリー本体では細かい数値を計算しますが、ウインドウ端末の状態では最終値で簡単に判断するような感じになります。)


 前にも書いた事は多いですが

今回の話の段階で、これらの基本形が完成し、家庭などでライブラリーを設定してから

学校や冒険にウインドウを持ち込んで行くと言う流れが、ようやく完成したと言う事になります。


オマケ:インゴットとジュエルの一覧


インゴット素材

石:HP15。作成コスト+3、ジュエル素材として計算しても良い

鉛:呪文抵抗+2、呪文装甲2、作成コスト+2

鉄:肉体3、装甲4(物理・呪文の両方)

赤銅:肉体3、ダメージ4(物理・呪文の両方)

青銅:肉体3、命中4(物理・呪文の両方)

銀:肉体3、パワー1、呪文抵抗2、呪文装甲2

金:肉体4、テクニック1


ジュエル素材

水晶:MP15.作成コスト+3、インゴット素材として計算しても良い

ルビー:火属性取得。ダメージ2(物理・呪文の両方)

エスメラルダ:水属性取得。回避2(物理・呪文の両方)

サファイア:風属性取得。移動力+2m

琥珀:木属性取得。接触距離+1m

ダイヤモンド:地属性取得。装甲2(物理・呪文の両方)


 と素材として設定されているのは以上となっており

これらとは別に、単純に能力値を上昇させたり、光や生命の属性を取得する事も可能です。

(素材属性は、一部しか選べない代わりに、セットになっていると思ってください)


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