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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第ニ章
31/85

立ち入れざる場所に踏み入れ!

「これから一体どうする気だ?奴はこちらを諦めて居ないぞ?」

「そうだな。順番は前後したが…、ここらで勝負に出てみるか」

 土壁で造った簡易シェルターは狭く、抱きしめる様な格好で話し合う。

 年頃も無くドキドキとしてくるが、押し倒すには狭苦しく、毒が何時入ってくるかも判らない状態ではその気になれない。

 ましてや少し向こうで、レッサードラゴンがじっと様子を窺っているのだ、冗談の入る隙間などありはしなかった。

「この位置から攻撃するのか?流石にそれだと奴も突入して来るんじゃないのか?」

「いや。今回の戦闘自体は放棄する。つーか、あそこまでリキの入った作品なら、全員で相手してやるってのが正しい判断だろうよ。俺が言いたいのは…」

 シェルターといっても、流れて来る毒をニ重の壁で物理的に遮り、風が巻かない様にしただけだ。

 それをこっち側にも加工して、レッサーの視界を遮っている。

 だが奴もこちらが簡単には逃げない事を警戒しているのか、中々この場所を離れようとしない。

 もし遠距離攻撃を掛けようものなら、毒を覚悟で突撃してくるだろう。

 その意味でこいつの心配は正しく、俺が言っているのも戦闘の話では無いのだ。


「このシェルターを見て判らないか?…毒の谷を抜けるんだよ。せっかくなら、何か進展する材料でも見つけねえとけねえな」

 レッサーは強すぎるが、全員で掛かればなんとかなるだろう。

 残りの連中を説き伏せるには材料が居るが、呪文と知性を持った恐竜と言うだけでは少々薄い。

 だが、ここで重要な情報でも見つければ話は別だろう。

「っ!不可能だ!…確かに壁で遮れば毒が来ないとは知らなかったが、どれだけ谷の幅があると思っているんだ」

「ああ、てめえはこの手の話に向いて無かったか…。この谷の毒な、確かに廻り易い厄介な部類なんだが…。欠点があるんだ」

 目を向いて抗議するので、俺はちゃんと説明してやることにした。


「欠点というか、使用目的の性質上の特性だな。都市制圧用に効率化した毒ガスで、まわりは早いが、浸み込んだりしない。自分達で使う時に困るからな」

「…つまり。この件は仕組まれた事だったのか?」

 長時間吸い込めば死に至るレベルだが、その毒が風に巻かれて四方八方に広まるのが致命的に厄介な性質だった。

 何しろその為に開発された毒で…、早い話が異常事態で起きた、偶発的な毒素では無かったのだ。

 そこまで離した段階で、こいつの反応が微妙に変わった。

 驚きはしているが、未知への脅威から、乗り越えるべき既知の危険だと頭を切り替えている。

 何時もこれだけ冷静なら、俺も苦労はしねえんだが…。


「半分はそうだろうな。事故が起きて、取り返しがつかなくなった段階で、誰かがこの辺り一面を閉鎖したんだ。居住区を守る為か、あるいは発展を妨げる為かは知らねえが」

「前者であれば毒を止める方法があり、後者であれば、立ち入らせたくない…何か重要なヒントが眠っていると言う訳だな?」

 俺は頷いて、次は展望を語る事にした。

 今話した内容自体は、前から少しずつ考えを温めて居た物だ。

 アマデウスとひょっこり出会ったりして、急激に推論として固まって来たが、大きく外れは無いだろう。

 ここまでくれば話は早い、必要な手段を確認して、実行するだけの話である。

「とりあえず、レッサードラゴンの視界から外れた事だ。こっそり移動しながら、ゆっくり休める場所を探すとしよう。でねえと壁を造る力で精いっぱいになるからな」

「大概の脅威なら私が排除できるが…。いや駄目だな。奴との戦いで力を使い過ぎた。通り一辺倒の攻撃しかできん」

 まあその通り一辺倒の攻撃が、こんなに消耗してるのに出来るってのが、こいつの最大のウリじゃあるが…。

 いかんせん、この先は未到区域に近い。どれだけ危険があるか判ったもんじゃないからな。


「さてと…。奴の視界じゃない位置で、風を遮れる所はっと」

 攻撃用の共同呪文をばらした俺達は、早速モジュールを回収して呪文を組み替えに入った。

 シェルターのままとは行かないが、風向きと形状を計算すれば、もう少し楽に…出来る限り安全な場所を作りたかったからだ。

 その上で『テント』を張り、仮眠を取りながらエネルギーが充填されるのを待つって寸法になる。

 そうすれば谷の探索を行うにしても、やっぱり別ルートから帰還する事も可能になるだろう。

「でも、なんで急に谷の探索をしようなんて言いだしたんだ?…いや、もちろん、前々から怪しいと睨んで居たのは知っているが」

「急に恐ろしくなったか?…悪い悪い。奴が現時点における最大の脅威として、何者かに設計されていると知ったからだよ。他の適応を促しながら、あれだけのモノを造るにゃあ時間も余力も足りねえだろう」

 モジュール生成装置の一部を抑えているにせよ、時間とかは俺達よりも有利な程度だろう。

 まあ俺達の様に、4番目とアマデウスがつるんでなければの話だが…。そこまで自由自在に行動出来るとは思えない。

 全員の行動に目を光らせつつ、他所で色々な行動をするにゃあ一定範囲の作業に限られるだろうという観測である。


「そんじゃあ壁を立てるぞ?念の為に奴を見張っといてくれ。今更追ってこられても、攻撃するだけの余力はねえからな」

「判ってる…。その、なんだ気を付けてな」

 ギュっと抱きしめられるのが判った。

 …ここでキスして返したら色々自制できなさそうなので、吊り橋効果だと思って可能な限りスルーしておく。

 大丈夫だと確認の声が帰って来てから、俺はゆっくりと息を吸い込んでキーワードである呪文を唱えた。

「長城よ走れ!…もう一度だ!」

 次々に生まれる土の壁が、流れて来る毒をせき止める。

 毒や風の量的に怪しいのでもう一枚。

 二枚目の壁が安全圏を作った所で、俺達は駆け出す事にした。

 あとはもう一度シェルターを造って、ゆっくり眠るだけである。


ゲーム風解説第21回


@呪文の登録と、代用強化(呪文詠唱・身ぶり・魔法陣)

 呪文は登録して置く時点で、モジュールの消耗が減る。

この効果に加えて、研究により、幾つかの効率良い方法が見つかっている。

それが呪文詠唱や身ぶりなどで、間違いが無い入力パターンを生む事である

 これはパスワードを兼ねていると共に、モジュールを用いたコマンド自体が略式の為である事。つまり、一々キーボードを叩いて命令を組むような時間を掛ければ、多少の内容であれば設定可能であると言う事である。


ゲーム的にはそれぞれ代用のポイントが手に入り、そのポイントでモジュールを擬似的に買う様な感じになる。

詠唱をすれば1pの登録料で2p分のモジュールが代用でき、身ぶりや長い儀式呪文なら3pと言う風にである。


なお、ここで得られるモジュール・コマンドの欠点であるが

0:少しくらいの移動はともかく、長距離疾走・攻撃や他に色々するような事は出来なくなる。

1:代用pには、必ず呪文の重さに応じたコストを支払う。

2:得られる効果はコモンまでで、門派に所属してアンコモン、創造門のみレアまで可能と制限される。

と言う事になる。

基本的には簡単な距離延長や、威力・装甲の強化などに用いられる。


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