始まりに、終わりをもたらす為に
舞台と視点は再び移動する。
居住区を離れ、毒の谷を迂回するコースの上。
旅路を急ぐ、アドベンチャーの元へ再び固定される。
その日も可能な限りのペースで移動していた彼の元に、何者かが接近した時より物語は大きく動き出す…。
「(…何か居やがるな。インジブル・ストークだと…?まさかモジュール使う獣じゃねえよなあ)」
俺は仕掛けて置いた探知呪文の内、幾つか反応していない事に気がついた。
受動系探知が軒並み働かず、緊急時の兆候を示す…要は普段使わないヤツが急速起動した事で、『何か』の接近を感じ取る。
周囲を映し出す全天表示を掛けると、何も確認出来ない位置があるのが不気味だった。
「なんの用だアマデウス?」
「ふふっ。ばれちゃった。相変わらず凄いんだねえ」
…何が凄いだ、この化け物め。
毒の谷の方向から、という段階で俺は推測を付けてアマデウスではないかと判断した。
だが、俺の予想は斜め上に外れている。
このド変態は、あろうことか…。獣にまたがってやって来たのだ。
「その馬はどこから持って来たんだよ?馬って言っていいのかしらねえが…」
「この子?えとねー伯爵が手なずけてたんで、伝言に来る時に借りて来たんだよ」
油断のならない事を、さらりと言いやがった。
伯爵が隠し玉として何か戦力なり、でっかい功績を用意しているのは知ってたが、まさか獣を操る能力を研究してたとはな…。
その事に驚くのを隠しつつ、人の気も知らないで平然と口にするアマデウスも油断がならねえ。
こいつが天然ボケで漏らした訳じゃなく、煽りたてる為にワザワザ教えてくれたと言うのが厄介だった。
「返さなくていいほど数が増えたら俺も借りるとするとして…。何の伝言なんだ?」
「んー。やっぱり『谷』の攻略を先にするんだってさ。だから君にはこのまま探索行を続けて、まとめられるだけの成果が溜まる度に、教えて欲しいと言ってたよ」
来るべき時が来た…。そんな思いが俺の中に響いた。
なんとなく、こっちに来そうな予想は有った。
だから、どこまで続くか判らない新天地探査よりも、一周で済む谷の周りを優先したんだが…。
正直な話、新天地の方に決まって、できれば先延ばしにしたい方が来るなんてな。
「了解。おおよそが判った段階で、報告に戻るなり伝言を飛ばせる様にしとくよ」
「そお言う事だね。…せっかく会えたんだから聞くんだけど、メドの方はついたのかなー?」
…相変わらず嫌な事を聞いて来やがる。
推測はしてるが、出来れば認めたくない事だと、気が付いてなお追及して来た。
痛い所を突いて悦に浸りたい訳じゃ無く、今後の騒ぎを大きくする為だから腹が立つ。
「伯爵の方は大方予想がついて、ケリをつける時だと決断したんだろ?てめえが乗ってるそいつとか、色んな物が揃って来たのもあるけどよ」
「ふうん…。と言う事は、君は伯爵が犯人じゃないと思うんだ?」
はぐらかさず、直に来やがった。
やっぱりこいつは自分が楽しければそれで良い、つまらない事を誤魔化したりはしない奴だと言う、俺のカンは当たっていた。
そそのかしはするし、勘違いも助長する事はあるが、嘘を言って先延ばしにする様な事は無い。
何時でも精一杯に、愉しもうとする気分だけは評価出来なくもない。
「伯爵が犯人だったら、今の時点で確実にトップに立ってるよ。…今まであいつの死亡が確認されてない方がおかしいんだ」
「まあ彼は王様になりたいって、奇特な心意気の持ち主だからね。やるならトドメまで狙うかー。じゃあ誰が犯人だと目星をつけた?」
…その場合の犯人候補は、きっと目の前の男が最有力ではないのか?
暗に、というか露骨にそう言って威圧を掛けて来る。
目線どころか全身で笑っているが、何時でも戦闘態勢でもおかしく無い。
こいつは誘ってやがるんだろうが、生憎とその挑発には乗らねえ。
まあ、あいつが死んでるなんて可能性を肯定するのに、気力を使い果たしたってのもあるが。
「確証はねえが、誰でもねえよ。本気で事故だったんじゃねえかな。…まあだからこそ、ここまで解決が長引いちまったんだが。問題はその後、そして解決方法だ」
「事故なら何の問題も無いじゃない。なら、特に調べたりタイミングをはかったりする必要も無いと思うけど?」
再三にわたる質問だが、相変わらず疑問じゃない。
何もかも知っていて、回答を確認する奴の目だ。
だけれども、その目は決して楽観できない。愉快犯だからこそ、楽しく無い答えには全力で処断をかます気だろう。
「あいつが死んでるポイが、確証が無いから便乗犯としては様子を窺ってるってとこだろ。無理して王さまになろうとは思ってないが、チャンスが巡っているなら決して逃しはしないってタマだよ。伯爵は」
「あから君は追い詰めない様に、ルールの範疇で指導者になるように狙ってるんだ?民主主義がいつも良いとは思えないんだけどなぁ」
それを言ったら、どの主義でも政治は一緒だよ。
つまらない回答を精一杯返しながら、俺は政治の世界に興味はねえと付け足した。
俺は冒険者としてこの世界を踏破したいのであって、王様の誕生を阻止したい訳じゃねえ。
気がついたら身動きとれない状況まで追い込まれて、好き勝手に利用されるのが嫌いなだけなんだ。
「道筋はついた。ならば後は自分が指導者になれると判った段階で、色々と功績やら力を積み立てときたいんだろうさ。…あいつの死体を発見するか、死んでいるとしか思えない状況を造り上げるだけで良いんだからな」
「司書が新技術の事を知ったら、絶対に見逃さないはずだしねー。その辺も決断した理由なんだろうね」
どうやら俺は、正解とは言わないまでも、悪く無い道を歩いたらしい。
密かにあった殺気が失せると共に、アマデウスは馬首?を返して獣を元居た道に走らせる。
伝言は確かに伝えたからね、とだけ言残して…嵐の様に災いは去っていった。
ゲーム風解説第23回
@初期キャンペーン
異常事態の対策に起床したメンバーが
様々な問題を乗り越えて、開拓への道のりを付けて行く。
これが初期キャンペーンの目標であり、マスターナンバーの『司書』の死亡が確認された段階が、集結となる予定。
この時点では死亡しているからこそ、異常事態の終結に身を乗り出せない
だけれども、その確認がなされてないからこそ、NO2が繰り上がらないし、代用となるメンバーが起床できない。
という背景になっている。
これ関して、ちょっとした工作をしたのがアマデウス。
彼は事故で瀕死になった司書の意識をコンピューターにアップロードして、別の個体へダンロードいて移している。
それがNO4のエキス・マキナであり、クラスの最後の1枠であるイモタールの始まりである。
クラス:イモタール
特典能力:データ存在。
物理制限に縛られないが、物理領域にも関われない。
肉体を持たず、モジュールに影響を与える特定データとして存在している。
後年のイモタールは、ダウンロードされた司書をベースに研究成果として転写している。
話の中ではなんとなく推測されてはいるが、司書の存在と共に確証は得られていない対象である。
ちなみにイモタールは物理的な壁に阻まれる事は無いが、聖職者の聖別した壁は通り抜ける事が出来ないし、同様にモジュールで封じられた壁も通れない。




