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名も無き星の冒険者  作者: 流水斎
第一章
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毒の谷、そして黎明期を攻略せよ

「当面の目標を『谷』の攻略としたいと思う。異論や質問がある者は挙手を」

「異論はありませんが、何故そちらを優先したのかの理由と、具体的なプランをお願いします」

 次の日、珍しい事に近くに居る全員が居住区に呼び集められた。

 2つあった目標の内、攻略対象となる場所を選定したと言うのだ。

 行政担当の伯爵が決定した事なので間違いは無いのだろうし、決まったからには突き進むのがサルマンデルであるが、念の為に聞いて置く事にした。

「疑問はもっともだな。やはり不確定な安全地帯と言うのが大きな理由だろう。何かの拍子に拡大しかねない物に何時まで経っても頼りきりという訳にもいくまい」

「結局は谷を残しておくメリットよりも、デメリットの方が上回ったという事でしょ?新しい技術を手に入れた以上は、ね」

 居住区を守る毒の谷は、事故で出来た通貨不能の地だ。

 いつかなんとか…と思いつつ、今日にまで至るのが安全上のお寒い理由だった。

 何しろその方面からは獣が抜けて来る事はありえず、警戒だけしておけば良いのだが…。それはあくまで今後も事故の拡大が置きないならという大前提。

 伯爵がそう告げた後で、モルガナは肩を竦めて本音を直訳する。

 何の事はない、スタッフの後継機であるフィギア・スタッフの実用に伴って、防御魔術やガード用のドローンにもメドが立ったという訳である。


「直ぐに量産は出来んが、谷を攻略し終わるまでにはドローンの数も揃うだろうよ。警戒網と組み合わせれば行けるはずだ」

「そういえばそんな事も言ってましたね。とりあえず理由は判りました。プランを教えていただければ、早速向かいます」

 クロガネが人形を何体か、居住区を模したジオラマの脇に置いた。

 壁の代わりに色々な本を置いた後で、道となるべき場所に人形を置く。

 現時点の安全地帯には比べるべくもないが、他の方向にも使える点であると考えれば、飛躍的な発展と言えるだろう。

 サルマンデルは納得すると、自分が何をしたら良いのか改めて尋ねる。


「まずは谷の対岸がどうなっているかを確実に把握し、その上で全体的に抑える。谷が無くともそれなりに安全が保てると判明した段階で、ブロック分けして調査と対処を並行する予定だ」

「アマデウスの報告だけでは要領を得ませんしね…。そうえいば彼はどこに?」

 しゃっしゃと、木の板に線を書き込んで、矢印を弓なりに描いて行く。

 続いてより大きな矢印を色付きで描き、最初の線を初期調査ルート、二つ目の太い線を獣の駆逐ラインだと説明を足した。

 そこまで書き込んだ段階で、伯爵は定規を持ち出して弓なりに迂回した部分をブロック分けして、A~Eと仮の番号を振って行く。

 入り込んで居る者も居るので、そんなに詳しくやらなくともと思ったが、問題なのは奇人変人のアマデウスが遊び半分でやっていると言う事だ、

 お調子者の彼が会議を邪魔しないと喜んでいたサルマンデルは、その段階になって不在の理由を尋ねた。


「あいつならアドベンチャーに伝言を伝えに行ったぞ。伯爵に馬…というか騎乗用にした獣を借りてピクニック気分だ」

「そのまま谷の中へ遊びに連れて行きそうで、なんとも不安ねえ」

「解毒の呪文なんて用意出来て無いでしょうし、…流石に無理なのでは?」

 少なくともここに帰還することなく、二人は対岸の調査に出駆けることだろう。

 クロガネの説明にモルガナはため息ついて諦めそうになった。

 そんな事をされては色々と段どりが狂いそうだと思いながら、サルマンデルも否定しようとしたのだが…。

 幾つかひっかかる事もあり、素直に安心は出来なかった。


「では私もその後を追って、順次に獣たちを倒して行くと言う事で良いですか?」

「それは急ぎ過ぎだろう。ルートの安全が確保できたと判ってからで遅くは有るまい。せめてドローンの第一号が機能してから…かな」

「任せておけ。簡単な機能だけなら既に完成しておる。あとは命令を何処まで解釈出来るかと言う処だ」

 アマデウスが事件に関わっているとは限らないが、自分が愉しむ為に対決をそそのかすかもしれない…。

 そう思って直ぐに追いたい気持ちと、自分が一緒に行くことで、返って悪い方向に進むかもしれない。

 気持ちの板挟みになりそうだったサルマンデルは、仕方無くいつも通りにやる事にした。

 火力に任せて獣たちを蹴散らし、一通り掃除した後で合流できるならする…という大雑把なスケジュールだ。

 彼女の気持ちを知ってか知らずか、伯爵はそれを制し、クロガネの自衛用ドローンが出来るまで確保を続けると言う事で落ち着く事になった。

「谷を攻略して、周囲が安全と判ってから、他の者を起こすとしよう。他に無ければ解散する」

 流石にそれだけ条件が整えば、司書だって帰って来るだろうし、来なくともコンピューターに共同で申請すれば良い。

 その後は特に異論も質問も出ず、次に起きるメンバー次第で新天地の攻略速度を決めようと言う話になった。

 いずれにせよ、その時が黎明期の終わりになるのは間違いがあるまい。


ゲーム風解説第12回


@フィギア・スタッフと、自衛用ドローン

 PCキャラクターと、自動制御のドローンは実の所変わらない。

クラス:精霊+ジュエル素材x3

クラス:ゴーレム+インゴット素材x3


の2つがそれで、基本的には簡単な命令だけしか聞けないが

特化型ゆえに、十分強い性能に仕上がる。


なお、機材を使用したモジュール属性は貴重であるが

ジュエル素材によるモジュール属性は、命令系を抜き出した代用命令なので

それほど貴重という程でも無い。

モジュール群によってコマンド・投射パターンを決めているのは、あくまでデフォルトの命令であって

モジュールを動かす為のエネルギーさえ用意できるなら、別にモジュールその物で命令を出す必要は無いからである。

 この辺はボタンで命令を実行しようと、マクロで命令しようと、キーボードで命令使用と一緒であるのと変わらない。

それまでやってなかったのは、強力な個性によってフィギア・スタッフを造るまで、具体的にどう言う設定に特化するかが決まって居なかっただけである。


ちなみに、魔術門派の創造門派は、自衛用ドローンより高度な

使い魔プログラムを組む事が出来るし、レギオンはレア・アイテムの代わりにそのスキルをコピーすることで代用する事も出来る。

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