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俺…生まれ変わるから。

作者: 天龍有我
掲載日:2005/03/25


「これで終わるんだ………………。」

「や、やめろよ!」

「何もかもこれで……。」

「真也ぁぁあ!」

4秒後………。

真也の体は30メートル下の天に向かって槍のように尖った岩に叩きつけられた。

その場に僕は崩れ落ち、泣き叫んだ。

夕日が僕の涙をオレンジ色に染めて、いたずらに感じるくらいに輝いていた。

真也は自殺した……。

真也は二重人格の恐怖に負けてしまった。

僕が真也の異変に気付いたのは三日前だった。

しかし真也は一年も前から、苦しんでいた。

それになんで気付かなかったんだ……。

   三日前……。

「おう!真也!」

朝、通学路で真也の後ろ姿を見つけた僕は、軽く肩をポンっとたたいていつもどうりあいさつをした。

「おっ!卓哉!」

「なんか目蓋が重そうだぞ!寝不足かぁ??深夜番組見すぎなんじゃねぇの?」

「んなことねぇよ!12時に寝たんだから!でもねみぃんだよなぁ……。体だるぃし!」

「やっぱ深夜番組の見…………」

「ちげぇって!」

この時からすでに始まっていた。

その異変に僕は気付くことすらできなかった。

授業中……。

真也はずっと寝ていた。昨日の夜は徹夜だったのか、学校の間ずぅ〜〜っと寝ていた。

「おまえ、今日寝すぎだな!徹夜だったの?」

六時間目終了のチャイムがなり、気になっていたことを聞いてみた。

もう帰る時間なので、真也を起こした。

目をこすりながら真也は起きた。

「うん……。ちょっとな………。」

「そんなにねみぃの?昨日何してたんだよ?」

「いや……いいじゃん!最近眠いんだよ!」

「ちゃんと寝てんのかよ?寝ないと体もたないぞ!」

「あ………。うん。ちょっと先生に話あるから!先に帰ってて!」

「話ってなんだよ!おい!」

真也は足早に走っていった。

何か………ひっかかる所がある。

俺は急いで真也についていくことにした。

真也は担任の先生を誘い生徒指導室に入っていった。

俺は耳を近付け自分の声を殺し聴覚に神経を集中した。

しかし二人は小声ではなしているのか、聞き取りづらかった。

しばらく聞いていると担任の声が聞こえた。

「二重人格か……。」

二重人格……?

真也が……?

そうか……。それだったら話はつながる。

真也が家に帰り、人格が変わる。

夜中にもう一人の真也が行動する。

そして朝、人格が真也に戻る。

だから学校で眠い……。

真也に夜のことを聞いても何も言わなかったのは、覚えてないからなんだ……。

真也…………。

なぜ俺に話さない。

俺じゃ力不足か……?

「今日は遅いから、また明日きなさい。」

先生の声がした。

「やばぃ!!くる!」

僕は急いでその場を離れた。

真也か思い詰めた表情で出てきた。

そしてそのまま俯きながら帰っていった。

とても声をかけることなんてできなかった。

僕はその場に頭を掻き毟りながら座り込んだ。

あいつは……家に帰っても………。

真也が一人で怯えているんだ。

もう一人の自分の存在に恐怖を感じているんだ。

僕はしばらくその場から動くことができなかった。

日が暮れて、家についてもあの言葉が、頭の中をぐるぐる回る。

「二重人格………。」

僕は携帯を手に取り、リダイヤルから真也の番号を探した。

思い切って聞いてみよう。そう思った。

でも電話した相手が真也だとは限らない。

もう一人の真也だったら、いったい何を話すんだ?

そんなこと考えても何も始まらない。

僕は電話をかけた。

「あっもしもし………真也か?」

「えっ………あぁ。どうしたんだ?」

すぐに真也が出た。

「あのさ……今日おまえの様子がおかしいと思っててさ……。気になってたんだ。」

「おかしい?俺はいつもどうりだぜ!」

「………話せよ。俺に………。」

「話せ?何を?」

「とぼけんなよ!悩んでることがあるんだろ?」

「はっ?だから何を?」

「二重人格。」

その言葉をいった途端、沈黙が走った。

「おれ…………。」

「何?」

「寝るわ!」

「はっ?」

「いや、明日も学校だしさ!今日は早めに寝るよ!また学校で寝てるのも、変だし。ということで、じゃな!」

「おい!真也!!まだ八時半じゃん!」

プープープー。

やっぱりなにか隠してる。

どうしたら………。

真也を助けられるんだ? 

いろいろ考えているうちに朝がきた。

教室に入り、席に座った。

今日は真也…………学校休んでるみたいだ。

きっと昨日も真也の中で人格がいれかわり……。

あんまり考えたくなかった。考えていたら辛くなった。

   ピピピピッ!

「あっ!電話だ!…………………真也?」

どうしたんだろうと疑問に感じて電話にでた。

「もしもし!真也?どうした?」

「……話があるんだ。」

その声を聞いた時、あまりの疲れ切ったような声に驚いた。

「どうしたんだよ?」

「できるだけ早くいつものところに来てくれないか?」

「………わかった。今から行く!」

僕は先生に早退届けを出して、学校を飛び出した。

いつもの場所………。

僕と真也がいつも遊んでいた、あの場所。

保育園の時も、小学校の時も、中学校の部活帰り、二人でいつも話していた。

真也が待っている。

急がないと………。

急がないと!

町の住宅街を抜けて、10分くらい走った所に小高い丘がある。

そこに登ると180度海しかなくて、ちょうど夕日が海の真ん中に沈んで行く。中学校の時、毎日この景色を見ていた。

息を切らしながら全力でその場所に向かった。

真也は先についていて、何か、思い詰めた顔をしていた。

「真也、話って……?」

僕は額から流れ落ちる汗を拭きながら、真也に話しかけた。

「わるいな。俺は先行くわ。」

真也が黒い幕で覆われているように感じた。

そう感じれるほど真也にいつもの明るさはなかった。

「おい!先に行くってなんだよ!どこ行くんだよ?」

「この崖のした………。」

「そんな……。まさか………。」

「自殺することにした。」

「冗談やめろよ!自殺してなになるんだよ!」

「もう疲れたんだよ。」

「なに言ってんだよ!」


「これで終わるんだ………………。」

「や、やめろよ!」

「何もかもこれで……。」

「真也ぁぁあ!」

4秒後………。

真也の体は30メートル下の天に向かって槍のように尖った岩に叩きつけられた。

その場に僕は崩れ落ち、泣き叫んだ。

夕日が僕の涙をオレンジ色に染めて、いたずらに感じるくらいに輝いていた。

真也は自殺した……。

俺に何も言わずに……。

一人で全部抱え込んだまま……。

真也はこの世界から消えた。

その日は警察からいろいろ取り調べを受けた。

僕は完全に犯人扱いだ。

まぁ無理もない。あの場所にいたのは僕だけ………。警察に疑われてもしょうがない。

その日は家に帰してもらえず、警察署で夜を明かした。

次の日警察の疑いが一気に晴れた。

真也の家から遺書が見つかったからだ。

取り調べ室で取り調べを受けていた僕に真也の遺書が手渡された。

その遺書を見て、驚きと愕然の涙を流した。

『 卓哉。今までありがとな。卓哉がこの遺書を読んでる時は俺はこの世界にはいない。

落ち着いて聞いてくれ。

おまえは二重人格なんだ。

そのことに気付いたのは約一年前。

夜中の一時に卓哉から電話がきた。

その声を聞いた瞬間、寒気がした。

卓哉じゃない……。

ドスがきいていて、重々しく、口調も卓哉とは違っていた。

卓哉はこう言った。

「今からうちにこい。来なかったら殺す。」

 

俺は卓哉が寝呆けているんだと思い込みそのまま布団に入った。

電話が来てから10分後、大きなノコギリをもった卓哉が窓を突き破り家に入ってきた。

卓哉はノコギリを俺の首にあてながらこういった。

「次裏切ったら、殺すからな。これから毎日誘ってやる。」

その日から毎晩同じ時間に卓哉から電話がきた。

毎晩俺の家の前に車をとめて、俺を朝までつれ回した。

もう一人の卓哉は狂っていた。ありとあらゆる犯罪を犯した。

暴行。レイプ。強盗。覚醒剤。

毎日毎日いろんなことをした。俺は車のなかで震えながら見ていた。

そして昨日の夜、とうとう卓哉は人を殺した。

20代前半の男を。

もう一人の卓哉は笑い叫びながらナイフで刺しまくっていた。

俺には悪魔が乗り移ったように見えた。

その日の帰り、血だらけの卓哉は俺にこういった。

「俺達、友達だよな?親友だよな?だから裏切ったら殺すから。」

その恐怖に耐えられなくなった。

だから、俺は……。

この世を去ります。

卓哉………。

早く治せよ。

お前だったら絶対にできるから。

じゃあな!

    真也 』

その手紙を読んで、僕は泣き叫んだ。

全部俺のせいだったんだ。

真也……。

今までごめん……。

俺は自分のことにまで鈍感だったのか……。

気遣ってくれてありがとう。

真也っていう親友がいたことを絶対に忘れない。

だから天国で待っててください。

二重人格……。

絶対に治すから。

俺…生まれ変わるから。


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― 新着の感想 ―
[一言] たしかに衝撃的なラストでした。 ただ、そのせいで少し中間部分のストーリーが薄い気がしました。 印象が薄い、というか。 もう少し読者を突くようなものがあるといいかと。 ですが、 始めに核となる…
2008/01/07 13:07 ペルシアン
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