試しに世界創造。
扇形の建物が地面に張り付いている。
白い建物。扇形の扉。
雪国のかまくらみたいなもんだ。
単純明快な造り。だけど中は俺の家と遜色ない生活必需品の全てが揃っている。
ベッドは二つ。一つはここまで俺を運んでくれた小型飛行機の操縦士岩倉源二のものだ。
彼は今昼寝してるので放っておいて、一人で外に出て何をしようか考え中。
俺はこの自由な空間で常に斬新なアイディアを欲している。
だから、色々試す必要がある。
その過程で、ありきたりでつまらない実験をすることもある。
寧ろ、その数の方が多いだろう。
だが、マンネリからの脱却を計るには仕方ないことだ。
俺は朝起きて、外に椅子を置いて座りずっと考えていた。
貧相な俺の頭には、ま~た性懲りもなく魔法や剣の世界を作ろうとか、勇者魔王の治める世界とか、ありきたりな話ばかり浮んでは消える。
もうね、そういうのは飽きたんだ。
だけど、このままじゃ何も始らない。実験ができない。
そこで――簡易世界をまず一時的に作ってみようと決心した。
まぁ、つまらなければ、すぐ消してしまう。
どんな世界を作ろうか。できるだけ簡単な世界が良い。
よし、俺が現実の世界で住む都市をコピーしたものをこの世界に貼り付けしようか。
なんでそうなるんだって俺自身思うわけだが……正直ネタがない。
ただ、自分の住む街の事には詳しい。
この世界に俺の街を創造しよう。
携帯だ。
『俺の街をこの仮想空間にそのまんまおくれ」
決定を押したぞ。
周りの景色が揺らぎ始めた。
まるで陽炎でも立っているのかと思うような大気の変質。
チョコレートが溶けるかのように、目に映る景色もどろっと崩れていく。
だが、やがて新たな色が滲んできて、新しい世界の輪郭が徐々に浮かび上がる。
ここは……俺の部屋!?
いや、俺の部屋ではあるが、俺の部屋ではない。
仮想空間に俺の都市そっくりではあるが所詮、模造品。
虚構の世界だ。
その中にある自宅に俺がいるだけだ。
ここでは現実の世界と全く同じ道理で物事が進んでいる。
そのまんまと書いたからにはそうなっているはずだ。
ただ、現実世界と違うものが一つある。
俺の携帯はこの世界では神ツールであり、俺は神なんだ。