女。
ナッパは携帯使って消しといた。
テリーは朝起きて外覗いたら、アイツがいない! って慌ててたけどね。
でも、それも一時で、まぁいいかってすぐに欠伸しながら食器洗ってたな。
それでもやっぱり俺は罪悪感一杯だ。
テリーは普段通り今日の朝も明るく接してくれるんだが、
俺の方がぎこちなくなってしまう。
試したかったとか、俺の言い分だし、実際はテリー暗殺を企てた黒幕以外の何者でもない。
それで部屋に閉じこもって、俺は罪悪感を払うにはどうすれば良いか考えていた。
まず、真実を打ち明けて、謝るは選択肢に入れない。
ありえない。
下手をしたら、俺の命がヤバイ気がする。
そうすると、他の手を考えないといけないわけだが、
要するに、俺は彼と二人っきりだから、悔悟の念が消えないわけだ。
誰か間に緩衝材のような役割となる人物がいれば、テリーがその相手と話したり、気がそっちへ向いてたりすれば、俺はかなり楽になるんだ。
まぁ、俺が撒いた種なんだけどね。
そこで考えた。彼はまだ若い。俺より年下の男の子だ。
14歳っていやぁ、思春期真っ盛り。
頭の中は女の子の事ばかり考えていても可笑しくない年頃だ。
てことで、女の子を携帯で作成しようと思う。
『年は14、髪は肩まで。髪の色は無難に亜麻色、ソバージュがかかっている。名前は雪乃にでもするか。瞳は茶褐色。格好は、巫女さんルック、美人可愛い系。気が強い、はきはき物を言う、でもKYではない。トラブルメーカーではあるがみたいな、女の子おくれ! 』
敢て騒がしそうな娘を作るのは、俺一身へ傾けるテリーの気を他に向けさせるため。
これからも俺はどんな問題を起こすか分からない。
だが、木を隠すなら森の中。彼女には少ない木の一つになってもらおう。
よし、決定押す。
出でよ、雪乃。
白い煙と共に現れた女の子、雪乃。
「よぉ! 」
俺は笑顔で声をかけてみる。
……
ガン無視。
彼女は憤然とした目つきで辺りをきょろきょろ見ている。
「ここは俺の部屋だよ、そして、君は……」
「誰? なんで私の部屋にいるのよ! 出て行け~! 」
うわ……俺の語りなんて聞いちゃいない。
あっという間に部屋を追い出されてしまった。
怒涛の張り手。
戸を閉められ、内から鍵を掛けられる。
ふー想像を絶する女だ。俺の手に負えそうもない。
俺はしぶしぶ、廊下に出て階段を降りていく。
「テリー、いるか? 」
階段の上から見える範囲にはいない。
奥の流しの方から水の流れる音が聞こえる。
皿でも洗ってるんだろう。
部屋はナッパの暴れた跡がまだ生々しく残されている。
ユニットバスの扉は全部外して片付けたようだが、床のタイルはぼろぼろだな。
後で、ひっそり携帯で直しとくか。
いや、その前に部屋を増やす必要もあるな。雪乃の部屋がいる。
よし、敢てテリーの部屋の隣に雪乃の部屋を拵えるとするか。
これであのツン女の世話をテリーに押し付けられる。
「おい、テリー」
「あ、はい、どうされました? 拓様」
「あのな、女がここに住むことになった、身の回りの世話はお前がしろ」
「ええ、部屋はどうするんですか? 」
「お前の部屋の西側に扉あるだろ、あの向こうに部屋を用意した」
テリーに会う前に仕事はしておいた。
「あぁ、本等にある……いつの間に出来たんだろうか」
テリーにはたぶん、携帯の存在は知られていないと思う。
たぶん、俺は魔法使いか何かだと思われているに違いない。
実際に携帯を打つ姿は彼には見せないからだ。
「取りあえず、俺にとっても大事な客だ、失礼のないように」
「分かりました! お任せください! 」
どうなることやら。