変化。
暗く長いトンネルにも必ず出口があるように、深い森にもそれはあった。
視界が次第に光度を増していくにつれ、僕たちの疲れ果てた顔にも明るみが戻ってくる。
「おぉ、森を出たぞ~」
「眩しい……」
暗い森の中から日の光のわだかまる場所へ。
僕たちは手を翳し目を細めて辺りを見回した。
薄緑の草原が広がっている。
これまで行方知らずだった太陽も、頭上で燦然と輝き自己主張をしていた。
「地図を確かめよう」
雄介君は街を出るとき兵士に渡されたこの世界の地図を野原に広げた。
「ここから北東に歩けば村があるね」
「ほんとだ……」
理子さんは心なしか嬉しそうに見える。
あの暗く湿った森の中で歩き詰めだった。
宿を出るときには、さらさらと光沢のあった背中に流れる黒髪も、
今は、べっとりと湿り気を含み、鬢や額にも髪が張り付いている。
「飯食って体洗いたいな」
皆同じ気持ちだった。
ただ、村があると言っても、ここは見知らぬ土地。
不安がないと言えば嘘になる。
僕たちを快く迎えてくれるかどうかも分からない。
どんな人間が住んでいるかも全く想像がつかない。
「行こうぜ! 」
だけど、雄介君は迷いのない笑顔で定めた方向へもう足を踏み出している。
その雄介君を追い越し先に駆けていく理子さん。
「鈍亀~! 」
振り返って後ろを歩く僕たちに、悪戯っぽく声を投げかける。
「のやろ~! すぐに追いついてやらぁ! 」
「待ってよ~!」
暗く長い森での苦渋の道のりを共にした時間は決して無駄ではなかった。
僕たちの間で何かが変わりつつあった。