街での買い物。
「はぁ、城出れたはいいけど、こんな爆弾みたいなもの手につけられてよ~」
「でも綺麗だよね」
金色の腕輪、表面の浮き彫りが施されている。
牢屋から出してもらった僕たちは城の外へ解き放たれた。
こちらへきた時はあれほど高圧的に色々言われたのに、見送りは兵士が二人だけ。
城の入口であろう門前で、『まぁ、頑張れや』と送り出された。
スタスタと先を歩く水島さん。
肩までの黒髪は綺麗だけどどこか勇ましく見える。
「どこ行くの~? 」
僕は彼女に追いついて尋ねる。
「お金渡されたでしょ、服を買いに行くのよ」
王様からは武器やら衣服代やら旅の路銀として、金貨100枚を手渡されていた。
どれくらいの価値があるかは分からない。
「おい、ちょっと待ってよ! 」
置いてかれそうになって弱気な声をあげる雄介君。
最初は威勢の良かった彼も、不案内な土地では勝手が違うみたい。
「理子さん、似合ってるよ」
「有難う」
彼女は雄介君に優しく微笑む。
黒く縁がギザギザに擦り切れたようなローブを着た彼女は、元々のミステリアスな雰囲気を一層濃くしていた。
「えーっと、雄介君、どうこれ? 」
人好きする顔立ちの店主に進められたこの街の普段着。
軽くて丈夫だという触れ込みだ。
「いいんじゃね? 下の緑色のズボンとクリーム色の上着が武に合ってるよ」
そう言って大きな顔を綻ばせる雄介君は、なぜか忍者みたいな格好をしていた。
「元の世界に返るには、魔王ってのを倒さないといけない。それには私たち強くならないと」
「そうだね……」
「うむ、俺は人間相手の喧嘩は自信があるんだけどよ、魔王っていうのは人間じゃないよな」
不安げに視線を落とした雄介君。
金髪に染めた髪、色黒な肌、筋骨隆々な体つき。
こんな彼でさえ、自信なさそうに俯いている。
異国の地で、人間じゃない相手を倒さないと、元の世界には帰れない。
その現実は想像以上に重いプレッシャーだった。
「武君……怖いのはみんな同じだよ」
そんな彼を見て、理子さんは宥めるように言った。
だけど、彼女の足も心なしか震えている。
「とりあえず、剣と楯も手に入れたし、宿も確保した。ちょっと街の外へ行って見ようよ」
「外には魔王の手下がいるらしいね。でもこの辺のは弱いらしいって」
「試しにどれくらいのものか、やってみるか」