闖入者。
「事故で死ぬと、その現場から離れられないんじゃなかったの? 」
「あぁ、それ何の確証もないんです。ただ、聞いた話によると、凄惨な事故に巻き込まれて死んだり、巻き込んだ人間にうらみを抱いたりとかいう場合、その場に縛られる事があるとかないとか。実際、私はあなたを追ってこれたし、元々あんなとこで死んでないし、私の場合はちょっとそれに当てはまらないようです」
三沢真琴はそれとなく俺たちの輪に加わって軽快なリズムで言葉を紡ぐ。
それは分かったけど、君はなぜ俺を追ってきたんだ……
こうなる事を恐れて、慎重に背後を探り全力で帰ってきたのに水の泡だ。
彼女は俺の怪訝な視線など意に介せず、テリーと自己紹介やら世間話を交えて歓談している。
俺はその間、時々、片目を細めてテリーに目配せを送る。
適当に話を切って、真琴を外に追いやりたい意志を弟に伝えようとしていた。
だって、もう眠いんだ……
幽霊は朝までトークやっても疲れないけど、俺は明日学校あるわけだしそろそろ寝たい。
そんな俺の心が通じたのか、テリーは徐々に聞き役にだけに回り、彼女の話のネタが途切れるのを待っているようだった。俺はその間、自分のベッドの側面に背中を凭せかけうつらうつらとしていた。
「兄貴、朝だよ」
「あ? お」
朝目覚めると、きっちり布団を被って仰向けに寝ていた。
弟テリーが風邪ひかないように運んでくれたようだ。
俺の顔を覗き込むテリーの目の下は黒ずんでいた。
昨日、真琴といつまで話してたんだろうか。
俺は壁掛け時計に目をやる。
朝6時半だ。
俺は半身を起こし立ち上がると、カーテンを引いて窓の外を眺めた。
空は薄い灰色の雲に覆われ、今にも雨が降ってきそうだった。
「兄貴……」
「あ? 」
「ちょっと話いいかな」
一階に下りようとすると、テリーに呼び止められる。
テリーは冴えない顔で俯き、床においてある座布団に座るよう手で促してきた。
何だろう?
「朝まで彼女と話してたんだ」
「ほぉほぉ」
「彼女さぁ、昨日、兄貴の後をつけてここまで来たらしいね」
「そうなんだよ、ストーカーだよ、時々いるんだよな、ああいう子」
俺はわざと迷惑そうに声色を変えてテリーに訴えた。
「…………」
「迷惑なんだよな、俺あんまり幽霊にかかわりたくないしさ」
テリーは向かいに正座したまま、黙って俺の愚痴を聞いていた。
「兄貴……彼女訳ありなんだよ」
「ん? 」
「真琴ちゃんは、事故で死んだって兄貴に話したらしいね」
テリーは視線を下げたまま、神妙な顔で何か含んだような、もったいぶった間の空け方をした。
「それがどうしたよ」
「彼女……ひょっとしたら誰かに」
「え? 」
途中で言葉を濁したテリーの瞳は微かに震えていた。
その弟の様子を目にしているうちに、ざわめく不快な予感が胸の内に広がっていくの感じていた。