だるい。
とある、マンションの屋上、空に迫り出した貯水槽に寄りかかり、
ぼーっと、なにをするか頭の中で吟味していた。
潮の香りを乗せた風が間断なく、前髪を揺らしている。
半袖の白いカッターシャツではあるが、影の中に身を潜めていないと、
灼熱の日差しが身を焦がし、数分もその場に留まれないだろう。
現実の世界の高校では俺は目立った存在ではない。
如才なく人並みの学力と体力を有するが、これといって特技を持ってはいない。
人間関係においても、友人は2,3人はいるが、実際、よく遊ぶのはそのうちの一人とだけだ。
5,6人かそれ以上の集団で行動する事など無縁に等しい。
そんな地味な俺だが、現実と変わりないこの世界では神である。
全ての人間の頂点にあり、あらゆる権限をその手に擁し持て余す雲上人。
その気になれば、この世界にあらゆる災厄をもたらす事が可能だ。
ここに住まう全ての人間の生殺与奪も、俺の手中に収められている。
前もそうだったが、ネガティブな考えばかりが去来する。
実際、人間がこの世をどうにでも変えれるような力を持てば、
その力で世の中に善行を目論もうとするだろうか?
人によるだろうが――殆どの人間は我欲に任せて、私利私欲を満たそうとするんじゃないかな。
銀行吹っ飛ばして金盗んだり、女を作成し自分の彼女を作ったりとか。
ふ、小市民の俺は夢想すらもスケールが小さい……
俺はやおら立ち上がると、高校へ行くことを決意した。