パラレル。
『俺の住む世界すべてをこの世界に持ってくる、テリーは俺の弟、雪乃は隣の家の娘、おやっさんは雪乃の祖父、俺、テリー、雪乃は同じ高校に通う。全て反映』
また俺は現実の世界の自室にいる。
いや、もう俺だけの部屋ではない。
テリーとの相部屋だ。
正直むさ苦しい。だが、我が家は兄弟二人が住めるほど大きくないのだ。
「兄貴、雪乃と今度デートいくんだけど、どっか面白いとこないか?」
「ボーリングでもいけよ、ち、良いよな、お前、幼馴染とデートかよ、羨ましい、」
「ボーリングか……」
テリーの姿は変わっている。
以前の武士のような身なりではない。
この世界での一般的な高校1年生と同じラフな家着、夏なので半袖に半ズボンだ。
ただし、彼は陰陽師で推理好きという設定は生きている。
まぁ、それが独立して彼だけに宿るのは不可能だ。
彼が陰陽師であるということは――
「拓様、お父上から伝言承りました。あまり式神を便利に使いすぎるなと仰られています」
今、目の前に現れた少女の式神、見かけはテリーが扱っていた式神と似ている。
ちょっとぱくってみた。
「あぁ、お前に朝飯持ってこさせたの気に入らなかったんだな」
「そうみたいです」
俺の足元にはお盆があり、その上には何も載っていない皿があった。
トーストと目玉焼きは既に俺の腹の中だ。
「親父もよー、好きに利用してるくせに俺にだけ言うか」
「兄貴は、式神に頼りすぎてるから体動かせって言ってるだけだと思うが。怠慢こきすぎなんだよ」
「うるせー! 」
テリーを足蹴にする。
「ごめんよ、言い過ぎた」
テリーは手を突き出して苦笑いを浮かべる。
兄弟とはいえ、従順なところは同じらしい。
「雪乃ちゃん、おはよう」
「あ、拓兄はやいじゃん」
俺は高校に行こうと門をでたところで、制服姿の雪乃とばったり会った。
「輝、もう少しで来ると思う」
俺はテリーと呼んでいるが、実際の彼のここでの名前は輝だ。
「あ、ども」
「じゃ俺は行くよ」
雪乃は俺にいってら~と微笑み手を振って見送る。