やる気なし
小説の書き方を忘れてきたのでリハビリ
ふ~、久々に仮想世界に降臨。
また舞い戻ってきた。
目の前にはだだっぴろい荒野が広がっている。
乾いた土の地面には、なぜか折りたたみ式のガレージチェアがある。
俺はその椅子に深く腰かけてだらっと首を後ろに逸らしている
椅子の背は何の材質でできているのか分からないが、
妙に背中の圧力にうまく適応し、体への負担が少ない。
なにしにきたんだっけ~。
何も思い浮かばない。
しいていえば、休みにきたのだ。
リアルの体がぽんこつになっているので、
仮想世界で心だけでも癒しにきたのだ。
綺麗な姉ちゃんを携帯で作って相手をしてもらうことで、
ファンタジー世界を創造して、旅をしながら現実を忘れてしまうことで、
嫌そうなんてきはさらさらないのだ。
そんな能動的な意欲はもう今の俺にはないのだ。
ただ体の重みを椅子に預けたまま、何の抵抗もなく重力のされるがままにされていたかった。
その姿勢で青空を眺めていたいだけだ。
一日置いてからまた戻ってきた。
俺の頭の中にはつまらない考えが浮かんでいた。
仮想世界で携帯を使い、この世界に色々な状況を作り、
遊んでみようではないかという――まあ、いつもの遊びに興じようかと思ったわけだ。
発想が貧困な俺にはそれしか浮かばなかった。
いや……それ以外することなんてこの世界にあるのか?
というわけで――どんな世界を携帯で創造するか決める段階だが、
今の俺には派手な世界を構築する気力はない。
なので、仕方なくまた、日本をそのままこの世界に持ってくることにしよう。
『この世界に日本を反映』と携帯に打つ。
瞬間的に俺は荒野から自分の部屋に移される。
自分の部屋であって、そうではない。
現実では選択肢の少ない世界ではあるが、その世界そのものが仮想世界であり、
その世界をどうにでもできる携帯をもつ俺は、ここでは神である。
一応現実の世界の法律や、社会的束縛は機能しているが、
そんなもの仮想世界のなかでは役には立たない。
つまり、俺のやりたい放題だ。
鬱屈した生活を強いられている俺は、現実の世界を仮想化しこの世界で好きなことをすることにした。
――という、まぁいつもの躁的な思考で何かを始めようかなあっと
勢いだけで鬱っぽい俺をひっぱってもらおうという計算だ。
さぁて、何をしよう?
ちなみに俺が住む町は神戸という港町である。
場所は特定されると困るので、神戸市に住んでいるということにしよう。
そこに住む高校生である俺が、これから携帯を使って何かをしようというわけだ。
よし、まずは近所にある交番に出向いて、おまわりさんに手紙を渡してこよう。
直筆の手紙だ。
今時手紙など書く奴はいないけど、鉛筆で文字を書くというのもいいものだぞ
さぁてと、何を書こう。
いや、その前におまわりさんのチョイスが必要だな。
いちいち交番に出向くのは面倒だ。
『神の目』を反映した。
これは指で円マークをこしらえその穴を覗くと、ターゲットを視認し選別、分析までできるというものだ。
穴の中を覗き見る。
交番には警察官が一人だけいるようだ。
夜中にご苦労さん。
さて、この警察官の分析を始めよう。
結婚しているらしい。妻子があるようだ。
奥さんはわりと美人だ、子供は10歳の女の子がいるようだ。
この凡庸な30歳の警察官にどんな手紙を送ろうか。
『お前の奥さんと子どもを浚った』にしよう。
いきなり犯罪者になってみよう。
そうすると、まず奥さんを浚わないとな。
けれど、俺は手を汚したくないから、
誰かが必要だな。
忠実な僕、しかも警察官の妻子となると、
組織的な犯罪が必要となる。
俺を最初から神と仰ぐ思考をもち、事情をよく熟知した犯罪グループをこの世界に顕在化させよう。
『俺に形而上的な絶対服従をする人間が集まる犯罪グループ、俺はそのグループの長であり、俺の意志は彼らにテレパシーとして送り、自由にコントロールすることができる』
これでいこうか。