アテネ改造計画
仮想世界に耽溺
軽自動車でとある山腹にある山小屋にやってきた。
水上のおばはんを回復させたので、ここに遺棄することにした。
アテネが水上さんの体から離れ、意識が戻っていない水上さんを山小屋に寝かせる。
これで隠蔽工作は完了。
シナリオとしては、死体が飛んで逃げてここまでやってきたということにしよう。
『飛ばしの携帯』
反映されると、さっそくその携帯で近くの所轄署に死体を発見した旨を伝える。
そして、車でアテネとともに立ち去ることにした。
別に山じゃなくても良かったのだが、近所は常にマスゴミや警察やヤジウマがうろうろしていたので、家の近くで遺棄するのは難しかったのだ。
公園でも良かったけど、都会は監視カメラがあちこちにあるから、妙な疑いを掛けられても困るしね。
「アテネ、もう、かってに憑依しないでおくれ」
「はい、分かりました」
アテネは一応、オリュンポスのアテネみたいな力を使えるのだけれど、日本社会では真っ白な赤ん坊同然というか……一般常識がないのだ。
俺は教育が必要だと感じていた。
「よし、どっかでマンションを借りよう」
「マンション? 」
「住居のことだ」
「なるほど……」
アテネは頭がいいので、一度取り入れた知識は二度と忘れない。
マンションで英才教育を施して、俺好みの女に仕立ててやろう。
男のロマンというやつだ。
兵庫県の神戸市三宮まで軽自動車でやってくると、車を有料駐車場に止めて、歩いてマンション探しを始めた。
どうせなら高層ビルの中にある高級賃貸マンションを借りよう。
六本木ヒルズのようなのがいいな。
俺はガラケーをいじりながら、ネットで検索した。
あった!
神戸○○センターだ。
一部伏字にしておく。
よし、携帯だ。
『神戸○○センターの15階以上にある高級賃貸マンションがおれんち」
反映。
これで住居も確保ができた。
さっそくエレベーターを上がって自室に向かった。
部屋の扉を開けると、見たこともない世界が広がっていた。
大理石の床に、ふかふかソファー。システムキッチン。
広いバルコニー、その先に広がる絶景。市内を一望できる。
いやーなんだか、本当にここに俺住んでいいんだろうか?
「アテネ気に入ったかい? 」
「はい」
「もっと喜んでほしいな」
「はい」
アテネは見たことのない世界に戸惑っているようだった。
言葉がぎこちない。
神でも緊張するみたいだ。
『肩書き、俺は某IT企業の社長の四男、政治家とも交流あり、父親は放任主義』
これも反映をしておこう。
本物の父さんと母さんとはお別れだ。
仮想世界だから別にいいだろう。
さてと、アテネを育てる人材発掘をしなくては。