お出かけ
言っときますけど、適当です、適当。最後まで書くかも怪しいです。完全に物語で気持ちよくなりたくて書いています。その辺よろしくお願いします。
「ちょっと家に帰る前に、服を買おう」
「はい」
「それと、その杖、なんとかしないと」
黄金色に輝く杖は、目だった。
公園にいるお年寄りが僕らにちらちらと視線を投げかけてくる。
木陰に俺はアテネを誘い込んだ。
「杖、なんとかできない? 」
「なんとかとは? 」
「えっと、消すか縮めるかして」
「はい」
アテネは杖の先を掌に当てた。
すると、掌に吸い込まれるように杖が消滅した。
さすが、オリュンポスの女神。
「よし、服は、近所の量販店で買うぞ」っていうか、
面倒だ。
「ちょっとここの木陰にいてくれ、俺が買ってくる」
『瞬間移動』
俺の能力に瞬間移動が付与された。
一瞬で、量販店のトイレに移動する。
ドアを開けると、髭を生やしたおっちゃんと目があった。
「なあ、昨日こっち雨降ったか? 」
「あ、降りました」
「そかそか」
おっちゃんは笑った。
俺の住む地域のおっちゃんは、いつでも見ず知らずの他人に気安く話しかけてくる。
引っ越してきた俺は、まだこの環境に慣れないが、今はそれどころじゃない。
『5万円、財布』
ガラケーで反映。
そして、量販店で女の服を選ぶ。
季節は夏。白いワンピースでいいか。
つーか、始めっからワンピースにしとけばよかった。
「アテネちゃん、これ着て」
「はい」
アテネちゃんは、ローブを脱ぐと素っ裸だった。
俺は昔の女の子みたいに、手で顔を覆った。
「着替え終わりました」
「あ、い、いいね」
胸が大きいな、Dカップはあるんじゃないか。
「えーっと、お前は俺の彼女だ」
「彼女ってなんでしょう? 」
言葉に詰まる。
そうだ。
「恋人だ」
「分かりました、たく様の恋人ですね」
「たくでいい。それで――」
話し方をレクチャーする。
両親に彼女を合わせるためだ。
高校二年になるまで、俺は女ができたことはなかった。
家にアテネちゃんを連れて行けば、ちょっとした騒ぎになる。
あーなんだか鬱だな。
やめよーかな、馬鹿みたいに騒がれるのもだるいし。
「あ、そっかー」
今日は日曜だけど、月曜に変えてしまおう。
そうしたら、共働きの俺の家はもぬけの殻になる。
「さあて、腹減ったな」
俺は自分の部屋にまんまとアテネを連れ込んだ。
両親も妹も会社や学校にいって留守だ。
普通なら――健全な男女が男の部屋でやることは決まっているが、
今はまだ昼間だ。
それに、そんなシーンは児ポに触れるので止めておこう……
俺は台所で、二人分のソバをゆで、皿に移した。
そして、山芋すって、つゆにぶっかけ、その上からお湯を注いだ。
皿に分けられたソバに山芋いりつゆをぶっかける。
「お待たせ~」
「お帰りなさいませ」
「ソバだ、食え」
「あ、ありがとうございます」
アテネは箸の握り方もソバの食べ方も分からなかった。
俺が食べて見せる。すると、拙い素振りでソバを啜る。
「美味しいです」
微笑むアテネ。
神々しい……一瞬眩暈がした。
可愛い過ぎる。
「外が騒がしいな」
なぜか俺の家の前の道路にサイレンを鳴らした車が何台も入ってきた。
何か事件があったのか。
俺は無視して、飯を食っていた。
アテネは窓の外を見ている。
「なんか見える? 」
「一杯人がいます」
「どれどれ」
俺は彼女の肩越しに窓の外を眺めた。
年の頃40がらみの女性が担架に乗せられていく。
その周りには警察官がうようよいた。
まあ、いっか。知らないおばさんだし。
窓から離れると、またテーブルの脇に腰を下ろした。
「アテネ、俺は心底疲れているんだ……」
「どういう風にでしょうか? 」
「気力が出ないんだ、何をしても楽しくないんだ」
「じゃあ、私が力を注ぎましょう」
アテネは俺の額に手を軽く当てた。
「どうですか? 」
「うわ、な、なんだこれ」
体が熱い……何が起こってるんだ。
なんかこう、さっきまでとは違う。
おおおお、誰でもいいから殴りてぇ。
湧き上がる力をコントロールできない。
「アテネ、外へいくぞ」
「はい」