疲れたよ……
リハビリ、癒しを求めての旅。
仮想空間に戻ってきました。
現実では自縄自縛の状態でなにも自由にできないので、ここへ舞い戻ってきました。
世知辛く、暗い現実に背を向けたくなったんです。
地べたに寝転んで、ゴーロゴロ。
芋虫ゴーロゴロ。
荒野の真ん中で右に左へと転がる気持ちよさときたら。
青空が美しい。
澄んだ空気。
現実の世界では既に過去の産物と化したものです。
見た目はなにも変わっていない現世も、311以降は灰色にしか見えません。
そして、この頃、めまぐるしく変わる世界情勢に慄き、不安に翻弄される毎日。
そんな場所から逃げ出したくなったんです。
だから、戻ってきたんです。
始めに言っておきます。今回は物語が紡がれることはありません。
成り行きに身を任せて、旅をしたいからです。
モイラの神(俺)が予め作ったシナリオは発動しません。
そんなことは現世でロックフェラーやその他の権力者が行えばいいのです。
さて、何をしよう。何もしなくてもいい。
なんで何かをしようと考えるのか?
一種の強迫観念がまとわりついているせいか。
俺は立ち上がり、全力で走ってみた。
なぜか黒いジャージ一上下を着ている。
新しく買った眼鏡もかけている。
高かったんですよ。これ。
あれあれあれ。
いつのまにか身についた丁寧語が離れてくれない。
俺も大人になったんですね。
実は主語の俺を僕に変えたいくらいなんです。
ですけど、それは止めときます。
この作品の伝統が壊されるような気がするから。
丁寧語が離れない……
これが世間のしがらみという奴ですか。
やだやだ。
携帯を出すか。
これこそは俺だけが使用可能な携帯電話です。
近頃はスマホが主流ですが、そうですね、せめて、
ガラケーにしときましょうか。
やりなおし。
このガラケーこそは、仮想世界の神である僕だけが使える究極のアイテム。
創造主である俺がガラケーに、何か文字を打てば、その通りに世界が変貌を遂げるのだ。
つまり、やりたい放題できるのだ。
あーまだ、「のだ」を使う時に丁寧語を使わないことによる罪責感が。
俺の洗脳はなかなか解けないようです。
仕方ないので、丁寧語と中二会話の交じり合った言語で続けますね。
この際、丁寧語でいったほうがいいのかな。
ブログをね、丁寧語でずっと書いた反動なんです。
もうやーだー。
どーらーえーもーん。
寒い。
いい年こいてみっともない。
そんな言葉は無粋だ。
いやあ、疲れています。
どうしようかな。
世界が流れたら、話が勝手に出来上がって、ここから離れられなくなってしまいそう。
てことで、最初に言っておきます。これは気晴らしです。
気分次第で消滅します。
アポトーシスが自動的に発動します。
ちょっと良い展開になっても、プツンとテレビのように消えますので、
期待しないでください。
気がついたら音信不通なんてこともありますけど、
その時は忘れてください。
よし、前置きはこれくらいで。
なにしようかな~~。
壮大な計画は浮かぶんですが、「なりゆき」が今回の掟です。
鉄板です。
まずは、やっぱり女かな。
口うるさい女もいいですねー。
僕は今へたれてるから、気の強い……
って、また僕って使ってしまった。
もうね、俺というのが本当使いづらい。
しかし、俺だけは変えない。
頑張って俺を使います。
さて、女でした。
女だ。
最近ですね、ギリシャ神話のホメロス呼んでたんですよ。
そしたら、やけにアテネ神が可愛く見えたりしました。
あんな気の強い女の子いいなーって思った。
よし、アテネちゃんをつくろう。
白いローブ来た、アテネちゃん。なぜか黄金の杖を持っています。
『白いローブを着た気の強い、ギリシャ神話のアテネちゃんみたいな女の子』
仮想世界にガラケーに打たれたものが反映される。
「たくよ、なんのようじゃ」
威厳に満ちた鋭い切れ長の目、腰まで伸びた紫色の長髪。
白いサンダル。体からたちのぼる黄金色のオーラ。
まさしく神にふさわしい。
しかし、俺がこの世界では神なのだ。そうだ俺は彼女よりえらいゼウス様だ。
「アテナよ、口をわきまえろ、俺は貴様より……」
いや待てよ、ここでゼウス様になったら、父親になっちまう。
それじゃあ、後の展開が面白くないじゃないか。
「貴様より……」
迷っていると、アテネが不思議そうに首を傾げた。
「貴様より偉いたくです、今後よろしくお願いします」
「は? 」
さすがに寒かったか。どうしましょう。
「たく様……無礼な口を聞いてごめんなさい」
「分かってくれたならまあいい」
ふーランダム設定が発動したようだ。
さて、どうしよう。
荒野じゃつまんねーなー。
やっぱり、日本を舞台にするか。
えーっと、
『311前の日本を仮想世界に反映』
街並みが、雑多な音が、風景が、瞬間的に湧き起こった。
俺は涙した。
事故前の日本。二度と戻ってこない日本が、今ここにある。
「よし、とりあえず、俺んちに帰るぞ」
「仰せのとおりに」
「だめだめ、もっと砕けた話し方にしなさい、さっき出来てたじゃないか」
「はぁ、でわ、参りましょう」
「うん、そうしよう」