表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
192/197

疲れたよ……

リハビリ、癒しを求めての旅。

 仮想空間に戻ってきました。

 現実では自縄自縛の状態でなにも自由にできないので、ここへ舞い戻ってきました。

 世知辛く、暗い現実に背を向けたくなったんです。

 地べたに寝転んで、ゴーロゴロ。

 芋虫ゴーロゴロ。

 荒野の真ん中で右に左へと転がる気持ちよさときたら。 

 青空が美しい。

 澄んだ空気。

 現実の世界では既に過去の産物と化したものです。

 見た目はなにも変わっていない現世も、311以降は灰色にしか見えません。

 そして、この頃、めまぐるしく変わる世界情勢に慄き、不安に翻弄される毎日。

 そんな場所から逃げ出したくなったんです。

 だから、戻ってきたんです。

 

 始めに言っておきます。今回は物語が紡がれることはありません。

 成り行きに身を任せて、旅をしたいからです。

 モイラの神(俺)が予め作ったシナリオは発動しません。

 そんなことは現世でロックフェラーやその他の権力者が行えばいいのです。

 

 さて、何をしよう。何もしなくてもいい。

 なんで何かをしようと考えるのか?

 一種の強迫観念がまとわりついているせいか。


 俺は立ち上がり、全力で走ってみた。

 なぜか黒いジャージ一上下を着ている。

 新しく買った眼鏡もかけている。

 高かったんですよ。これ。

 あれあれあれ。

 いつのまにか身についた丁寧語が離れてくれない。

 俺も大人になったんですね。

 実は主語の俺を僕に変えたいくらいなんです。

 ですけど、それは止めときます。

 この作品の伝統が壊されるような気がするから。

 

 丁寧語が離れない……

 

 これが世間のしがらみという奴ですか。

 やだやだ。

 

 携帯を出すか。

 これこそは俺だけが使用可能な携帯電話です。

 近頃はスマホが主流ですが、そうですね、せめて、

 ガラケーにしときましょうか。

 やりなおし。


 このガラケーこそは、仮想世界の神である僕だけが使える究極のアイテム。

 創造主である俺がガラケーに、何か文字を打てば、その通りに世界が変貌を遂げるのだ。

 つまり、やりたい放題できるのだ。

 あーまだ、「のだ」を使う時に丁寧語を使わないことによる罪責感が。

 俺の洗脳はなかなか解けないようです。

 仕方ないので、丁寧語と中二会話の交じり合った言語で続けますね。

 この際、丁寧語でいったほうがいいのかな。

 ブログをね、丁寧語でずっと書いた反動なんです。

 もうやーだー。

 どーらーえーもーん。

 寒い。


 いい年こいてみっともない。

 そんな言葉は無粋だ。

  

 いやあ、疲れています。

 どうしようかな。

 世界が流れたら、話が勝手に出来上がって、ここから離れられなくなってしまいそう。

 

 てことで、最初に言っておきます。これは気晴らしです。

 気分次第で消滅します。

 アポトーシスが自動的に発動します。

 ちょっと良い展開になっても、プツンとテレビのように消えますので、

 期待しないでください。

 気がついたら音信不通なんてこともありますけど、

 その時は忘れてください。

 

 よし、前置きはこれくらいで。

 

 なにしようかな~~。

 壮大な計画は浮かぶんですが、「なりゆき」が今回の掟です。

 鉄板です。

 まずは、やっぱり女かな。

 口うるさい女もいいですねー。

 僕は今へたれてるから、気の強い……

 って、また僕って使ってしまった。

 もうね、俺というのが本当使いづらい。

 しかし、俺だけは変えない。

 頑張って俺を使います。

 さて、女でした。

 女だ。

 最近ですね、ギリシャ神話のホメロス呼んでたんですよ。

 そしたら、やけにアテネ神が可愛く見えたりしました。

 あんな気の強い女の子いいなーって思った。

 よし、アテネちゃんをつくろう。

 白いローブ来た、アテネちゃん。なぜか黄金の杖を持っています。

『白いローブを着た気の強い、ギリシャ神話のアテネちゃんみたいな女の子』

 仮想世界にガラケーに打たれたものが反映される。

「たくよ、なんのようじゃ」

 威厳に満ちた鋭い切れ長の目、腰まで伸びた紫色の長髪。

 白いサンダル。体からたちのぼる黄金色のオーラ。

 まさしく神にふさわしい。

 しかし、俺がこの世界では神なのだ。そうだ俺は彼女よりえらいゼウス様だ。

「アテナよ、口をわきまえろ、俺は貴様より……」

 いや待てよ、ここでゼウス様になったら、父親になっちまう。

 それじゃあ、後の展開が面白くないじゃないか。

「貴様より……」

 迷っていると、アテネが不思議そうに首を傾げた。

「貴様より偉いたくです、今後よろしくお願いします」

「は? 」

 さすがに寒かったか。どうしましょう。

「たく様……無礼な口を聞いてごめんなさい」

「分かってくれたならまあいい」

 ふーランダム設定が発動したようだ。

 さて、どうしよう。

 荒野じゃつまんねーなー。

 やっぱり、日本を舞台にするか。

 えーっと、

『311前の日本を仮想世界に反映』

 街並みが、雑多な音が、風景が、瞬間的に湧き起こった。

 俺は涙した。

 事故前の日本。二度と戻ってこない日本が、今ここにある。

「よし、とりあえず、俺んちに帰るぞ」

「仰せのとおりに」

「だめだめ、もっと砕けた話し方にしなさい、さっき出来てたじゃないか」

「はぁ、でわ、参りましょう」

「うん、そうしよう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ