ウーフ神。
ちょっとだれてきていますが、なんとか最後まで書こうと……思います。
書かなくては……
吐きそうな展開に悶えながらなんとか持ちこたえてみます。
事故にあわれた方申し訳ありません。
「拓、大丈夫か」
「え? 」
目を開けると、モルトさんの髭面が間近にあった。
「ここはどこですか? 」
「タオ村の旅籠屋だ。村の通りでタエちゃんが騒いでいるのをみつけてな、なにが起こったのか聞いたら、お前が倒れているっていうじゃないか。びっくりしてよ、ここに運んできてもらったんだ」
「あ、すみません、ていうか、俺もなにがあったか分からないんですよ」
「すまんな、お前に話しておくべきだった」
モルトさんは申し訳なさそうに言った。
「タエちゃんには近づいちゃいけないってことをな」
「え、それと、さっきの事と何か関係があるんですか?」
「ああ、えっとな~、シギ村で一番やっちゃいけないことがあってな、そのうちの一つにタエちゃんに近づくな、があるんだ」
「な、なんでですか? 」
あんなにいい娘なのに……
「ふー、タエちゃんはな、ヤシチの妹なんだわ」
「え…………」
絶句した。
「あの変質なカマキリ男はな、他人の命なんぞどうでもいいような暴漢だが、妹だけは可愛がっていてな、もうその過保護っぷりは相当なもんで、近づく男は、お前みたいな目に合わせられるんだ」
「な……、そ、そうだったんですか」
あの男が、タエちゃんの兄貴……信じられない。
「だから、タエには近づかないこった。普通なら殺されていてもおかしくなかった、お前は運が良かったよ」
「た、確かに」
あの鎧でなかったら、死んでいたかもしれない
それでも、衝撃は強烈だった。
後で、携帯で、『衝撃吸収効果』も付け加えよう……
夕暮れ時、朝を待たずに俺たちはタオ村を出発した。
シギタリの森の闇は深い。
樹冠が天上を覆い、僅かな月明かりが森の内部をぽつりぽつりと照らしている。
無数のスポットライトが点在しているかのようだ。
心許ない月光と、ランプの光だけが頼りだ。
昼間、ヤシチに投げ飛ばされて、しこたま地面に打ち付けた背中と腰が痛い。
なぜ、モルトさんは、タオ村で一泊させてくれなかったのか。
恨みがましい気持ちも湧いてくる。
とはいえ、それは自分勝手な話か。
モルトさんにも急ぐ理由があるのだろう。
どこからか、キーキー、ウォーン、カサカサっと、不気味な音が聞こえる。
昼間来るときは聞こえなかったのに。
夜行性の動物たちが蠢き始めたようだ。
「拓、聞こえるか? 」
「なにがですか」
「この森の主の声だ」
唐突にモルトさんが囁いた。
神妙な低い声で続ける。
「ほら、耳を済ませてみろよ」
「はい」
言われて、周りの音に意識を向ける。
「鳥獣や虫の音とは違う、妙な音が聞こえないか? 」
言われてみれば、クィーンクィーンと少し他と音調の違う声が聞こえるような。
「クィーンクィーンってのですか」
「それだ……その鳴き声がこの森の主であり、シギ村の守護神とされるウーフだ」
「そ、そうなんですか、これが……」
確かに不思議な鳴き声だ。なんとく神々しいような。
「今日のウーフ神の鳴き声は、いつもと違うようなきがする」
「はぁ……」
「急ごう、不吉な予感がする」