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気が重い。

「さっきは有難う」

「いえいえ、どういたしまして」

 さっき、お婆さんにみつかり、テリーがどれだけ心配してたかをやんわり伝えられ、出てきて欲しいと頼まれた。そうはいってもツン娘=雪乃が怖い。その事を婆さんに訴えると、先に行って帰ってきた旨と、俺の懸念を伝えて段取りしときますので、私が合図したら来て欲しいと――まぁ、手取り足取りの取り成しのおかげで、こうしてテリー達と再会を果たしたのだ。

「えーっと、ところでお二人はどちらから? テリーの知り合い? 」

「あ、拓様、その老婆とあの少女は私の式神です」

「式神? 」

「はい、私は陰陽道をある程度極めています。拓様がいなくなってから、ちょっとした雑用や、外の見張りなど任せていました」

「なるほど」

 そういや、テリー作成時、陰陽道使えるとか書いたっけなぁ。

 この白装束のお婆さんと少女はテリーが陰陽道の力を使って生み出した式神らしい。

 

 雪乃は俺がテリーと話している間、終始膨れっ面で、そっぽを向いている。

 左手で頬を支え、苛立ちのリズムを刻むかのようにテーブルを人差し指でとんとん叩いていた。

「とにかく、無事帰られて良かったです! 」

 テリーは俺が出て行く前と変わらぬ溌剌とした笑顔で言った。

 彼はよくできた従者だな。悪いことをしたよ。

「次出るときは教えるよ、一緒に行こう」

「はい! 」

 テリーが微笑むと、周りの式神達も口元を綻ばせる。

 少女の式神は陶磁器のような、真っ白な端正な顔の桃色の唇を薄く開いている。

 その微笑にはぞくりとするような洗練された美しさが漂っている。

 婆さんの式神に後ろから声かけられ、振り返ってその姿を目にしたときも、違う意味でぞくりとしたが、彼らは何か、人間とは一線を画する霊験のようなものを体から発散させている気がする。


「じゃ、俺、少し自分の部屋で休むよ」

「分かりました、ゆっくりお体休めてください」

「有難う」

 立ち上がり、緩いカーブを描くきざはしを上がっていく。

 階下のテリーに手を振りながら、雪乃を一瞥した。

 背中を向けてさっきと同じ姿勢を保っている。

 テリーと式神達とは話せたものの、雪乃には口を聞いてもらえなかった。

 まぁ、さっきのカメラで大体の事は分かっているので、これは予想していた。

 罵倒されなかっただけましだと思うべきだな。


「さてと」

 取りあえず、ねぐらも確保できたし、テリーとの溝も埋める事ができた。

 まぁ、一方的に俺が距離を空けただけの話だが。

 それにしても、雪乃とは早めに仲直りっていうか、普通に話せるようにならないと、同居者としてはきついな。彼女を作成した時も、取り付く島もなく追い出されたし、よく考えるとコミュニケーション自体、皆無に等しかった。ほぼ面識がない状態でここまで嫌悪されて、良好な関係の構築は難しいとは思うけど、自分の撒いた種だし何とかしたいな。


 俺はその日、一旦昼寝した。

 目が覚めたときは、部屋の内部は薄暗く、窓から見える青白い空が夜の気配を漂わせていた。

 どうしよう……そろそろ夕食時だ。

 階下のテリーの部屋で皆で集まって、食事をとる時間が迫っている。

 俺だけ夕食をテリーに運んでもらう……否、それだと余計に雪乃との軋轢は広がるばかりだ。

 体を横に向けて、良い打開策がないか頭を捻る。

 大体なぁ……テリーの奴がどうやったか知らないが、たった一週間の間に雪乃の心を鷲づかみして虜にしてしまったのが、更なる問題を招いている。

 まぁ、発端は俺の身勝手な行動が呼び込んだ結果だろうけど。

 うーん、気が重たい。何か考えなくては……

 



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