現実逃避。
俺はもうしばらく仮想世界で暮らそうと思う。
ここには現実をもちこまないようにしたい。
面白おかしくファンタジー世界でも造って戯れよう。
疲れたんだ……
まずは世界を携帯で消去して荒野に変えた。
いつものように、蛙の轢死体よろしく仰向けに寝転がる。
一片の雲の流れを目で追う。
もうこの世界に過去でも未来でも、現実世界は創造しない。
じゃないと、すぐに辛い現実を思い出し途方にくれることになるから。
この世界はファンタジーと相性が良いんだ。
何を携帯で反映しようか。
ファンタジーといっても、何も浮かばないんだ。
心が死んでいるからか。
軽く、何かを思い浮かべよう。
疲弊しきった俺が、荷重に感じない程度のことを。
ファンタジー世界には何が必要だろうか。
魔法かな。
飽きるなあ。
考えなくとも胸は悲しみで一杯だ。
癒されたい。
癒し系ファンタジー。
やはり、女かな。
どんな女を創ろう?
小うるさくないのが良い、いつも笑顔の薬剤師さんみたいな。
携帯で創造する。
頬にえくぼができる、鼻筋がすっと通った可愛げのある女。
えーっと、昔いた人、佐藤玉緒似の薬剤師のおねーさんってところか。
携帯にこの二行を打ってOKを押す。
「どうされましたか~? 」