タコオヤジ。
学校から連絡があって母は呼び出された。
田原を殴ったから仕方ない。
まあ、手加減して殴ったから、歯が一本折れた程度だった。
「すみません」
「あなたのお子さん乱暴すぎますよ」
田原の母親は派手な化粧をした口うるさい女だ。
「すみません、うちの子が」
「正当防衛だよ、いつもそいつにいじめられてたんだ」
母は一瞬驚いたような顔をして俺を見て、校長と田原の母親に視線を流した。
「そんなことあるわけないわよ、ね、どうなの? 」
「まあまあ、とりあえず、子供のけんかにあまり大人が介入するのもよくないですし」
校長は空気を読んだのか、話をまとめにかかった。
「治療代払いますので」
まだ田原の母親は憤慨していたが、息子も黙ったままだし、
校長にも促されてその場は収まりを見せた。
夜8時ごろ、玄関でバイクの音が聞こえた。
俺は妹と2人でテレビを見ていた。
母親が一階へ父を出迎えに行った。
なにやら小言で話をしている。
父親がドスドス無駄にでかい足音をかき鳴らしあがってくる。
「隆弘! 」
「なに? 」
「おまえいじめっ子にパンチくらわしたって本当か? 」
「本当だよ」
父親は信じられないといったように俺をしばらく見つめた後破顔していった。
「よくやった! 正直見直したぞ、やられたらやりかえさないとな! 」
「うん」
俺は冷めた調子で言った。
母親は父親が帰るまで落ち着かない様子だったが、
父親の笑顔を見てほっとした様子で、
「夕食できているから」
と言って、一階へ父とともに降りていった。
俺は軽くイラついた。
父親の態度が馬鹿に見えた。
隆弘があれだけ萎縮していたのは、お前のせいだろうが。
毎日毎日あんな叱り方していたら、子供は臆病な人間に育ってしまう。
少しは反省してもらいたいものだ。
間違った叱り方をして子供の人生を台無しにしかけたのだから。