面倒くさい奴。
数日過ごして、大体の人間関係が把握できた。
俺が成りすました少年には、妹、父親、母親、祖母がいるようだ。
5人家族だ。
猫もいるから6人家族ってことでいいかな。
ここ3~4日で得た彼らの印象は、
まず、妹は明るい、可愛い。
父は厳格、なぜか俺を見ると叱ってくる怖いおじさん。
母はこれまた美人。
祖母はよくわからない。ミステリアス。
あ、それと、時々、80歳の祖祖母が近くのアパートから夕飯時にだけやってくる。
アパート経営者らしく、1階に祖祖母がすんでいて、2階に間借りしている家族がいる。
ざっとこんなもんだ。
一階はなぜだかしらないけど、
ほとんど祖母一人がそこを占めていて、
他の家族は2階に皆すんでいる。
あんまり仲は良くないのかな?
食事の時も会話は少ないし。
母なる人物はなにか祖母と話しているとき緊張しているようだ。
表情の硬さからあまり関係は良好じゃないみたい。
「隆弘、友達はできたか? 」
「いないよ」
今日学校に行ったんだけど、俺は友達がいないことが分かったので素直に答えた。
(もう成りすました人物は俺と呼ぶ)
すると、父は嘆くような声で言った。
「あかんなー、いつまでたってもかわらんな、おまえは」
「…………」
「自分から話していかんかい」
「うん」
なんだかめっちゃえらそう。友達がいないことが気に入らないらしい。
不機嫌そうに新聞広げた父親。
俺はそこに居づらくなって、部屋に戻った。
「おい、おまえら抑えとけ」
「うん」
「いくぞ、3,2,1」
乾いた音とともに、足に衝撃が走る。
俺はクラスの背の高い男子にけられた。
逃げ出したかったけど、四方を蹴った奴の仲間が固めている。
肩まで押さえつけられて。
気がすんだらしい、どこかへ遊びに行った。
俺は机に座って、いろいろ考えていた。
なんで彼らは僕を蹴るんだろう。
足にまだ残る痛みが、俺をいらだたせる。
俺がイラついている対象は成りすました元の人間だ。
どうやらこいつは、大人しくて友達がいないいじめられっこみたいだ。
えらいのに、成りすましてしまったな。